落ちる瞬間
と、とりあえず服…………
あと少し、少しで手届く…のに!
「…これですか?」
「!?あ、ありがとう…!?!」
たぶんこの光景は、フツーの人なら
すごいドキドキし合うものなんだろう。
でも……!!!!
のっぺらぼう!!!!!あ"ー!!!
「…あ、あの昨日はごめんなさい」
「また飲みに行きましょ」
「え、いいの?」
「はい!」
取ってもらった服を着た。
幸い今日はお互いに休日だった為
別れるだけで良かった。
「あの…!良ければ朝ごはん作ってもいい?」
「え!!先輩の手料理食べること出来るんですか!?」
「…う、うん?人の手料理だいじょうぶ?」
「先輩のがいいです!!!」
と、いいつつも冷蔵庫にあるので作れるのは
限られたのでベーコンエッグを作る
フライパンで作ってると匂いにつられて、
上半身裸で歩いて来た
「台所来るなら、Tシャツ来な。油跳ねるよ」
「は〜い…先輩先輩!おれ半熟がいいっす!」
「はいはい。じゃ、できたの置くところ作ってくれる?」
「はーい!」
犬が喜んでフリフリしてる尻尾が見れる…。
そんなに嬉しいものか。これ?
とりあえず作るか。
料理出来き部屋の机を用意されて
「手伝います!!!」と言われ
皿を代わりに持ってくれて
朝ごはん一緒に食べた。
間。
朝ごはんのあと、すぐ帰れば良かったのではと
なりつつもゆっくりしてた自分がいる
あまりにも居心地の良い空間だ。
「先輩の休日、俺にくれませんか?結局、昨日言いたいこと言えなかったし。先輩が言ってたこと聞きたいし…」
「ん?え、何か言ってた?!」
「はい。予定あれば別の日でいいんですけど、」
「…うん。いいよ。」
間。
少し、間があいて後輩が口を開く。
「俺、先輩のこと女性として好きなんです!!俺と付き合ってください!!!」
告白された。
いつぶりだろ…でも、こわい。
「………あのね。一旦、話聞いてほしい。それから、色々判断してほしい。」
「…!わかりました。」
「私人間不信なんだ。あと、男女問わず顔を認識出来ない。過去のことトラウマで。」
「なんていうんだろ。家族以外のっぺらぼうというか。高校生の時に理由なくいじめられて、それで」
「だから、君のことものっぺらぼうだし、色々苦労すると思うんだ。好きになってくれたのがとても嬉しいけど。迷惑かけたくない。」
「……先輩。話してくれてありがとうございます。でも!俺、諦めません!!先輩が俺のこと認識してくれる可能性もゼロじゃないんですよね!?」
「う、うん……でも、こわいんだ。」
「その不安もいつか俺が消しされるような存在になります!!!だから、その時にもう1回告白させてください。」
「うん、わかった。ありがとう」
それからというと、好きアピールをたくさんされたり、男性ならではの力仕事など変わってくれたり
愚痴聞いてくれたり、飲みに行ってくれたりと
めっちゃめっちゃ尽くされた……
「はぁ……」
「おい!!!!お前に振った仕事だぞ!!!なんというミスしてくれたんだ!!」
「すみません。今から修正します!」
ミスなんて珍しい。手伝うか。
てか、こんな大きな仕事新人一人に振り分けんなよ。ほんとお気に入り以外には塩上司…
クスクス…クスクス…
何か嫌な感じだ。この空気、昔の時みたいだ。
吐きそう。でも今は。
「すみません、教育係なので私も手伝います」
「そうか。ならお前の責任だな。お得意様だったのに。汚点だぞ。」
「はい。申し訳ありません。以後このようなことがないよう厳しくします。」
「先輩……」
仕事のミスは仕事で挽回するしかない。
営業先への謝罪と、修正と、ふむ。
めんどうだな。
「先輩ほんとにすみません。」
「口じゃなく手動かそう。時間は有限だよ。」
「はい!!!」
正直、甘やかしまくってる女性新人社員より
後輩は優秀だ。仕事も出来る。
「先方に謝りに行こう。修正はそのあと行くよ」
「は、はい!!!」
間。
「あーいいよいいよ。頭あげて」
「あの…」
「どうせ、いびりに使われたんだろう。もしかして新人である君一人に任せてたんじゃないか?」
「え、すごいですね…実は『教育係の先輩に聞かず一人でやれ』と上司から言われ、今回のようなことに…」
「ふむ。」
「あ、あの!教育係として、気づけなかったこと申し訳ありません。しかしながら彼は出来る人です。なのでもう一度チャンスを頂けませんか。」
「いいよ、ただし期限付き。今日の17時までに修正送って、私が許可を出すのが条件です。」
「やらせてください!!!!」
「いい面構えだ。がんばってみなさい。ただし、時間過ぎたら君たちの部署より更に上の者へ報告をいれます。」
「「ありがとうございます」」
間。
「早速修正をしよう。こっちはわたしがやるから、君はこちらを、修正10枚出来たら確認させてもらいます。お願いします」
「こちらこそです!!!絶対終わらせます!!」
「無駄な足掻きしやがって……ちっ、」
昼間
「もうこんな時間か。今大体4割いいペースか…」
「おれ、ゼリー買いだめあるんっすけど先輩飲みますか?」
「あ、ありがとう。たすかる!…じゃこれエナジー系」
「助かります」
15時…
「あ、あと少し……」
さすがに休まずぶっ通しのタイピングは、手が震え痛みも出て来た。誰か手伝ってくれる人いたら一番いいけどさすがに無理か……
「あの!手伝ってもいいですか!」
「!?」
「あ、ちゃんと仕事終わらせました。もうこういうの耐えられなくて。いびりに他社へ迷惑かけるのはちがうと思ってたんです。」
「な、なんだと!!!!!」
「それは俺も思いました。なんで、自分も手伝います。」
「お、お前ら…!」
「あ、あのありがとうございます。助かります。修正提出が17時締です。あと少しなので、よろしくお願い致します。」
「先輩…!俺からもよろしくお願い致します。」
間。
あれ………、顔が、ある。
手伝ってくれた人たちの顔が……
こんなにも、優しい顔なんだ、
「…………間に合った〜〜〜〜〜〜〜」
「やった!!、ほんとに良かった!!」
「「お疲れ様!」」
「あ、あの。お礼も兼ねて、飲みに行きませんか?」
後輩と、手伝ってくれた2人と4人で飲みに行くことになった。
場所はいつもの居酒屋。
しかし、わたしは酒を飲めないのだ…
「あれ。ノンアルコールなんですか?」
「う、うん…何か酔いが酷いみたいで外で飲んじゃだめって言われちゃって………」
「え、それって彼氏さんですか!?」
「ん、ん?んー違うけど、近いようなもの?」
「なんっすかそれー」
「ははっ………!?」
「……しっー。あ、これめっちゃめっちゃうまいっすね!」
椅子の下とは言え、手を握られた…
こんなにも、大きいんだ。
たぶん、、平均以上。
ちっさとか思われたら………
飲んだあと解散した。
後輩は、何故か残り、こちらをじっと見つめてる
「急に先輩の手握ってすみません、でも、触りたくなっちゃって」
「……!小さくてごめんね。」
「たしかに、小さかったです。でもぎゅっと抱きついたら先輩のことすっぽり埋まっちゃいそーってすごくなった。かわいいくて」
「なっ、なっ………」
わたしはチョロいのかも、しれない。
こんなイケメンの顔してる後輩が、わたしのことを
恋愛的好きなわけがない。
それなのに、のっぺらぼうじゃ…なくなった………
「先輩、俺のわがまま聞いてくれてありがとうございます。人の前ではお酒禁止って……飲み直しませんか?」
「…………!!!いく!」
「ぷはっ、かわいい。じゃ次のは俺に奢らせてください。」
「やだ。出す。」