事務所
先生の事務所は第一議員会館十一階の奥に在る。
この階には現総理大臣の事務所も控えている。
そしてここは、
『財務副大臣 金井博康事務所(先生)』
の応接室である。
応接室の奥には代議士用の大きな事務机。
机上には乱雑に積み重ねた書類。
机の前に決裁箱。
左の壁には備え付けの書類棚。
書類棚は施錠してある。
書類棚の上段には六法全書・判例集・哲学書。中央の段に各項目別に分けられた数十冊の『陳情ファイル』。
ファイルの背には種類別に受付られ、日時の付箋が添付されている。
そして下段には何故か『盆栽の月間誌』が整然と納めてある。
応接室中央には長テーブル。
テーブルを隔てソファーが大小三つ。
上座には代議士用のソファーが。
壁には世界地図。
地図はウクライナとロシア。
イスラエルとガザ地区。
イスラエルとイラン。
そしてホルムズ海峡の出入り口には赤いマジックで二重丸が付けてある。
壁の中央には額に収まった色紙。
色紙には達筆な墨文字で『蝋燭と灯』と書いてある。
その隣りに『核廃絶』と書かれた金井博康(先生)の選挙ポスター。
ポスターの写真は両手を軽く胸の前に合わせ、慈愛に満ちた微笑みを湛えている。
が、良く見ると純白のワイシャツのカフスボタンの袖口から覗く白いメリヤスの長袖肌着が支持者の愛着を注ぐ。
つづく(編)




