安川
目覚めてから1週間が経った夜更け、僕は布団の上に座り物思いにふけっていた。
毎日、沙絵に色々な所を紹介してもらいながら、記憶のヒントを探し回った。
だけど、残念ながら僕に関しての謎は一向に解けないままだった。
一体、何処から来たのか?何者なのか?自分自身の出掛かりを求めて島中を歩き回ったが、徒労に終わっている。
付き添ってくれている沙絵にも悪いので、早く解決したい問題なのだが。
沙絵は気にせず、ゆっくりでいいと言ってくれてるけど。
確かにこの島はのんびりしていて、暮らしていくにはいい気がする。
海岸を全て歩いて確認したけど、四方八方、海に囲まれ、完全?な島だった。
そして、船が来た事は僕の知る限り無い。
前に沙絵に買い物とかどうしてるの?と聞いたら、定期的に物資に載せた船が来るって言ってたのに。
まだ来るときではないのだろうか?
定期的って、2週間に1回とか、1か月に1回とかなのかな。
だとしたら、そのうち来るだろうから、そのときはちゃんと船を見ておきたいと思う。
島のいろいろな場所をめぐるうちに、たくさんの人を紹介してもらった。
みんな、いい人ばっかりで、僕の話を真剣に聞いてくれ、相談にのってくれた。
みんないいひとって言ったけど、たった1人そうでない人がいた。
そう、安川さん、喫茶店で紹介されたおじさんだ。
思い出してもあんまりいい気がしない。