表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/9

7話

「今日からここが、坊主の家だ。そして今日から……坊主は俺たちの家族だ」


 そう言って笑ったロイの顔を、10年経った今でも覚えている。

 今となっては取り戻せない日常だから、こうやって思い出すのも悪くないだろう。


 マリターノは木の根もとに座り目を閉じる。

 風船に空気を吹き込む時のようにゆっくりと、どこまでも。


▽▲


「ここはサルージ村って言ってな、坊主にゃまだ分からねぇだろうが木材で有名なんだ。色が良いってな」

「そうなんですか」


 楽しげに語るロイの顔を見て、朝から元気な人だと冷ややかな目線を寄越すマリターノ。

 彼は今朝がたこの世界で初めての自殺に失敗しており、気分もテンションもどん底である。


「……昨日は遅くに帰ってきたから紹介してなかったな。コラ、ユイ、新しい家族だ。仲良くしてやってくれ」


 後ろを見ると、マリターノの様子を伺うように二人の子供が遠巻きに眺めていた。

 恐らく男の子がコラ、女の子がユイだろう。

 拾ってもらった手前、雑な対応をするわけにはいかず、近付いて握手をする。


 名前を言おうとして、ふと考えてしまう。

 でも、本当は考える必要なんてなかった。

 だってそんなのは、ここに来た時点で決めていたから。


「初めまして、マリターノ=サンブレルです。よろしくね」


 前世の僕は、もう死んだ。

 けれど、今回の僕はまだ死ねないし、死ぬことが出来ない。


 知りたい。

 自分がここに存在する意味を。


「よ、よろしくねっ!わたしのことはユイって呼び捨てでいいから!」

「……よろしく。コラです」


 コラは言い終えるとユイの背中に隠れてしまう。

 ユイはそんなコラを見て微笑み、よしよしと頭を撫でる。


 ユイは絹のように綺麗な白髪を腰まで伸ばし、整った顔立ちで屈託のない笑顔を浮かべている。

 コラは少しぽっちゃりとしており、おどおどしているが性格の良さが滲み出ている。


「じゃあー……マリターノ君、コラ君!一緒に遊ぼっか!」


 この日から、ユイの背中は変わっていない。

 とても大きくて、優しい。


 そして、もう一つの意味でも。


 彼女は変わらなかった。

 この10年間、身長の変化は一切ない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ