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・完結エピソード ドラゴンラーメン滅竜亭 - ニコラス、またお前かっ!! - 5/7

 リリィさんが幻惑の鈴を持って戻ってくると、俺は肉体をまたサイネリアちゃんに奪い取られた。


 そして、その……あえてその後に起きた悲劇をトラウマ小箱にギュッと押し込めると、ようやく実験が始まった。


 うどん屋に見せかけるという初期のプランは、実際考えてみると不毛としか言いようがないので中止になった。


 サイネリアちゃんが言うには、半径50m以内の人々の認識を歪めて、ラーメンを無性に食べたくてたまらない者だけにこの店が見えようにしたそうだ。


 そう都合よくいくのかと半信半疑だったけれど、実験の結果はすぐに出た。


 横開きの玄関口がガラリと鳴り、そこに記念すべきお客様第一号が現れたのだ。


 それは国家権力の犬にして俺の天敵、あの憲兵さんだった……。


「ニコラス、またお前かっ!!」

「ギャーーッッ、違うんですこれはつい出来心で……っっ!!」


 ついついいつもの調子で、小市民丸出しのリアクションを返してしまっていた。


「おひかえなすってーっ! これが、目に、入らぬかーっ、なのですよーっ!」

「なっ、そ、それはっっ?!!」


 だが、そうだった。

 今の俺にはお墨付きがある!


 これが目に入らぬか!

 と、マリーがあのイルカ像を突きつけると、憲兵さんは声を上げて、軍帽をかぶり直した。


 それからビシッと敬礼をした。


「うむ、何も問題なかった。本官の勘違いだったようだ! お勤めご苦労様です!」


 そう、彼は国家権力の犬である。

 清々しいほどに権力に従順であった!


 俺は今、ついに天敵であった国家権力の犬どもに勝利した!

 自分ではなく、お友達の力で!


 だが勝利は勝利だ、バンザーイッ!!


「いや、お巡りさんはそれでいいの……?」

「本官は法の執行者であると同時に公務員である。……まあそれはさておき、おいニコラス、ラーメンはないのか?」


「まだ準備中ですし、今日はこっちじゃなくて屋台の予定です」

「そうか。ならば、本官が手伝おう」


「え、なんで!?」

「店を始めてくれたら、毎晩お前を探す手間が省ける」


「あ、そう……」


 憲兵さんは国家権力の犬であり、そして清々しいほどに正直なラーオタだった。


 その晩の憲兵さんは、手伝ってくれたお礼にお出ししたチャーシュー5倍トッピングを前に、いつもの仏頂面を幸せいっぱいの清らか笑顔に変えていた。


「ニコラス、やはりお前のラーメンは美味い。本官が成人病になったら、お前のせいだぞ……」

「だから、なんでいつもいつも食ってから文句を言うんですっ?!」


 楊枝を使って歯をシーシーと鳴らしながら、憲兵さんは夜の闇に消えた。


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