勉強に成ります
夜の市街地。
事務所に戻る途中の車内。
金井は後部座席で静かに寝ている。
政信は夜の地元の運転に慣れてない。
ルームミラーで先生を見て、
「先生、お疲れの所すいません」
先生は片眼を開けて、
「どうした」
「事務所までの道順が分かりません」
「うん? 今、何時だ」
「二一時十分です」
先生は夜の市街地を眺め、
「・・・そこの信号を右に曲がりなさい。その方が早い」
「はい」
政信はハンドルを右に切る。
「? ここも一通です」
「そうだったかな・・・」
そう言って、また寝てしまう先生。
政信は不安なのでルームミラーを見ながら走しった。
すると後ろに付いて来た車の屋根に、いつの間にか「赤色灯」が回っている。
「あッ! ヤベ~」
車を停車させた。
先生は片目を開いて、
「どうした?」
「すいません。後ろに覆面が」
「ナニ?」
振り返る先生。
先生は急いでまた寝てしまう。
「先生? センセイ?・・・」
蛍光帯を着けた交通警察官がウインドーを軽くノックする。
政信はパワーウインドーを下げ、
「あ、ご苦労さまです。何か?」
「忙しい所すいません。あのね、この道路は二二時まで一方通行なんですよ。東京からですか?」
「はい」
「ちょっと免許証を見せてくれますか?」
政信は背広の内ポケットから免許証を取り出し警察官に渡す。
警察官は免許証を確認すると、懐中電灯で後部座席を照らす。
「あれ~? 金井先生!?」
警察官が驚いて、
「何~んだ、先生の車でしたか」
先生は薄目を開けて。
「うん? 土屋君、着いたの?」
先生は外の警察官を見てわざとらしく、
「あれ? お巡りさんッ。何か遭ったんだべか」
「いや~、先生んとこの運転手さん、また一通に入っちゃったみたいです」
「なにッ! バカ者が。あれほど運転には気を付けろと言ったじゃないか。お巡りさん、すいませんね~え。このバカ、明日出頭させますから」
先生は厳しい声で、
「君は本当に運転が下手クソだねえ。私の秘書を辞めてもらうよ」
警察官が恐縮して、
「良いです良いです。東京から来たんだ。夜道が不慣れだったんでしょう。『警告』を切って置きますから」
先生は更に大声で、
「そうはいきませんッ! 違反は違反ッ! 私はそう云う事が大嫌いなんだ。秘書の教育にも良くない」
政信は平謝りで、
「すいません! 勉強になります」
つづく




