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異星界で。  作者: 蜜りんご
第4章 星導教会の人たち
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第94話 恋の三つ巴

 ずっと胸の奥に秘めていたのかもしれないレイシアの本当の気持ちが、ついに明らかにされてしまうのか!?

 もし、本当に“そう”なら、わたしは、どうしたら――――?


 ――――とか、シリアスにヒロインぶっていたのに。

 早速、わちゃった。

 他ならぬレイシアのお言葉によって。

 ぬいぐるみ系白ヒヨコ姿は、どうあがいてもコメディだから、視覚的には、なんていうか納得の展開ではあったんだけど。

 ヒヨコになったお姫様ってば、恋のシリアスを吹き飛ばす、ものすっごい本音をぶちまけてきた。


「なるほど! つまり、ミアは! レイジン×シア推しというわけですね!? そして、エイリンはレイジン×ルーシア推し! ふっふふふふ♪ ならば、わたしくしは! レイジン×星灯愛(すてら)を推しますわ!」

「ちょっとよく分からない言葉が混じってますけど……」

「でも、なんとなくは、理解しました!」


 白ヒヨコ、エイリン、レイミア様が三人で睨み合い、パチッと火花が飛ぶ。

 てゆーか、レイシア! 応援してくれるのは嬉しいけど、地球の微妙知識の披露はやめて?

 でもって、残りの二人も順応力高すぎ!

 元々通じ合うものがあるから、通じてるの?

 いや、それより! なんなの? その三つ巴?

 なんで、その三つ巴が成立しちゃうの?

 おかしくない?

 なんか、思ってたのと全然違うバトルが勃発してるんですけど!?


「幼き日に心惹かれ追い求めた鍵の力は、少女の姿を纏って青年の前に現れたのです! しかも少女は、まさしく星の護り手ラピチュリン…………いいえ! その少女は、新時代の救星主ラピステラだったのです! これはもう、恋に落ちるしかないでしょう! まさしく王道! 星灯愛一択です!」

「しかし、それは偽りの恋だった! 青年が求めていた白き鍵の力! その本来の持ち主が姿を現したとき、青年は悟ったのよ! 自分が本当に求めていたのは、白き鍵の星女(せいじょ)だと! 星女こそが、青年が求めた白き星の光なのだと!」

「いえいえ! 何を言ってるんですか!? 鍵使いとしては一流ですが、天チュウの里育ちの渡り人ということもあって、若干の天然さが魅力のレイジンのことを真に理解し、寄り添い、フォローできるのは、幼馴染にして姉のようなポジションでもあるルーシアをおいて他にいません! ぽっと出でプロポーズをかましたラピチュリン気取りの渡り女に出しゃばられるくらいなら、星女ルートもありかもとか日和った時もありましたけれども、やはり、ルーシア! 同じ星導師、鍵使いとしても助け合えるルーシアしかいません!」


 パチパチパチィッと火花が飛ぶ。

 飛んではいる……けど。

 みなさん、当事者であるはずのわたしとルーシアそっちのけで、随分と楽しそうですね?

 てゆーか、レイシアが、どっちも兼ねているのはアリなの?

 レイジンの相手役として、わたしを推しつつ、レイミア様に推されているって、どういうことなのよ?

 二次元ならともかく。

 リアルでそういうの、良くないと思うよ?

 あと、さ?

 発言の内容にもいろいろとツッコミたいこと、あるんだけど?

 あるんだけど、状況というか前提がおかしすぎて、脳内ですらツッコミが追い付かないんだけど?


「むー。シアは、レイジンにときめいたりしなかったの? あの美貌で真っすぐに見つめられて、『ずっと、貴女を探していました』とか言われたら、正常な乙女なら、多少はときめきを覚えるものじゃないの? はっ! もしかして、鳥人形の姿になったことで、シアの乙女心が封印された!?」

「し、失礼な! そんなんじゃありません!」


 レ、レレ、レイミア様!?

 妹姫の随分な言い草に憤慨して、白ヒヨコは、ふよふよふよんと抗議した。

 可愛いだけで、全然、怖くない。

 うう、でも。

 わたしも、それはちょっと気になる。

 気にはなるんだけど、でも。

 藪から蛇をつつきそうで、怖くもある。

 …………ので、このまま有耶無耶になってくれても構わなかったんだけど、ここで。

 蛇が出てきてもそれはそれなエイリンが、藪をつついてきた。


「確かに、そうですね。報告によれば、レイシア様はステラの中から例の件の一部始終を目撃していたとか。『勘違いしないでちょうだい。あれは、貴女ではなくて、正当な鍵の持ち主であるわたくしに向けられたセリフよ』とか、思ったりしなかったんですか?」


 え? わたし、そんな報告してないよ?

 え? もしかして、ヒヨコ? ヒヨコが誰かに報告したの?

 ちょ、待って?

 何をどこまで報告したの?

 そして、誰がどこまで知ってるの?

 わたしにも共有してくれない? ねえ?

 星灯愛、それ、知らない。


 責めるように白ヒヨコに恨みがましい視線を向けてみたけれど、ヒヨコは気づかず、壁際で控えていたエイリンにふよんと向き直り、何やら主張を始める。


「確かに、目撃しましたし聞いてましたけど。実体験っていうよりは、夢の中の体験みたいなものですし。あと、ちゃんとドキドキはしてました! わたくしを乙女欠陥品みたいに言わないでほしいですわ!」

「え? ちゃんとドキドキしたんですか?」

「シア! そこのところを、もっと詳しく!」


 え?

 ほ、方向がどうのとか気にしてる場合じゃなかった。

 突然の問題発言!

 え? そ、そうなの?


「あ、いえ。レイジン本人にときめいたりしたわけではなくて! なんて言うんでしょう? ああ、そうです! 素敵な映画……えーと、お芝居を見てドキドキするような感じです! 体がないのに手に汗握ってしまいました! もーう、続きが気になって、気になって! 今も気になっている最中ですわ!」

「……………………」

「あ、そういう……」


 あ。なんだ。そういうことか。ほっ。

 よ、よかった。

 レイシアとは、ライバルになりたくないよ。

 強敵すぎるって言うのもあるけど、それだけじゃなくて。

 なんか、うん。味方でいてほしい。

 あ、でも。

 味方宣言をしてくれてるんだっけ?

 ……………………うん。うん。推してくれて、ありがとう。


「そう言う、ミアはどうなんですの? どうして、わたくし推しなんです? ミア自身は、ときめかなかったんですか?」

「よくぞ、聞いてくれたわ! これを聞いたら、シアも感激して、わたしと手を組むかもですよ!」

「ええ?」


 ちょっと感激してたら、話がまたおかしな方向へ飛んで行ったよ?

 というか、この姉妹。

 とてもお姫様とは思えない会話なんですが?

 これが、この星界(せかい)の仕様なの?


 なんだろう?


 もう、聞く前から分かるよ?

 きっと、ものすごーく、しょうもないことを聞かされるって。


 …………………………いや、待てよ?


 レイミア様がレイジンと出会った時には、既に。

 レイジンは、筋金入りの白い鍵推しだったはず。

 となれば、つまり。

 その想いのあまりの強さに叶わぬ恋だと悟ったレイミア様は、自らは身を引き、姉姫とレイジンの中を応援しようと涙の決断を……?

 健気な妹姫の泣ける話を聞かされて、レイシアがわたしとのタッグを解消して、姉妹タッグを組んでしまう可能性が…………?

 う、胸の中に、嫌な感じのモヤモヤが広がっていく。


「出会った時にはすでに、レイジンは白い鍵だけを探し追い求める、白い鍵ハンターでした。レイジンは、ただひたすらに白い鍵の行方だけを追い求めていた。そこに、他の婦女子が入り込む隙間は、なかった。白い鍵のことだけで、レイジンの中身は、みっちりだったの」


 モヤモヤは、いったん止まった。

 ワンチャンくらいは『レイジンの心に入り込む隙間はないから、自分の恋心は封印したのルート』にもまだいけると思うけれど、素直に泣ける話にならなさそうな気配の方が濃厚だ。

 なんか、こう。

 ワードのチョイス的に。


「誰も、明言はしないし、お父様も決して認めなかったけれど、失われた白い鍵の持ち主がシアだってことは、わたしには分かっていた」


 …………え? 待って?

 もしかしたら、これ。

 本当に泣ける話なのかもしれない。



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