デジャブ
「マスター、おはようございます。あ、安川さん、紹介するね、まさきくんです。」
いつものように、喫茶店に入ると見た事ない人がカウンターでマスターと話していた。
「まさきと言います。よろしくお願いします。」
「よろしくな」
安川という人は、よろしくな、と言いながらも、ギロリとこちらを睨みつけてくるような感じの視線を送ってきた。
なんで睨まれるの?と言葉が出なくなってしまった僕から視線を外し、安川さんはマスターとの会話に戻った。
この島の住人から初めて受けた扱いだった。
「ねぇ、安川さんて怖い人?」
帰り道、恐る恐る沙絵に聞いてみる。
「えっ?そんな事ないよ。面白いおじさんだよ、どうして?」
すごく意外そうに聞き返してきた。
沙絵にとっては、怖いどころか面白いおじさんらしい。
だとしたら僕に対するあの態度はなんだったのか?
なんか僕がやらかしたのかな?って不安になったけど覚えがないし、というかそもそも記憶がないし。
まぁ、いいやと割り切ろうとしたものの、初対面でそんな態度を取られると気にはなる。
それに、僕にはもっと気になることがあったのだ。
あの安川さん、どっかであった気がして仕方がなかったのだ。
どこで?とは分からないが、もしこの島に来る前だとしたら、記憶にまつわるヒントがあるのでは?と期待してしまうのも事実だ。