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異星界で。  作者: 蜜りんご
第4章 星導教会の人たち
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第100話 天と生きる②

 結論が出たところで、話は本題に移っていった。

 いや、あっちも本題ではあったんだろうけど。

 天の話も、建前だけじゃなくて、一応ちゃんと本題だったようだ。

 話は、サクッと切り替わった。

 前置きも脈絡もなく、サクッと切り替わった。

 カチッとかもしれない。


「あ、そうそう。それでね? うちはねぇ、天との共存について研究してるんだっ☆」

「はい。なので、昨日は下界で長年共存生活をしていたシャクランと情報交換しあったり、議論を重ねたり……」

「うむーん。有意義な時間であったわいな」

「あ、そ、そうなんです、ね?」


 まだ恋バナの余韻から抜け切れていない……というか、お二人の意見を元に今後の方針についての決意を固めつつ熱意を燃やしてる真っ最中だったわたしは、うまくモードチェンジしきれなくて、上ずった声で、それでも一応返事だけはする。

 星導(せいどう)のみんなは、切り替えが早すぎる。

 慣れてはきたけど、ついてはいけない。


「わっしはのー、若い頃は、バッリバリの海回帰過激派だったからぁん。天共存派のグループには一回も所属どころか、ちょいと覗き込んでみることすらなかったんよー」

「鍵使いには多いですよね。そういう人」

「そういう人だからこそ鍵が発現する説もあるよねぇ」

「へ、へえ? そうなんですね?」


 まだ恋の浮つきから回復しきれていなかったわたしは。

 内容をちゃんとかみ砕かないままに、とりあえず相槌。

 分かってないのが丸わかりの相槌だったけど、三人は気にせず話を続けていく。

 気にしてないのか、気づいてないだけなのかは、正直微妙なところではある。

 てゆーか、シャクランさんに至っては、二人の鍵発言すらスルーして自分語りに突入した。


「あの頃はなぁ。若気の至りってヤツでなぁ……。俺とトイクーンなら、天が満ちる天の海(きょむ)を本物の海に戻すことが出来るなんて大それた夢を、叶って当然とばかりに信じて突き進んでいた。この星に満ちるすべての天を空へ還すことが正しいことなのだと、それがこの星の望みでもあるのだと、信じておったわ……」


 ここではない、どこか遠くを見つめる瞳。

 懐かしさと悔恨が滲む声。

 おちゃらけが消えた真面目な口調。

 その悔恨の理由が分かるだけに。

 浮つき状態で聞いた話の中に、もうちょっと深掘りしたい気になる情報があったんだけど、話を戻せる雰囲気じゃなくなっちゃったな……と、釣られしんみりしてたのに。

 星導師(せいどうし)二人は、容赦がなかった。


「ああ~。鍵使いって、そういうところ、あるよねぇ。ちょーっと星に干渉できるからってさぁ」

「勝手に星の気持ちを分かった気になってますよね。だから、モテないんですよ」

「みゅぐぅううう。ほ、惚れた女に振り向いてもらえなかっただけで、モテないわけじゃないもーん! それに、今はそうでもないしぃーん! 若気の至りって、言ったじゃろーん? 若い頃のハ・ナ・シ!」


 ほ、本当に容赦がない。

 確か、シャクランさんはマリィさんへの想いを拗らせたまま独身貫き中だってミナセが言ってたからな。

 痛いところを突かれて、さっきまで酸いも甘いもかみ分けた渋み溢れるおじいちゃんだったシャクランさんが、一瞬で駄々っ子になった。

 でもって、しんみりムードも霧散した。

 シリアスが、一気にコメディに切り替わった。

 わたしは、ちょっと安心した。

 それは、わたしにもよくあることで、とっても残念な星灯愛(すてら)仕様なんだろうかと落ち込んだりもしたけれど、こっちの星界(せかい)の仕様なのかもしれない。

 うん。きっと、そう。

 わたしとシャクランさんが、そういう残念さにおいての似た者同士とか、そういうことじゃないはず。うん。絶対。

 いけない。思考がそれた。


「まあ、でもぉ。だからといってぇ」

「ええ。天から生まれた星は再び天に戻ろうとしている説を推す天回帰過激派もどうかと思いますが」

「ねー」

「え? そんな派閥があるの!?」


 そして、ここで新情報!

 え? は、派閥っていうか。

 もしかして、星導教会の対抗組織……だったり?

 星界(せかい)のすべてが天になっても天を泳ぐ魚みたいに人類を進化させればなんとかなるぜみたいな研究している組織なのかな?

 それとも、滅びるのを覚悟のうえで、それが星の定めだからとかいう暴論で星の天化を推し進めちゃおう系のテロリストみたいな組織とか?

 う、やっば。

 ラノベ読みの魂が疼いて、ついつい激しく食いつきすぎちゃったかも。

 お、落ち着け、わたし。

 ラノベなら、ただのワクドキ展開だけど、現実でそれは洒落にならない。

 ――――と思ったけれど、現実はラノベよりも雑だった。


「うん。隣の絨毯小屋がそうだよー? てゆーか、実は私も三日前までは、そこに所属してたんだけどねー。一日だけ☆」

「と、隣の絨毯小屋かい! しかも、所属してたんかい! てゆーか、一日だけって抜けるの早すぎ!」

「いやぁー、なんかねぇ? 天の魚みたいにぃ、人類みな骨人間を目指すのも面白いかと思ったんだけど、やっぱりなんか違うなって思って。あ、ちなみにぃ。その前はぁ、海への憧れが爆発して海回帰過激派に三日くらいいたかなぁ」

「熱しやすく冷めやすくていらっしゃる!」

「そうなんだよー☆」

「私は、ここ二年ほどは、天との緩やかな共存方法を模索するこのグループで活動してます」

「もはや、二年が長いのか短いのかもよく分からない!……………………え? え? え? ちょっと、待って?」


 現実に殴られ過ぎて、敬語がどっかに飛んでっちゃったよ!

 椅子から立ち上がって、ツッコミの嵐で乱舞だよ!

 あと! あと! あと!

 みんながあまりに普通に話してた上に、活動語りが始まった時はまだフワフワしてたから、うっかり気づかないまま流しちゃってたけどさ?

 みんなの常識が、わたしがこれまで知り得た情報から導いた前提と著しく乖離しているんだけど?


「せ、星導教会って、天がもたらす揺らぎに対応したり、その大元である天を元通りの水場に戻すことが命題の組織じゃなかったの?」

「ん? そうだよ☆」

「そうだよ!?」


 いや、「そうだよ☆」じゃないでしょ!?

 何をしれっと当然のように答えちゃってるの!?

 だったら、どうして!

 教会の敷地内に天回帰過激派の小屋があるのさー!?


「まあ、対外的にはそういうことになってますね」

「た、対外的には!?」

「ええ。対外的には。まあ、設立当初は、そもそも人類滅亡の危機だったわけですし、それだけを目的にひた走っていたわけですが、今はそうでもないんですよね」

「え、ええー…………?」


 わたしは、力が抜けて、崩れ落ちるみたいに椅子に座った。

 何? それ?

 聞いてないよ?

 なんか、ルーシアたちから聞いてた話と違うっていうか。

 え? それとも、わたしが勝手に勘違いして、そう思い込んでただけ?


「ふぅーむ? 嬢ちゃんが一番接していたルーシアたちは、鍵使いじゃし、過激派とまではいかないじゃろうが、海回帰よりの思想ではあったしのぅ。その影響ということかいのー?」

「ああ。おまけにルーシアたちは鍵の探索がメインの活動で、教会本部での研究活動には参加していませんからね。本部内で行われている活動には、疎いのかもしれませんね」

「あー、それでその反応だったんだー。なるほどー。納得ぅー」


 え? つまり、情報源の認識に偏りがあったせいで引き起こされた勘違いってこと?

 な、なんで人の暗黒プロポーズ情報はバッチリ共有されちゃってるのに、そういうことは共有されてないの?

 くっ。でも、それが星導教会クオリティーだよなって、確かにわたしも納得だよ!

 はあ――――。まあ。

 そういうことなら仕方がないか。

 星導教会だもんね。

 ――――って、納得してたら、サラッと次なる暴露が来た。


「でも、ミナセは今、うちのグループに所属してるんですけどね」

「うむ。そのフィールドワーク中に、わしと運命の出会いをしたっちゅーわけじゃ♡」

「あ、そういう風に繋がるんだ……」


 それもまた、一つの納得を生んだけれど。

 そもそもの納得を靄に包んでくれた。

 いや、うん。

 そういう話題にならなかったってだけで。

 わざと隠していたとか、わたしの勘違いに気づいたのに放置したとか、そういうわけじゃないんだろうし。

 仕方がない。これも仕方がないんだろうけど。


 知ってたんか――――い!

 だったら、せめて!

 それっぽいこと、匂わせるくらいしといてよ――――お!


 なんて、理不尽かもしれない心の叫びが胸の内でこだました。



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