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よしよしたろう

作者: 園田やえ

よしよしたろう

むかしむかしあるところに山田村がありました。

山田村に住んでいるのはみんな山田さん。

村の端から端まで、もちろん向こう三軒両隣山田さんです。


ある山田さん家に可愛い可愛い男の子が生まれました。

村では20年ぶりの赤ちゃんです。

「よしよし、よしよし、君は大朗だよ、頑張ったね」

とお母さんとお父さんは大朗の頭を撫でました。


大朗はとても元気で何でも食べる男の子でしたが、とても良く動くのでなかなか体重が増えません。

お母さんとお父さんは食事のたびに

「よしよし、よく食べたね、たくさんおたべ」と頭を撫でました。


大朗が1歳を過ぎたその日もよく食べ、よく動き、疲れてぐっすり。

「よしよし、よしよし、大朗、大きくなってね」

お母さんは寝る前に頭を撫でながら大朗に話しかけます。

こころなしか眠っている大朗が笑った気がしました。


次の日の朝、起きると添い寝をしていたお母さんはびっくり。

大朗の身長がぐーーんと伸びていたのです。

今まで元気だけど小柄だったから嬉しい とお母さんもお父さんも大喜びです。

大朗は頭を撫でられるととても嬉しそうにするため、次の日も、その次の日も食事の時間と夜寝る前には「よしよし、よしよし」と頭を撫でていました。


そして少しずつ少し大朗が大きくなっていきました。



幼稚園に入る頃には、同い年の子よりずいぶんと大きくなりました。

大朗は山田村から町の幼稚園へ通っています。

お母さんとお父さんは大朗がまわりの子より大きくすぎる気がして心配になってきました。

それでも、確かに平均よりも大きいけれど、よく食べよく動くので病院の先生も様子見で良いと言われていました。

そう言われてしまえば、様子見をするしかありません。

小学校に入る頃には村で一番大きくなりました。


山田村のみんなは、大は小を兼ねると褒めてくれましたが、生活は大変です。

ます食事です。赤ちゃんのころからよく食べる子でしたが、今はお母さんやお父さんよりも食べますし、よく動く分、エネルギーもたくさん必要になります。


山田村はお米農家が多く、大朗の成長を喜び村中で大朗の食事を助けました。

町の小学校の給食は大朗には足りず、おにぎりを何個も鞄に入れて通いました。


大朗のおうちでは大朗が屋根にぶつかってしまうため家を建て直さなければなりませんでした。

大工の山田さんに頼みましたが、図面をひいてもひいても次の打ち合わせの時には大朗がもっと大きくなっているためなかなか新しい家が建ちません。


ある日、大朗がお母さんとお父さんにいいました。

「ぼくね、次の休みに旅に出ようと思うの」

どうしたの大朗?

「どうして僕だけ大きいのかな。町のお友達はもっとお母さんとお父さんより小さいよ」

大きくなってほしくて大朗と名付けたからかもね、とお母さん。

山田村の皆が大きく元気に過ごしてほしいと願ってるからかも、とお父さん。


そんなふうに言われても大朗は納得できません。

学校でも大朗より大きい子はおらず、服も靴も特注品。机も椅子もサイズがあいません。そんな子まわりにいないのです。

長い休みまでの一ヶ月、大朗は毎日お母さんとお父さんを説得しました。


根負けした2人は次の長期休みに一人旅にでることを了承しました。

それでもまだ流石に小学生、学校のある町のキャンプ場で過ごす約束をしました。



そして一ヶ月後、大朗は山田村の皆に見送られて出発しました。

大朗は町のキャンプ場で過ごす約束でしたが、実はもっと遠くまで行くつもりでした。

これ以上大きくなったらお母さんとお父さんの手が自分の頭に届かなくなる、自分より大きい人はどうやって頭を撫でてもらえるのか、調べたいのです。


大朗は大きいので誰も小学生だとは思いません。

村から町に出て、町から町へ移動していきます。

途中の町でも大朗のように大きい子はいませんでした。

大朗は大きいので建物の中にはなかなか入れません。

村の皆が作ってくれたお弁当を片手に山沿いを歩きます。


1週間がたった頃、野宿続きの大朗は寂しくなりました。

キャンプ場で泊まり込む予定で村の皆が荷造りを手伝ってくれていたので、飯盒やマッチにお米等は持っていましたが、全て食べきってしまいました。

大朗の大きい体では川で魚を捕まえることができませんでした。

そして気づきます、自分の背が高くなっていないことに。

やっぱり栄養が足りていないのか、でももうお米はないしどうしよう。

悩む大朗。

こうなったら一度村に帰るしかありません。

でもお腹が空いて村まで歩いて帰るなんて難しそうです。

大朗は悲しくなりました。


おーーーい! おーーーい!


どこからか声が聞こえます。

なんだろう、大朗が声のする方を探すと、山の麓に小さな小さなおばあさんとおじいさんがいました。


どうしたんだーー!はらへってるのかーー!!!


大きすぎる大朗をみて、真っ先に食事の心配をしてくれたおばあさんとおじいさんに大朗は泣きそうになりながら頷きます。


そうがーー!はらへってるんだなー!

いまいぐがらなー!!


そう叫んでくれたおじいさん。


およそ1時間後おばあさんとおじいさんは太郎の顔のあたりまで山を登ってきてくれました。


まだせでわるがったな。山登りは大変なんだ。

はらぺこなんだな、ばぁばと一緒に作ったお米はうめぇぞ!!塩おむすびだ!と小さな小さなおにぎりを大朗に渡してくれました。


大きなお口でパクっとひとのみ。

空きっ腹の大朗には全然足りませんが、大朗にとってとても美味しく嬉しいおにぎりでした。

「ありがとう、おじいさん、おばあさん。僕山田大朗、山田村の大きい大朗です。おうちに帰りたいけどお腹が空いて歩けません」


それを聞いたおばあさんとおじいさん、なにやら相談をしています。


心配すんな!じぃじとばぁばで助けっからな!!

今からご飯いっぺぇもっでぐっから待ってろよ!!


そう言っておじいさんは山をおりていきました。

おばあさんは太郎の顔の近くに座り、太郎がどうしてここまで来たのか、山田村はどんなところなのか聞いてくれました。


数時間後、おじいさんとお兄さんがトラックに乗ってやってきました。

トラックには箱が山積みです。

おじいさんの声がけで村中のひとたちがおにぎりを作ってくれました。 中には唐揚げや天ぷらなどカロリー多めのものもありました。


大朗は泣きながらたくさん食べました、そしてたくさんお礼を言いました。

おじいさんと一緒に来たお兄さんは新聞やさんなんだそうです。

大朗の写真をとり新聞に載せて山田村に伝わるようにしてくれるとのことでした。


その夜、おばあさんとおじいさんは寝袋を持ってきて大朗の近くで寝てくれました。大朗が寂しくないようなです。


そしてまた次の日も大朗のためにトラックでおにぎりとおかずを運び一緒に過ごしてくれたのです。


さらに次の日、お兄さんがやってきました。

「大朗くんのお母さんとお父さんが新聞を見て連絡くれたんよ。俺がトラックで案内するから大朗くんついてきて!」


なんということでしょう。本当に山田村まで新聞が届いたのです。

次の日、トラックに山盛りのおにぎりをのせてお兄さんと太郎は出発しました。


途中で何度も何度もお兄さんがトラックを止め、食事を調達してくれました。

新聞で大朗をみた山沿いの村の人々が食事を分けてくれたのです。


大朗の足で歩いて約3日、ついに山田村に到着しました。

お母さんとお父さんは泣きながら大朗の方へ走ってきました。

何度もキャンプ場へ連絡をしたものの大朗が見つからず心配していたのです。

大朗も久々の再会に大喜びです。

お兄さんは一晩山田村に泊まることにしました。

山田村の山田さんたちはお兄さんを歓迎し、村中を案内しました。


大工の山田さんが建てた新しい山田家、農家有志の太郎のための米倉に野菜畑、大朗専用の鶏小屋や乳牛そして縫製所。


お兄さんは山田村の大朗への期待にこれは大朗も大変だなとしみじみ思いました。


暗くなり、みんなで外で夕飯を食べた後大朗は言いました

「たくさん心配かけてごめんなさい、ありがとう。すごく寂しかった。きょうも頭を撫でてほしいんだけど、良いかな?」と。

お母さんとお父さんはもちろん!と叫びます。


大工の山田さんを呼んでタワークレーンを出してもらいます。

このクレーンは、竿の先端に籠を乗せた特別なクレーンです。

大朗が一人旅にでてる間に大工の山田さんの弟子、通称 弟分の山田さんが改造したのです。

大朗が大きくなってもお母さんとお父さんがクレーンに乗って頭を撫でられるように、大朗がいつまでも甘えられるように。


タワークレーンはぐんぐんのびます。ぐんぐんぐーーんとのびてついに大朗の顔の前を通り頭のてっぺん付近に到着しました。



お母さんとお父さんは声を合わせて

「よしよし、よしよし、大朗、いっぱい食べて大きくなったね、おかえり」と叫び大朗の頭に手を伸ばします。

大朗は「僕、いっぱい大きくなったよ!!ただいま」と返事をします。 

するとどうしたことでしょう。


どんどんどんどん、どんどんどんどん大朗が小さくなっていきます。

これにはお母さんもお父さんも村中の山田さんとお兄さんびっくり!!

 大朗ーー!!大朗ーー!!大丈夫かーー!!!

 

動揺しながらもタワークレーンからおりてきたお母さんとお父さん。

大朗は平均的な身長になっていて、特注の服はダボダボで服の山に埋もれそうになっていました。

小さく小さくなった大朗をみて涙を流します。

大朗も涙が止まりません。

三人でぎゅっと抱きしめあいました。


寂しかったよね、大朗。どうしたら良いか分からなかったよね、大朗。体は大きくなっても心はまだ小学生だもん。良いんだよ、無事に帰ってきてくれてありがとう。


その後大朗はよく食べ、よく動き、よく寝ましたが物凄く大きくなることは有りませんでした。

お兄さんも安心し、おじいさんとおばあさんに見せるために写真を撮って帰りました。


いまの大朗はお母さんとお父さんと同じぐらい。

小学生ならちょっと大きいサイズ。ちょうどよいサイズです。


めでたしめでたし



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