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今、まさに私は息絶えようとしていた。
まだ歳は若く、死ぬには早すぎる。
これが運命だったのだろうか。
でももし、何かがほんのちょっと違っていたら、この運命も別の道を進んでいたのかもしれない。
不運にも交通事故に遭ってしまったことを恨む。
私は後悔する。どこで何をすればよかったのか。ほんのちょっとのズレがあれば事故を回避できていたかもしれない。
悔やみと共に、今までの人生が走馬灯になって目の前で流れていく。
もう一度やり直せたら――。
「それじゃもしもを見てみる?」
気が遠くなる耳元で誰かに囁かれたような気がした。うめきながら必死に声の主を見ようとしたが、視界がぼやけた。
苦しんでいるのもよそに、声の主はあっけらかんと問いかける。
「一体何を変えたらいいと思う?」
息絶えようとしていた私は考えようとするも、何をする力も残ってなかった。
「ああ」
ただ息を吐き出すだけで精一杯だ。
「もう話すこともできそうにないから、私が勝手に君を利用させてもらうね。これから面白いものを見てもらう。そして君も参加してもらうからね。最初に言っておくけど、これは君がとても……」
何か重要なことを話していたと思うが、それどころじゃない。
今はただ頭が真っ白になって、自分の体からするりと抜けていく感覚で精一杯だった。
暫くすると、すっきりした気分になってはっきりと視界が開けた。
目の前で見たことのある光景が広がっている。反射で何かにしがみつこうと手を伸ばそうとしたが、何も動かせない。ただその場にいて見ているだけしかできなかった。
でも何かが始まる。そんな予感がしていた。