夜の訪問者
すうっと、襖が開けられる音を聞いて目が醒める。
誰?と音のした方を確認しようとするが、身体が動かない。
金縛りだ!
侵入者の正体を暴かないと、と焦るのだがピクリとも動かない身体が恨めしい。
動け、動け!と身体に念じていると、侵入者が僕の足元に近づいてきた。
そのため、否応なしに侵入者の姿が目に入ってくる。
何やら兵隊のような格好をしているが、半透明で透けている。
一言で言うと、幽霊、という存在なのだろう。
その幽霊が足元の方から僕の顔を見ているので不気味で仕方ない。
お前、誰だよ!と声をあげ、恐怖を吹き飛ばしたいが、肝心の声が出てこない。
怖い、誰か、助けて。
その時、幽霊が僕の足首を掴んできた。
ぞっとするほど冷たく、全く正気が感じられないその手に、僕はありったけの悲鳴をあげた。
「うわぁぁぁ」
あまりの声の大きさに幽霊がびっくりした顔をこっちに向けた。
僕も金縛りで声が出ると思わなかったのでびっくりしたが、同時に金縛りが解けている事に気づいて、慌てて布団から四つん這いで逃げ出した。
そう、金縛りは解けたが腰が抜けているのだ。
壁際まで逃げた僕は恐る恐る幽霊を見た。
幽霊はすうぅっと、僕の方に近づき顔をのぞかせてくる。
そのまま、僕は気を失ってしまった。