・滅竜と一緒♪ - とても、良い手をしていますね……♪ -
陸路で大聖堂に引き返すと、俺たちはどさくさにまぎれてドラゴンレーダァを頼りに聖堂内部を回った。
建物の被害はバカにならなかったが、人的被害はないらしく、聖堂の人々は早くも瓦礫の撤去に入っていた。
「どうすんだよ、これ……」
「地上から建物ごと消滅させてやりたかったが、今回はこのくらいにしておいてやる。我が主のラーメンを食えなくなったら困る」
「しばらくラーメン抜きにしてやってもいいんだぞ……」
「そうなったら我はニコラスと共に死ぬ」
「うん、それが世界のためかもな……」
レーダーを頼りに2階へ上がり、風通しのよくなった西側の天井を見上げつつ、俺たちはレーダーの反応を追う。
ターゲットはどうやら動き回っているようだ。
そもそもなぜ大聖堂にドラゴンがいるのか。
当然発生するそんな疑問をよそに、コスモスちゃんの方は愉快愉快と破壊の傷跡を嬉しそうに眺めている。
聖堂とドラゴンの間に過去何があったかしらないけど、やり過ぎだ……。
「おっ……」
とかやっているとレーダーが指し示す座標に到達した。
「あらっ、あらら~?」
「あ、どうも……」
見上げるとそこに見るからにやさしそうなシスターさんがいる。
「どうされましたかー? 先ほどから下ばかり向いていましたけど、道にでも迷いましたかー?」
「いえ道ではなく、ちょっと捜し物をしているだけで」
二十代後半くらいのとても綺麗なお姉さんだった。
紙は白みがかったブロンドで、清楚な服の胸元からは大きな膨らみが激しく自己主張している。
いや凄い。
とにかく凄い。
膨らみで人の顔面を殴れるくらい余裕のビッグフッドサイズだった!
「落とし物ですか? 酷い襲撃でしたものね……。まさか、あんな竜がまだこの世界に残っていただなんて……」
「ええ、聖堂を吹っ飛ばすなんて最低ですよね」
「ふふふ……あのドラゴンさんにも、ドラゴンさんの都合があるのかもしれませんね~♪」
見た以上にやさしくていい人だった。
こんないい人がいる聖堂に迷惑をかけるなんて、なんて俺はクズなんだろう……。
「大丈夫ですよ、落とし物は私が一緒に捜してあげますよ」
「シ、シスター、さん……?」
そんな綺麗でやさしい人に手を取られた。
そこまではよかったのだけど、彼女が俺の手を包み込むと自分の頬に擦り付けた。
「はぁはぁ……とても、良い手をしていますね……♪」
「えっ、あ、はい……。ありがとうございます……?」
「大丈夫ですよ~、一緒に捜してあげますからね~……。スリスリ……」
何かが変だ……。
お姉さんの息が段々と荒くなっていっている。
腕に大きな膨らみがぐいぐいと当てられ、こっちが当惑に腕を引っ込めようとしても、がっちりキープで彼女は離れくれない。
「どうしてでしょう……。かつて、これほどまでに、衝動を抑えられなくなることは……はぁっ、はぁぁ……っ♪」
「た……助けてっ、この人なんか変……っ、コスモ――ングゥゥッッ?!」
恐怖を覚えて隣のコスモスちゃんに振り返った。
しかしこの状況で、なぜそのチョイスになるのかよくわからないんだけど、事実だけを説明すると――
コスモスちゃんは不意打ちで俺の唇を奪っていた。
「まあっっ?!」
「これは我の物だ、そなたには渡さんぞ女」
「な……なっ、なぁっ、おみゃぁ何すんだぎゃぁぁっ?!!」
それに驚いたシスターさんは拘束を解いてくれた。
「そう動揺するな。お気に入りのスイーツをペロリと舐めて、己の所有権を主張するようなものだ」
「あ~~、なるほどそういうことでしたか~♪ 最近の若い子はとっても大胆ですね~♪」
「そういうわけだ。我らは失礼する。さあ行くぞ、我が主」
「ちょ、引っ張らないでコス――ヘブッッ?!」
「おっと、顔にタランチュラがおったぞー」
「嘘吐けよっっ!!」
「いいからちょっとこっちにこい」
お姉さんにお別れの手を振って、俺たちは聖堂を出た。
コスモスちゃんは一言も言葉を発さず、庭園のベンチに落ち着つくとやっと口を開いてくれた。