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昼休みの教室にて

 「好きな人ができた」発言から一週間、鈴の好きな人に対するアタックは続いているらしい。らしい、というのは私自身はその様子を見たことが無いからだ。やっぱりまだ鈴に対してずるいと持ってしまい、後ろめたさを感じている。その後ろめたさから鈴を素直に応援できず、まだ昼休みには空き教室にまで逃げ込んでしまっているのだ。ただ、本当にアタックしているのかについては、私の中で疑問に思っている。毎日一緒に帰っているし、何なら昼休みにも必ず予鈴の鳴る5分前には私のところまで来ているからだ。本当にアタックしているの?


 最近の私にしては珍しく、昼休みにいるのはあの空き教室ではない。自分の教室にいるのだ。今日の私は日直だから、日誌などをさっさと書いてしまう作戦である。

来馬(くるま)さん、ごめんね。日直の仕事、ほとんど押し付ける形になっちゃって」

 ほんとだよ。押し付けんな。そう思いながら私の苗字を呼んだ男子のほうを向いた。見るからにチャラついた感じの男子で私はあまり好きではない、苦手なタイプの人間だ。しかし、いつも出席番号の関係で日直を一緒にすることになってしまう。彼は岸田(きしだ)、私は来馬だから仕方がない。

「大丈夫だよ。ただし、最後に日誌を出しに行くのはお願いします」

 少しだけイライラしてるけど、それが相手に伝わらないように。そう意識して、いつものようにふざけた調子で喋った。「はいはい」、そう軽く言いつつ男子生徒は、空いていた私の前の席にこっちを向いて座る。ここの席の主は毎日、お昼ご飯を食堂で取っていてギリギリまで帰ってこないのだ。

「そういえば、最近雨宮(あまみや)さんと昼飯たべてないけどなんかあった?」

「鈴と? なんにもないけど」

 私が日誌を書いているのが見えないのか。そう思ってしまいそうになるくらい、普通に会話をふってきた。よりにもよって鈴の話。

「何にもないはず」

 わたしが付け加えるようにそれを告げると、彼はうーんと態とらしく悩んだ振りをした。

「雨宮さん、最近園田(そのだ)とばっかり昼休みに過ごしてるのに?」

 ほら、とでもいうように私の席より後ろにある鈴の席を目で示してくる。見ないようにしてるんだから、そんなに目で訴えられても後ろは向かない。一方、目の前に座る彼は私と会話を続けるふりをしつつ鈴と園田の観察をするらしい。

 えっ。というか、鈴の好きな相手ってあいつなの? 趣味悪くない?

 最初に思ったのはこれだ。だって園田といえばモテたいがためにチャラ男のふりを頑張ってしている普通の男という、イメージしかない。

「あの園田でしょ? モテたいからサッカー部に入ったのにいまいちパットしない感じの」

「来馬さん、意外と厳しい」

いや、意外でもないか。そう、ぼそっと呟いたこいつは許さない。まあ、何かするわけでもないんだけど。脳内で何回か殴らせて。

「雨宮さんって、園田のこと好きなのかな……」

 好きなんじゃないかな……。私は自分の中でそっと教えてあげた。だって好きな人にアタックするって言ってから、一緒に昼食をとるようになったわけだし。それにしても園田はないな。それだったら私は苦手だけどこの目の前に男子生徒、岸田のほうがおすすめだ。とりあえず鈴の横に並んでもぼけない顔をしている。園田なんて鈴の横に立ったら顔面のレベルが違いすぎてぼけそうだし。

やっぱり、少し気になる。ちょっとだけ後ろを見てみようか。私の席と鈴の席はそこそこ離れているから、ちらっと見てもばれないはず。ばれたとしても、私が勝手に気まずいだけで何の問題もないしね。

そう勝手に結論付けてそっと後ろを向いてみる。眼に入ったのは一つの机を囲んで仲良さそうに食事をとっている鈴と園田だった。高嶺の花的存在である鈴に構われて、嬉しそうにしているのがなんとも腹立たしい。

「な? 見ただろ? 雨宮さんに憧れてるやつ、今頃大荒れだな」

 うん。同性の幼馴染みという関係性の私でさえも大荒れだもんね。

「ねえ、岸田。やっぱり日誌手伝ってよ。今日の出来事とか書くことなさすぎる」

 彼の発言は聞こえなかったことにして、日直の仕事の依頼をした。すると私の予想通り「ごめん、俺この後用事があったの忘れてた」と言って席を立って教室を出て行ってしまった。どうせ教室の外の廊下で友人たちと騒ぐだけだろう。期待してなかったからいいよ。

 私は岸田が来てから一つも進んでいない書きかけの日誌を閉じ、机のなかに仕舞った。昼休み終了の予鈴が鳴るまであと5分はある。それまで軽く寝てしまおう。そして鈴が園田と笑いあっている様子も忘れてしまおう。今日の鈴は昼休みの間に私のいるところまでは来てくれなかった。

 


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