・最強のドラゴンと一緒に迷宮のキミックを解こう!
さらに進んで進んで、下り階段のところにB7との数字を見かけたそのすぐ後、俺たちは鍵穴のない巨大な鉄の扉に道を阻まれた。
「これ、教科書で見たことがある。どこかにギミックがあって、それを全て起動させると開くんじゃなかったかな……」
途中、左右へのわき道があった。
俺は扉に背中を向けて、さあ戻ろうと2人をうながした。いや、ところが……。
『バキリッ』とか、『メコリッ』とか、『メキメキメキメキッ、ドッギャーンッッ』とか、
世にもトンデモねぇ破壊的な金属音が俺の鼓膜をダイレクトアタックしてきて、俺は両耳を塞いで床で悶絶することになった。
「さ、行きましょ」
「も~、昔から乱暴な子なんだから~♪」
鍵。
ギミック。
そんなものは、存在しなかったよ……。
後ろを振り返れば、門が素手で無理やりこじ開けられ、中央にあった鉄の分厚いかんぬきが、なんか粘土みたいにねじ切られていたよ……。
「ドラゴン、ヤバ過ぎ……」
俺は耳鳴りのする頭で立ち上がり、迷宮の意図とかゲーム性を崩壊させた圧倒的暴力を横目に、全てを見なかったことにして扉の向こうのフロアへと踏み出した。
そのフロアの中央には、きらびやかな金色と翡翠色が入り交じった宝箱が置かれていた。
「ついにお宝か。長かったな、ここまでふんどししかドロップしなかったもんな、よかった……」
「あら、この箱、鍵がかかってるわ」
「ちょっと待ってっ、無理矢理開けたら中が無事かわかんないから止めなよっ!?」
「ダメ……?」
「いやわかんないけど……少なくとも学校の教科書には、非推奨ってあったかな……」
ストームちゃんは面倒くさそうな顔だった。
そりゃ罠がかかっていてもストームちゃんなら余裕で無傷だろうけど、箱の中身が無事で済むとは限らないよ……。
さてどうしたものだろうか。
もしかしたらこの部屋にヒントがあるかもしれない。
「だったらここはわたくしが、ちちんぷいぷいっ♪ はい、解けたわ~♪」
「開いたわっ!」
「えーーーーっっ?!」
リリィさんは虹色にキラキラ光る魔法を使うと、なんかカチッと施錠が解かれるような音がした。
そしてストームちゃんが箱の上蓋を押し開くと、中にあったのは妙なピンク色の布切れだ。
「こ、これは~~っっ?!」
「知っているの、リリィッ!?」
「ええ、これはとんだお宝ね……。はい、どうぞ~、ニコラスくんっ♪」
「え、俺……?」
その妙な布を受け取った。
もしかしたら貴重な装備なのかもしれない。
俺はその布を丁寧に伸ばし、それから頭上に掲げた。
「男性用ブーメランパンツよ~♪」
「いるかこんなものっっ!!」
「行きましょ、ニコラス」
「ああ」
即、捨てた。
床に叩き付けるように捨ててフロアを離れた。
リリィさんがそのパンツを拾い直して、布袋に詰めていたような気もしないでもないが、そこはあえて見なかったことにした……。