・3日で終わるラーメン修行編 - 完! -
「ニコラス、飲み込み早ネ。才能アルアルヨ」
「本当ですか、師匠!?」
「もちろん、アルアルネ。ジョブ持てるなら、ア、当然アルアルネ」
「師匠! それは身もふたもない上に、モチベーションが超下がるやつなんですけどー……」
「ア、ワタシ、褒めてるヨ? ワタシ、ジョブ・ラーメン屋、初めて、見るネー」
「そうなんですか? じゃあ師匠に聞きますけど、もっと無難なジョブがよかったなとか、そう思ったことは?」
「ないアル。ア、でも一応、言っとくネ。音速超える、ダメアル。ラーメン、吹き飛ぶネ」
「……はい。では音速は超えないように、気を付けて仕込みますね」
ヤンロン店長はただ1つの欠点に目をつぶれば、親切で褒め上手な理想的なお師匠様だった。
俺は彼の隠れ家で仕込みと仕入れを教わり、夜は屋台を引いて現場でラーメン作りの実技を教わっていた。
「あー、ところで師匠。連日これだけ働いたんですから、そろそろほんの少しだけ、景気付けの方を――」
「ワタシ、金ないアル。だから誠心誠意、ニコラス、教える、アルアルヨ」
「いやでも、屋台の方でだいぶ儲けているように見えたんですけど……?」
「ア、許すアル、ニコラス……。ワタシ、故郷に、家族、23人いるアルネ。養うだけで、精一杯アルヨ……」
「えっと……23人? それは大変ですね?」
「ワタシ稼ぎ、減らせないネ。もし稼ぎ減ったら……ア、大変ヨ? 娘、数人、売ることに、なるネ……」
「えぇ……っ」
彼の話はどこまでが冗談で、どこまでが嘘なのか全くわからなかった……。
しかし1つだけ確かなのは――
「アーーッ?! 何やってるアル、ニコラスッ!」
「えっ、俺何か間違えました?」
「それ! 使い終オワタ、鶏ガラ、貧民街、売るアル! 10で、1ゴールド、なるアルアルヨ!」
「あ、はい……」
超ケチってことだな。
俺は師匠の細い目と不審者にしか見えないドジョウ髭を眺めつつ、その日も今晩のための仕込みを手伝っていった。
今晩も屋台の仕事が楽しみだ。
あの温かいラーメンにお客さんが笑顔を浮かべるのを見ると、まあラーメン屋も悪くないかなって気分になれた。