第99話 天と生きる①
驚愕の新事実が発覚した。
いや、驚いているのはわたしだけで、星導師のみなさんにとっては周知の事実ってヤツなんだけど、ヤツなんだけどさ!
もーう! 星導教会のそういうところ! 本当に!
ん、んん。
つい昂っちゃったよ。
き、気持ちを落ち着けて、ちょっと話を遡ろっか。
えー、まず。
お呼ばれされた絨毯小屋は、教室の半分くらいの大きさだった。
小屋の真ん中には大き目なテーブルがあって、並んで座っていた女の人が二人、サッと立ち上がってパッと笑顔で出迎えてくれた。
ルーシアと同じか、もうちょい年上かなってくらいのお姉さんたちだった。
日本的に例えると、大学生か社会人なり立てくらい……かな?
黄緑色の星導服がナナさんで、薄紫がモナさん。
本当はもう一人いるはずだったんだけど、直前で何か閃いて絨毯でどこかへ飛んで行ってしまったらしい……。
うん。もう驚かない。
驚かないよ? だって、ここは星導教会だもんね。
二人もシャクランさんも、「よくあることだから、仕方がない」って言ってたしね。
わたしは、ツッコみたい気持ちを飲み込んで、サラッと流した。
んん、で。
わたしとシャクランさんは、二人の向かいに並んで座った。
わたしの向かいが黄緑のナナさんで、シャクランさんの方が薄紫のモナさん。
わたし的衝撃の新事実は、天の研究にまつわるエトセトラについてなんだけど。
まずは、恋バナから始まった。
出迎えてくれたのが割合年が近い女子二名な時点でうすうす察してはいたけれど、一応研究の話を聞くという名目ではあったから、引率者で黒一点(あと、お年も召していらっしゃる)シャクランさんの顔色を窺ってみたところ、こちらも大変に乗り気なようだったので、わたしはちょっとばかり肩から力を抜いて恋バナに興じることにした。
お姉さま方二人の方も、「こんなチンチクリン、麗しのレイジンにふさわしくないわっ」みたいな敵意は抱いていないみたいだしね。
「では、まずは出会いからお願いします」
「はい! その時、ステラがどう感じたのかも含め、委細洩らさず懇切丁寧に説明してください!」
「は……ははは……………はい……!」
あ、やっぱり緊張するかも。
敵意は感じないけど、なんか妙な圧は感じる。
薄紫モナさんは、冷静さを保ちつつもその目はランランと輝くっていうより、テカるように光ってるし。
黄緑ナナさんは、キランキランに包み隠さず前のめりだ。
恋のライバルではなさそうだけど、恋バナに餓えた野獣って感じ?
ふっ。
だが、上等だ!
その勝負、受けて立つ!
わたしも、恋の関係者以外の出来れば女子相手に、何の遠慮も配慮もなく、のろけるような恋バナをしてみたいとは思っていたんだよ!
これもまた、恋の醍醐味!
あ、もちろん! 白い鍵関連の配慮は忘れないけどね!
「そ、その……。地球……わたしのいた世界で揺らぎが起こって…………レイジンは、わたしを助けてくれたんです」
「王道ね」
「いやーん。恋愛物語の朗読聞いてるみたーい♪」
「うむ、うむ。よきよき」
正確には、レイジンは白い鍵を迎えに来ただけで、この時の星灯愛は完全なるおまけなんだけどね。
表面的には間違いではないけれど委細は洩らしまくりの説明に、三人は出だしからいい反応を見せてくれた。
ちょっと嬉しくなって、お口も滑らかになる。
「一人乗りっぽい狭い絨毯の上に引き上げられて、その、狭いから、ほら、抱き……密着……っていうか、その……」
「……………………っ!」
「うっわぁー! 緊急事態とはいえ、レイジンに守るように抱きしめられるとか、とか、くぅうううう!」
「ええのう! ええのう…………!」
な、滑らかに喋り出しだけど、油出過ぎて顔面に着火して、みんなにも引火した!
く、顔が熱い!
あとシャクランさんはエア抱きしめ動作止めてください!
マリィさんで想像してるんでしょうけど、そういうの、脳内だけでやってください!
あああ! でも!
一緒に身悶えてくれる女子二人の反応は、悪くない!
そうだよね? そうだよね!
想像するだけで、そうなるよね!?
うん! こういうの、求めてた!
「……………………そ、そ、それで……?」
ナナさんが、息も絶え絶えに続きを求めてきた。
この時のわたしの心情とか、一切語ってないんだけど、そのことについてのお咎めはなかった。
語るまでもなく顔に出ちゃってるからかもしれないし。
二人の方も引火した火の火消しにいっぱいいっぱいで、そこまで気が回ってないだけかもしれなかった。
「は、はい。その後、わたしを絨毯に乗せた後、レイジンは…………。揺らぎを鎮めようとしたんですけど、揺らぎが大きすぎて、手こずっていたみたいでした」
「…………!」
「そ、そうよね。渡りが起きるくらいの揺らぎだものね。自然に鎮まることもあるとはいうけれど……」
「そうではない場合、手練れとはいえ、一人で対応するのは厳しいじゃろうなぁ」
「そういう時の揺らぎは、エイリン向け案件なことの方が多いしね」
「しかし、そこでステラ嬢ちゃんの出番となったわけじゃな?」
レイジンが手こずっていたっていうのは、昨日レイジンから聞いたから知ったことで、その時のわたしは目の前の出来事で頭がいっぱいでレイジンの様子にはちっとも気づいていなかったんだけどね……。
なーんて、わたしは自らのキャパの小ささを思い知らされて内心遠い目状態だったけど。
みんなの方は、揺らぎと聞いて、恋バナのほてりから一瞬で冷めていった。
こういうところは、やっぱり学生のノリとは違うなって身が引き締まったけれど。
ちゃっかり・しっかり話は恋バナ方面に舞い戻って来た。
わたしは、さっきとは違った意味で気を引き締める。
ここからの話をどう語るか。
これは、とても重要な問題だ。
語り方次第では、この後。
わたしの最大の見せ場がやって来る。
少なくとも、レイジン視点ではそうだったってことは、昨日のお茶会でレイジン自らが語ってくれた。
でも、わたし視点だとそうでもない。
というか、そうじゃない。
だって。
あの時。
わたしは、ただ。
ひたすらに神頼んでただけで。
活躍したのは、お地蔵様だし。
お地蔵様は、わたしの祈りに応えてくれたわけじゃなくて、ただただ地球のピンチを救うためにご活躍なされた可能性の方が高いんじゃないかと個人的には思ってるんだけど。
ま、まあ、でも。
わたしの祈りも雀の涙ぐらいはご活躍の助けになったかもしれないし。
こ、ここは……!
謙遜しつつも…………!
「わたし自身が活躍したわけじゃなくて、わたしは地球の神様であるお地蔵様に祈りを捧げただけなんです」
「それで、チキュウの神様が、ステラの祈りに応えて、揺らぎを鎮めてくれたのですね?」
「うっわぁーん! 星救の御子って感じぃ♪」
「むっふふぅーん。ほいで、ほいで? レイジンは、そんなおぬしになんと言ったのかのーん?」
あ。
謙遜しつつも話を盛る……までもなく、謙遜っていうかぶっちゃけただの真実な部分を告げただけで、みんなの方で勝手に盛ってくれた。
てゆーか、これ。
レイジン視点での報告が共有されちゃってるからなんじゃない?
最後のシャクランさんのセリフとか、答えを知ってるからこその催促だよね?
そ、そういうことなら、わたしもその流れに乗っちゃってもいいよね?
変に否定するよりも、みんなもそれを望んでいるっぽいよね?
よ、よし。
星灯愛、心を決めました。
このまま、調子に乗ります。
「レ、レイジンは…………ステラはチキュウの鍵の御子、チキュウのラピチュリンなんだなって、い、言ってくれました……」
きゃー、と歓声というか嬌声が上がった。
ノリ軽なナナさんは当然として。
クールぶっていたモナさんのみならず。
おじいちゃんのシャクランさんまで。
くっ。
て、照れる。恥ずかしい。
昨日、レイジンの口から改めて聞かされた時とはまた違った気恥ずかしさが……!
てゆーか、口元にやける。
恥ずかしい……けど、気持ちいい。
若干、事実というか現実とは違うかもだけど。
嘘は言ってないもんね。
だって、レイジンはそう言ってたもん!




