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・ラーメン滅竜亭始めました - マフィア vs ただの小市民 -

「うむ、経営者はこいつだ、そなたらの好きにするがよいぞー」

「え……っ?!!」


 ところが、あれ……っ?


 頼もしいを通り過ぎて怖いコスモスちゃんが席から風となって飛び上がると、俺はなぜか調理場から引っ張り出されて、推定マフィアさんたちの包囲のど真ん中に突き出されていた。


「コスモス、ちゃん……?」

「もう一度言うぞ、経営者はコイツだ、好きにせい」

「はうあっ?! 何してるですかーっ、カオスちゃぁーんっ!?」

「カオスには何か腹があるようね……。そ、そうよね……?」


「うむ? うむ……?」


 マフィアたちは身内の裏切りを軽く流し、両手を組んで俺を5方向から包囲した。


 そいつらはまるで蛮族みたいな奇怪でユニークな顔で俺を威圧し、ただのドラゴンを従えた小市民に過ぎない俺を萎縮させた。


「いやいやいやいやっ、脳まで腐ってるコスモスちゃんに腹なんてあるわけないだろっっ!? 2人とものほほ~んと見てないで助けてよっっ?!!」


「そ、それもそうですねーっ!」

「待ってマリー、あたしはカオスの意図に興味があるわ」

「何言ってんのっ?! コスモスちゃんに深い意図なんてねーよぅ、ヘグオヘェェッッ?!!」


 マフィアの攻撃。

 マフィアのマフィアパンチ5発が、ニコラスにクリーンヒット!


「ウッ、ウギャアアッ、い、痛ぁぁ……っっ!? 痛……痛……あれ……あんまり、痛くない……?」


 効果は今一つだ!

 マフィアさんが寸前で手加減してくれたのかもしれない。


「キックだ、キックはパンチの3倍だ! やれっ、我のニコラスを倒すのだ!」

「どっちの味方だよお前ェェェェーッッ?!!」


 マフィアの再攻撃。

 マフィアのマフィアキックが5発が、ニコラスにクリーンヒット!!


「痛ぁぁっ……く、ない……? なして……?」


 効果は今一つだ!

 だが衣服に足跡がいっぱい付いて、ニコラスはとても悲しい気分になった……。


「ならば頭突きだ、頭突き! 乱闘といえば頭突きは欠かせぬっ、さあやってしまえーっ!」

「コスモスちゃん君さぁっ、絶対俺にテイムなんてされてないでしょっっ、ヒェェッッ?!」


 マフィアの再々攻撃。

 マフィアのマフィア頭突きが、5発がマフィアたちにクリーンヒット!!


 ニコラスの緊急回避(地べたに張り付いただけ)によりマフィアたちは自爆した!


「うっうぐっ、ぐぉぉぉ……っ、か、かがむとは、卑怯、な……っっ」

「いや普通かわすし」


 マフィアたちは頭を抱えてうずくまって動かない。

 額から流血しているおじさんもいて、バカって罪だなって思った。(個人の感想です)


「くっ、かくなる上は……っ」

「ちょ、刃物はダメ、刃物はシャレになってねーよぉっっ?!!」


 かろうじて余裕のある1人がクラクラとよろけながら立ち上がり、腰の短剣を抜いた。


「わぁぁぁーっ、助けるのですよーっ!? あれはさすかにダメですっ、お兄ちゃんが死んじゃうのですよーっ!?」

「あら刃物って、そんなに危険なの?」

「うむ……ドラゴンの鋼鉄よりも硬い鱗に、あのような安物が通るわけなかろう」


「そ、それはドラゴンの感覚なのですよーっ!? ニコラスお兄ちゃんは、人間なのですよーっっ?!!」

「だったら君が助けてよ、マリーッ!?」


 それが最期の言葉だった。


 さらに2名のマフィアが立ち上がり、

 『どうせ助けてくれるんでしょ?』と甘えた考えでいたラーメン屋を、3方向から短剣を上段に振りかぶった。


 しかしその刹那――


「ド、ドラゴンッ……!?」


 1人がそう叫び、彼の顔が見る見るうちに青ざめていった。


「お、王冠をかぶった……黒い、竜……ヒ、ヒィィィーッッ?!!」


 そうもう1人が言葉にならない声で口にすると、残りのマフィア連中は首をしきりに縦に振った。


 俺を囲んだマフィアたちは半狂乱で何かに怯えだして、さらにはガタガタと激しく震えながらなんと失禁まで始めた。


 やがては地べたをはいずって、この路地裏からほうほうの体で逃げ出していった。


 あいつらラーメンのやり過ぎで、集団幻覚でも見てしまったんだろうか……。

 後にはいい歳したおっさんたちのおしっこの臭いだけが残った。


 メッチャ臭い。

 屋台の前におしっこを5人前もたれ流して行くなんて、なんて酷い営業妨害なんだ……。


「やっぱり、本物なのかしら……。本物も人間を畏れ慄かせる力があったじゃない……?」


「どちらでもよかろう。本物であろうと模造品(イミテーション)であろうと、竜を統べる力さえあればカカシでもマヌケなんだっていい。そなたの寝顔に興奮して、鼻息を鳴らすムッツリスケベであろうともな……」


 やさしいマリーだけが俺を気づかってくれた。

 お客さんたちは妙に頑丈な俺にあっけに取られていたが残念、俺の方がもっと状況の理解ができていなかった。


 これはどういうことなんだと、遠くでひそひそと交互に耳を寄せ合いながら密談を交わす2人を見ると、なぜかストームちゃんが涙目で俺を睨んでいた。


 何を吹き込まれたのか知らないけど、コスモスちゃんの言うことを真に受ける時点でどうかしていると思うよ……。



 ・



 その後に待っていたのは拍手喝采だった。

 みんなの話によると、あのマフィアこそがクソマズい上にボッタクリのラーメン屋一味だそうだ。


 通りが超おしっこ臭いので屋台を少し離れた場所に移して、それから俺たちはまた通常営業に戻った。


「えっ、こんなところにラーメン屋っ!? ラッキーッ、今日はキメるぜ!!」

「お、美味しい……っ。わたくし、こんな美味しいラーメンは初めてですわ!」


「お嬢様っ、わたくしめはお嬢様の放蕩に今日まで目をつぶってきましたが、ラーメンだけはいけません! 今はよくともそのうち中毒となって、肝硬変となり、ブクブクに全身がむくんで死にいたりますぞーっ! うっっ、美味っ、美味過ぎるぅぅぅ……っっ?!!」


 酔っぱらいにもお姉さんにもお嬢様にもその暑苦しい執事さんにも、うちのラーメンは大好評だった。


 だけれどついに終わりがきて、材料である麺と具がなくなってしまった。


「ス、ススス、スープ……ッ、スープだけでも飲ましてくれよぉ、た、たの、頼むよぉぉ……っ」

「ほらご覧なさい! こうやってラーメンが人の人格を破壊してゆくのです、お嬢様!」

「ならスープはわたくしだけで飲みますわ」


「そうとは言っておりません!! お嬢様っ、そんなのずるいですよぉーっ?!」


 俺はどうかと思うんだけど……。

 でもまあ、捨てるよりはいいし……。


 最後はスープだけでも飲ませてくれとせがむお客さんたちに、残りのスープを無償提供した。


 ちなみにそれにはコスモスちゃんたちドラゴンは反対しなかった。

 出汁でありドラゴンズクラウンである俺が入っていないラーメンは、どうも味気ないそうだった。


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