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異星界で。  作者: 蜜りんご
第4章 星導教会の人たち
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第96話 宇宙発生装置

 ここで、レイジンが投入された。


 乱入じゃない。

 豆乳でもない。

 文字通り、投入だ。


 そして、レイミア様が! レイミア様が…………!


 心を落ち着かせるために、少し話を整理しよう。

 違う。これは、逃避じゃない。

 そう。あくまで心を落ち着かせるための追悼の……じゃない、追憶の儀式だ。


 えっと。そう。

 すり合わせをしようってルーシアが言って。

 わたしたちは、そのために小部屋の奥のテーブルへと向かった。

 わたしは、今さらといえば今さらな事実への衝撃でフラフラだったけど、話を聞くにあたって特に問題はなかった。

 ルーシア主導のすり合わせ会議は、すっごくサクッと終ったんだよ。

 正直、すり合わせるって言うのは語弊があり過ぎだったと思う。

 あれは、すり合わせじゃない。

 一方的な擦り付けだ。

 ルーシアは一方的にわたしたちに告げた。


 これから、星導(せいどう)教会で生活するにあたって、絶対に守らなくてはならない本当に大事な重要事項を…………二つほど。

 一方的に告げて、それをわたしたちに復唱させて、はいおしまい。


 ね? すり合わせるんじゃなくて、擦り付けでしょ?


 とはいえ、擦り付けられた内容については、若干物申したいところもないではないけど、特に異論も反論もない。

 納得できる内容だった。

 ちなみに、その内容とは、こんな感じである。

 ジャジャン!


 一つ、白い鍵を異星界から奪還済みであることは極秘事項だから、誰にも言ったらだめだよ!

 一つ、渡り生物ってことになってる白ヒヨコの正体が星女(せいじょ)レイシアだってことは、誰にも秘密だよ! だから、今後はピヨちゃんって呼んでね☆


 この二つである。

 ちなみに、本当にちなみになんだけど。

 わたしだけ、三回も復唱させられた。

 そんなに心ここにあらず…………だったんだろうな。

 おかげで、どこか遠くへお出かけしてた心が戻って来たよ……。

 ついでに、ちなむと。

 ピヨちゃんはレイシアが自分で考えた名前らしい。

 本人、お気に入りらしい。

 …………いや、気に入っているならいいんだけど。それ、さ?

 ペットとかに付ける名前じゃない?

 や、見た目的には違和感ないんだけどさ。

 でも、もうちょっと人間に付けてもおかしくない名前、他にもあるじゃない?

 なんで、それにしちゃったの?

 いや、気に入ってるならいいんだけど、ね…………?


 まあ、とにかく。

 レイジンたちが投入されたのは、このタイミングだった。

 一方的通達からの復唱が終わったタイミング。

 あ、言い忘れてたけど、ミナセも一緒だった。

 でも、スイちゃんは一緒じゃなかった。

 シャクランさんといるのかな?


 見計らったみたいなタイミングだなって思ったけど。

 思い返してみて、まさしく見計らってたんだなって気づいた。

 そう言えば、あの時。

 エイリンは入り口の傍に立ってたんだよね。

 だから、たぶん。エイリンが突入の合図を出したんだと思う。たぶん。

 レイジンたちが、いつから部屋の外で待機してたのかは分かんないけど。

 わたしの復唱に満足したらしきルーシアが、「じゃ、お茶にしましょうか!」って笑顔でパンと手を叩いて。

 まさにそのタイミングで「失礼します」ってミナセの声がして、ミナセが部屋に入ってきて、その後からレイジンも入ってきて。

 なのに、思い返すまでミナセのことは頭から飛んでたよ。

 今も、そこにいるのに、飛んでたよ。

 ごめん。


 レイジンとミナセは、お盆を手に持っていた。

 レイジンのお盆にはお茶が、ミナセのお盆にはお菓子が載っていた。


 正直、時が止まった。

 ここでレイジンを投入するなんて……! するなんて…………!

 星灯愛(すてら)の脳内に(宇宙)が満ちちゃいそうだった。

 満ちてたのかもしれない。


 よく分かんない恋の推し活三つ巴が発生したと思ったら、『レイジンの本命は最初からレイシア一択なんじゃない?』なんて薄っすら思い当って密かに恐れていた真実が明るみにさらけ出されてショックでふっわふわしながらの大事な通達&復唱で、ちょっぴり真面目に場が引き締まったところでの火種投入!


 そりゃ、頭の中に天も満ちるってもんでしょう!?


 頭はみちみちで、心はざわざわで、もうどうしていいか分かんない!


 なのに!

 ここで、レイミア様が恐ろしい暴挙に出たのだ!

 まだ、お茶会が始まってもいないのに!

 何の脈絡もなく!

 レイミア様の脳内ではあったのかもしれないけれど、場の流れ的には本当に脈絡なくものすごく唐突で突然に、悪気なく思つきでとんでもない爆弾質問をかましたんだよ!


 レイジンたちは、まだ部屋の中に入ったばかりだった。

 お盆を持ったまま。

 テーブルに辿り着いてすらいなかった。


 なのに。

 思いついたら、即実行だったんだろうね?

 というか、前置きも挨拶も省いて、いきなり本題に突入するのはこっちの星界(せかい)のスタンダードなの?


 うん。ごめん。

 焦らしてるわけじゃない。焦らしているわけじゃないの。

 その衝撃質問は、回想するだけでも天が溢れてきちゃいそうなの。


 すーはー。すーはー。

 い、いくよ?

 レイミア様は、こう言ったんだよ。


「あら、レイジン。いいところに! ねえ、ずっと追い求めていた白い鍵を見つけた時、どう思いました?」

「……………………は?」


 さすがのレイジンも目を瞬かせながら首を傾げてたよ!

 いや、思い返してみれば、ここでレイジンが我が意を得たりとばかりに白い鍵語りを熱っぽく滔滔と語りだしたりしなかったのは一縷の救いではあるのだけれど!


 もう、なんか!

 脳内に満ちた天が、一気に溢れて揺らぎを呼びそうだよ!


 ああー! 回想は終了したけど、心はちっとも落ち着かないぃいいい!

 星灯愛、天発生装置になっちゃいそう!


 なんてことを!

 なんてことを、聞いてくれたの!


 それは、わたしも知りたいけど!

 知りたくはあるけど!


 でも、知りたくない!


 心の準備!

 心の準備が、何一つ!


 だって、これ…………。

 レイジンの返答によっては、わたし。

 レイジンの口からはっきりと“ただの入れ物”認定されちゃうってことだよね?

 そうじゃないかと恐れつつも、はっきり口に出されたことはない恐るべき真実が白日の下にさらされちゃうってことだよね?

 でもって、それって……。

 と、遠回しにフラれたも同然ってこと……だよね?

 しかも、これ公開処刑じゃない?


 NO――――!


 回想を終了したわたしは、恐る恐るレイジンに焦点を合わせた。

 レイジンは、その場で足を止めたまま、ウロ……と視線を彷徨わせていた。

 ど、動揺している?

 言葉を探してる?

 困ってる?


「…………えーと。まあ、立ち話って言うのもなんだし。まずは、こっちに来てお盆を置いて、座りなさいよ」

「…………は! そうよね! わたしったら、気が逸って、つい……! まずは、お茶会を始めないとよね! しっかり口を湿らせて、話はそれからじっくりよね!」


 ここで、ルーシアから助け船が飛んだ。

 いや、助け船かな、これ?

 わたしにとっては、一応恋の延命措置…………?

 いやでも! ほんのちょっぴり延命されただけだよ!

 ルーシアから船のオールを受け取ったレイミア様が、改めて恋の死刑宣告をしてきたし……!


 ま、待って?

 その話は、こんな風に男女入り混じってのただの恋バナ雑談みたいにする話じゃなくない?

 当事者同士が意を決して向き合ってせねばならない話じゃない?


 ――――って、言いたいけど、言えない!

 どうせ、ヘタレですよ!


 あ、ああ~…………。

 ぐわんぐわんと思考を散漫に飛ばしている内に、テーブルにお茶の用意が整った。

 整ってしまった。

 レイジンとミナセとついでにエイリンも、空いている席に座って。

 お茶会の準備は、すっかり整った。


 レイジンは、わたしの正面に座った。

 白ヒヨコはテーブルの上で、ふよっている。

 他のメンバーは、もうどうでもいいので、今、よく分かんない。

 みんな、へのへのもへじ顔の案山子になってる。


 白ヒヨコの後ろ頭を見つめる。

 それから、思い切ってレイジンを見つめる。


 目が合った。

 何か言いたそうに、わたしを見つめている。

 もしかして、ずっとわたしのこと、見てた?

 自意識過剰?

 たまたた、目が合っただけ?


 分かんない。

 もう、どっちでもいい。


 レイジンが、わたしを見てる。

 わたしを見つめてる。


 それだけで。

 もう胸が張り裂けそう――――!



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