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世界を救った英雄は、異世界で略奪行為に勤しみます!  作者: nomi
栄光の空賊団と野良猫
6/28

5

 

「出来合いのもので悪いわね。明日のコルミド港で買込むつもりだったから、食料も少ないのよ」


 サラがそう言いながら真人の前に料理を置く。

 野菜と香辛料をまぶした肉を混ぜて炒めただけのものに、出汁を使った温かいスープである。


「……うまい」

「そう? ありがと」


 サラは、満更でもなさそうに微笑んだ。

 小柄で、小動物のような愛くるしい見た目だが、微笑む表情はどこか大人びていた。

 長い黒髪を後ろで結び、薄ピンク色のエプロンをしているサラ。

 真人と向かい合って座っている。

 頬杖をついて真人が食べる姿を見る彼女には、どこか母性を感じさせた。


「ちょ、なんで泣いてるのよ」

「え、あ」


 真人は静かに泣いていた。

 自分でも、少し驚いた。


「ほら、ハンカチ」

「悪い…えっと…」

「サラよ。呼び捨てでいいわ。私もマサトのこと呼び捨てで呼ぶから。それと、こういうときはお礼を言うものよ」

「そうだな、ありがとう。サラ」


 サラは、素直な返答をする真人が意外だった。


「皮肉しか言えない人かと思ってた」

「俺の話か? まぁ、素直じゃないとはよく言われたよ。昔からな」

「見るからにガキっぽいもんね。マサト」


 お前に言われたくねーよ。

 とは思ったが、こんな時間に嫌な顔せずご飯を作って貰った上、ハンカチまで貸してくれたサラと口喧嘩する気も起きなかった。

 ちなみに他三名は、真人仮入団で話がまとまった後解散し、各々就寝していた。


「それにしても、驚いたわ。マサトって強いのね」

「はっ! そりゃあな。常勝無敗の英雄様だよ俺は」


 サラは笑った。

 けたけたと、見た目相応の、可愛らしい笑顔だ。


「自分で自分を英雄って名乗る人初めて見たわ」


 サラの笑顔に、真人は少し照れ臭くなった。


「うるせ」


 そう返すのが、精一杯であった。



 ○



「ダグ、コルミド港への入船許可は」

「ばっちりです、キャップ。いつも通りの裏口入港です」


 翌日、快晴。

 真人を乗せた強欲船(グリード・シップ)は、当初の予定通りの航路を辿っていた。


 真人、サラ、リリアはデッキで外の景色を眺めていた。

 雲すら下に位置する景色は、なかなかに壮大だ。


「マサト、その格好で街に行く気?」


 サラにそう言われ、自分の格好を見る。

 真っ白な囚人服。


「裸じゃなきゃいいだろ」

「あのね。仮とはいえマサトもこの強欲船(グリード・シップ)の団員なの。そんな真っ白な目立つ格好ダメよ」


 サラが真人の胸に指を突き立てる。


「おー? なんか二人とも仲良くなったん?」


 それを見ていたリリアが、目をパチクリさせた。


「と、とにかく。はいこれ。普通の冒険者っぽい格好見繕ったから。着替えてきて」


 サラが小さい背中をさらに小さくさせた。

 リリアに指摘されて、少し照れたのだ。


「そか。わかったよ、ありがとな」


 そう言って、サラの頭をポンとする。


「子供扱いすなっ!」


 わざとである。


「サラちゃん可愛いー! 私もポンポンするー!」

「私で遊ぶなー!」


 そんな三人を操舵席(ブリッジ)から見るダグとマクベル。


「なぁダグ」

「なんでしょうキャップ」


「…若いっていいなぁ」

「私もまだ二十歳ですので、あちらの仲間です」


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