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・ラーメン滅竜亭始めました - 夜、潮風の帰路 -

誤投稿多く、本当に申し訳ありません。

20時にも更新します。

「る~んる~んら~ん♪ やったですねーっ、お兄ちゃん! 今夜は大大大成功なのですよーっ!」

「ほとんどマリーの手柄だった気もするけどね」


「そんなことないのです。ニコラスお兄ちゃんにしか、あのラーメンは作れないのですよ~」

「ええ、誇っていい才能だと思うわ。ふふふっ、それに凄く楽しかった!」


「そうですねーっ、そうですねーっ、マリーも楽しかったのです! だって、マリーはずっとずっと……え、えへへへ」


 マリーはずっと1人だけで商売してきたから。

 マリーはそう言いかけて、気持ちを言葉にするのを止めたように見えた。


 行きはあれだけ重かった屋台が、帰りは少しだけ軽い。

 コスモスちゃんがもう歩きたくないとダダをこねなかったら、超軽くなった屋台に俺は達成感を覚えていたと思う。


「眠い……。早く家に運べ、我が主……」

「俺はこの主従が逆転した関係を、このまま受け入れてもいいんだろうか……」


 なんだかんだで流されて、これが当たり前になりかけている。


「ごめんなさいね、ニコラス。でもうっかり寝ぼけて大地を踏み抜かれて、このアイギュストスが沈没するよりマシでしょ?」


「えっ……? コスモスちゃんの力って、ちょっと踏み外したくらいで島を沈没させるくらいヤバいやつなの……?」

「世界を滅ぼす力を持つ存在よ。そのくらいできて当然じゃない」


「俺、なんでこんな竜をテイムしちゃったんだろう……」


 そのつぶやきに言葉を返す者はいなかった。

 返す言葉がなかったのではなく、みんなわりと眠かったからだ。


 俺たちは眠気を堪えながら夜の往来を歩いた。


「そうそう、さっきの人たちだけど。ラーメンがマフィアのしのぎになっているということは、どこかに抜け道があると思うの。あたしは明日からそっちを探ってみることにするわ」


「ふにゅぅ……じゃあ、マリーは……新しい仕入れ先、探すですよ……。もっと安くて、美味しい食材、見つけて……もっと、よろこ……。スゥ、スゥ……」


 なんとマリーは器用にも歩きながら眠ってしまった。

 仕入れルートを見直したいって意味だったのだろうか。


 危なっかしい姿を見るに見かねてコスモスちゃんが屋台を降りて、マリーを自分がいた場所にしがみつかせると俺も屋台を再出発させた。


「世話を焼かせおって」

「ウフフフッ、あのカオスドラゴンが丸くなったものね」


「だ、黙れっ、マリーは特別だ。世界は滅ぼしても、友人は助ける……」

「いやそれ、矛盾してない……?」


「していない。最終的には全て滅ぼすのだから過程はどうだっていいのだ」

「いや俺は全然よくないと思うけど……」


「それよりも次のドラゴン探しの助手が足りんみたいだな。うむ、ならば仕方ない、今回は特別に我が手伝ってやる」

「え、なんでドラゴンを探すこと前提の話になってんの……?」


「そ、それは……。ぅ……ど、どうかお願いだ、おとなしく我を手伝え我が主……っ。ほら、ドラゴンをテイムした分だけ、人手が増えるぞ……?」


「でもそれだけ賃金が……」


「あたしからもお願い、ニコラス。今も世界のどこかで、仲間が苦しんでいるかもしれないの……。そう思うとあたしもつらくて……。お願い、ドラゴンを助けて……」


 人間の時代を終わらせる算段が付いたと、そうコスモスちゃんはストームちゃんに言っていた。


 俺、このままなあなあでこの子たちの口車に乗ってもいいのだろうか……。


「お兄ちゃん……お願い、なのですよ……」

「マリー……」


「はわぁぁ……っ、お兄ちゃんの手、美味しいのですよぉ……ふみゅぅ……」

「ちょ、手っ、てぇっっ!? 君どんな夢見てんの、今っ?!」

「うむ、わかる」

「ごめんなさい、あたしもこの前同じ夢を見たわ」


「ヒェ……ッ?!」


 本当に。本当に本当に!

 俺はこの先もこの子たちと、このまま馴れ合っていっていいんだよな……?


 そう真夜中の空に問いかけても返事は返ってこない。


 っていうか返ってきたらやべーし。


「ねぇみんな、ちゃんと協力するから俺を喰べないって約束してくれるよね……?」

「うむ、喰わぬ喰わぬ」


「いやもう少し誠意を見せてよっ?!」

「ごめんなさい、あたし、自信が、ないわ……」


「そこは取り繕おうよ……っ!?」


 後ろからうっかりでパクリとやられる日がくるかもわからないけれど、とにかく明日の俺とコスモスちゃんの予定はドラゴン探しに決まった。


 でもよくよく考えたらさ、ドラゴンが増えれば増えるほど人手はそりゃ増えるけどさ……。


 それって、俺が喰われる可能性も爆発的に上がってゆくんじゃ……?


 ……澄み渡る星空は俺に何も答えてくれなかった。


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