番外編「第一回欠陥ラジオ」
「えっと、この番外……編? は、本編とは全くかんけーないし、メタ発言……? もあるから、ストーリーだけ追いたい方はどんどん……次へ読み進めてください……だぞ!」
「おいシアン。カンペ持ってるのにそこまで詰まるってどういうことだい?」
「さあさあ始まりました欠陥ラジオでございます! 場所は某所、時間は不明でその他諸々の都合を無視してやっていきたいと思うのは主人公のサイトウハヤトでございます!」
「エストス=エミラディオートだ」
「シアンだぞー!」
「はい、ということで陽キャでもない俺が無理したテンションのまま続けていくのでよろしく‼︎」
「ハヤト。始まったはいいが急にこんなことを始めて何をするつもりなんだい?」
「俺が知るわけねぇだろとりあえずやるってことになったんだからやるんだよ!」
「だったらやるしかないね。じゃあ早速お便りを読んでいこうか」
「え⁉︎ 異世界でそんなものあるの⁉︎」
「お便りというよりは今住んでいる家にぶち込まれた苦情のようなものだから実質お便りということだね」
「苦情はお便りとは同義じゃねぇよな⁉︎ 一括りにされても理解できねぇぞ!」
「まあ、とりあえず読んでみようか。シアン、頼むよ」
「おー! 任せろ!」
PN『天に選ばれし美少女メイド』さんからのお便りだぞ!
『最近食費のやり繰りがかなり大変なのです。ただでさえ五人な上にシアンちゃんの食事を考えるとすぐに貯金が消えそうなのです。最近はハヤトさんの食事だけとっても安いお肉でカサ増ししてごましていたなのですが、そろそろヤバいなのです。ハヤトさんをもっと仕事へ駆り出してくださいなのです』だぞ!
「……ツッコミどころが多すぎて何から話していいのか分からないんだけど」
「要するに君が堕落しているのが悪いからもっと働けということだね」
「なんで俺が悪いんだよ! 収入源が俺だけってのもキツい、ってかボタンの野郎、俺の飯だけカサ増ししてるってどういうことだ⁉︎」
「シアンのご飯がなくなるのか?」
「いいか、シアン。お前のご飯がなくなるんじゃなくてお前がご飯をなくしてるんだぞ? そこは分かってるよな?」
「よく分からないぞ!」
「ついに断言しやがったなこの野郎! まだお前のせいで全員分の夕食が蜃気楼のように消え去った魔の一日目は忘れないからな!」
「シアンはお腹が減ってただけだぞ!」
「だからって俺たちの飯がなくなるのはズルいだろうが! これ以上やるってんならシアンの飯を俺が横取りしてでも、って待ってシアンそれはおかしい俺は正しいことを言ってるはずなんだよだからやめ――おんぎゃぁぁああああああああ!?!!!!??!?」
「それでは、次のお便りに行こうか。いいかい、シアン?」
「おー! お腹一杯だから大丈夫だぞ!」
PN『なんじゃぺんねーむとは! 知らん!』さんからのお便りだぞ!
『元気かハヤト! 妾じゃ! 妾は元気……ではないのぉ。実は仕事がかなり多いのじゃ。女王になった手続きや他国の要人への挨拶回り、そしてその間に公務などなど。腕が二本では足りないようなキツい仕事たち。正直もう面倒になってきたのじゃ。もっとこう、王とは椅子にふんぞり返って命令を飛ばせば良いものではなかったのか……? というわけで嫌気がさしたら気分転換に遊びに行くのでちゃんと妾をもてなすように!」だぞ!
「……ハヤト。そんなところで干からびてないで早く起きたらどうだい?」
「あのさ、本当に痛いしなんで俺が悪くないのにこんな仕打ち受けるワケ……? って、こりゃまた生々しいのが来たな」
「まあ、あれだけの大事件を起こしてさらに王位継承となれば、やることは多いだろうね」
「王の仕事っていまいちイメージ湧かないなぁ。俺も椅子に座ってるだけでいいのかと思ってたわ」
「このスワレアラ国は最高権力者が王だからね。様々な公務や申請の最終決定権は王に一任されているんだ。だからこの国で何かやろうとするならあの王女の許可が必要になる。もちろん、彼女が見るまでもないような小さなことは他の者が代理で許可をするのだけどね」
「ほーん。よく分からねぇや。な、シアン?」
「シアンはねむねむだぁ……」
「おお。理解する、しないどころか話を聞くことすらしてないなんてさすがシアンさんです」
「本当に君たちは頭を使うのが嫌いみたいだね。もう少し知識を持ったほうがいいと思うけれど」
「ちょっと言い方キツくない? そこそこセンシティブな俺のメンタルは簡単に傷つくんだからね? ……でもまあ、確かに知識を蓄えるべきってのはその通りだけどさ、俺、ライトノベル以外の本を読まない系の男だったから無駄に中二チックな難読漢字くらいしか蓄えなかったんだよね」
「いまいちそのライトノベルなるものがどのようなものか分からないから判断には困るね」
「ちなみに、ものによっては可愛い少年がお姉さんに甘やかされたりするやつもあるらしいぜ」
「そのライトノベルなるものはどこにあるさっさと出せ」
「え? いやもちろん俺のいた世界にしかないからここにはあるわけねぇよ?」
「使えないなこのクソ無職浪人ロリコン野郎」
「なんだその暴言のオンパレードは!? さすがの俺も傷ついちゃうよ!?」
「……まあいい。またあの可愛い勇者を愛でて紅茶のおともにしながら優雅な午後を過ごすとしよう」
「本当に気の毒になってきたぜあのガキ……」
「では、そろそろ次のお便りの時間だ。起きてくれシアン、仕事だよ?」
「おー…? ご飯の時間か……?」
「さっき俺の血を散々吸っておいてまだスカスカなのかシアン。お前、胃袋の中に魔物飼ってたりしないよな?」
「君が吸われる分には別に構わないだろう? ほら、次のお便りだ」
ん~。『ギルドのグラマラスレディー』さんからのお便りだぞ……。
『こんにちは。私、ギルドの受付で働いているのですが、少しご相談があります。実は最近、クエストの報告の時に話していてハヤトさんと目が合わないと思ったら視線が常に胸元にあることにようやく気づきました。意識し始めると気になって仕方ないし不快っていうか今までずっと胸を見られていたのかと思うと正直気持ち悪いので早くやめさせてください』
「一言だけ、弁明の機会をあげよう」
「……男なら誰しも見てしまうと思うんです」
「まあ、私の胸もたまに見るほどに欲深い人間だということは知っているから今更という気がするけどね」
「え? バレてたの……?」
「むしろ今まで気づかなかった受付嬢が鈍感すぎると私は思うけどね」
「……oh」
「ハヤト? さっきからなんの話をしてるんだ?」
「自分でお便り読んでいたのに分かっていないのかい? いや、ここは分からなくていいんだシアン、お前には知らなくてもいい世界が必ず存在する。そうだ、ここはお前の踏み込んではいけない不可侵領域……‼」
「ハヤトがいやらしい顔で女性の胸元をじろじろと見ていたらしい」
「なに言ってんだよこのショタコン野郎‼」
「本当なのか、ハヤト」
「まっさかぁ! 紳士でジェントルメンな俺がそんなことをするわけないだろう!? それに受付のお姉さんの場合は無防備すぎるから不可抗力なんだ! 見る気はなかったのに視界に入ってきちゃったからさ! いやあ、あの人のお茶目っぷりにはまいったまいったァ‼」
「どうする、シアン?」
「シアンはやらしーこと、嫌いだ!」
「え……? ねえ話聞いてた? 俺は悪くないんだよてかなんで結構頑張ってきたのにラッキースケベな展開の一つもないの助けてよエスえもん!」
「まあいいじゃないか。幼女に噛まれるなんて、ロリコンの君にはご褒美だろう?」
「んなこと聞いてねぇんださっさとその白衣のポケットから不思議な道具で俺を助け――ウギャァァァァァァァァアアアアア!!!!!!!」
「ほらハヤト、干からびてないで次回予告だ」
「じ、次回はなんとあの人がゲストに……? さらにあの人からのお便りでさらなる修羅場が……って、これ以上は本当に死んじゃう! 本当に助けて!」
「ハヤトー。ハラペコダー」
「ウッソだろあんなに吸ったのにかいもうやめてこれ以上は死……うぎゃあああああああ‼ 【回復】‼ 【回復】‼ 【回おんぎゃあああぁああぁあああ‼」




