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世界を救った英雄は、異世界で略奪行為に勤しみます!  作者: nomi
栄光の空賊団と野良猫
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4

 

「ダウト」

「もー! なんでわかるのさ!」

「リリア、顔に出過ぎ」


 真人とマクベルを船外に転移させた後、手持ち無沙汰になった三名はリリアの提案でトランプをしていた。


「ダグはあの人とキャプテン、どっちが勝つと思う?」

「それはキャップでしょう。あの人がどれだけ人外レベルか知りませんが、渡航者が神器持ちのキャップにはどうあっても勝てませんよ」


 サラは、つまらなそうな顔だ。


「ああなったキャプテンはどうせ、拳を交えたこいつは今日から俺のクルーだー、とかなんとか言いそう」

「いいじゃないですか。キャップと向かい合っても一歩も引かない姿勢。嫌いじゃないですよ。ダウトです」


 リリアが出した札をダグが指差す。


「なんでよぉー! なんで二人して私をいじめるのよぉー!」

「リリアはどう思うのよ」


「そーだねー。最初は売り飛ばすつもりだったわけだし、まさかあんな目つきが悪いとは思わなかったし、うーん、クルーになったら楽しそう!」

「前後の理論が破綻してますねリリア」


 賛同的な二人を他所に、サラはさらにほっぺを膨らます。


「あんたらはいいわよ。船の財布と食料を管理してる身にもなってよ。あいつがもしここで乗船したら、明日からのご飯代だってタダじゃないんだから」


「泣く子も大泣きする天下の空賊団が、ケチくさい主婦みたいなこと言うなー!」


 叫ぶリリアの顔を、がし、と鷲掴みにするサラ。


「一番食費と雑費がかかる奴が調子に乗るな」

「痛い痛いイタイよー」


『姐御たち! た、大変です! キャプテン、キャプテンが!』


 哨戒(しょうかい)の船員から、作戦室に緊急連絡が入った。


「デッキに向かいましょう! まさかと思いますが…」

「そのまさか、かもね」



 ○



「まさか、キャプテン! 負けたんか!」


 真人に担がれて、額から血を流すマクベル。


「リリア。俺にだってプライドがある。そうはっきりと言うな」

「負け犬キャプテン! 負け犬キャプテン! かっこ悪いぞ!」


 容赦の無いリリアである。


「おい。ここまで運んでやったんだ。俺から剥いだもん全部返せ」


「わかったわかった。サラ、頼む」

「了解。負け犬キャプテン」

「ぐ……」


 威勢良く飛び出して行った手前、キャプテンとしての沽券が危ういマクベルであった。


「まさかのまさかですね。キャップ。まぁ、たいした怪我をしてないようでなによりです」


 ダグが真人からマクベルを受け取る。


「面目ないな、ダグ」

「いやいや、ここは渡航者さん……マサトさんを讃えるべきでしょう」


 ダグは、真人をまじまじ見る。


「なんだよ」


 戦闘フォームを解除すると、そく全裸になるため依然そのままの格好だ。


「それで、マサトさんはこれからどうするんです? 身寄りもなければ、お金もない、行くべき場所さえないでしょう」


 考えていなかった。


「それは……あれだ」

「今から考える、というところでしょう」

「ぐ……」


 先ほどのマクベルと似たような反応の真人。

 存外、似た者同士なのかもしれない。


「キャップとの空中戦を制するのは、まぐれの一言では済まされません。そんな力を持ったあなたを人買いに売るのはもったいない」

「そもそも、お前らがまだそのつもりならこの船ごとぶっ飛ばす」


 三白眼を光らせる真人。


「でしょうね。ちなみに、言っても信じてもらえるかわかりませんが、キャップは作戦室であなたを煽った時から、我々のクルーに入れる気満々だったんですよ」


 真人は、先ほどの戦闘を思い出す。

 確かにマクベルが本気で殺す気がなかったのは知っている。

 だから、こちらも殺すつもりは毛頭なかった。


「で、ここは間をとって、体験入団するのはどうでしょう」

「体験入団?」


 ダグは、声高に話を続ける。


「えぇ、別に我々の命令に従う必要はありません。マサトさんもこちらの世界に来たばかりでしょう。この船で、世界をじっくり見て回るのも悪くない話では?」

「おい、ダグ。いつからこの船の決定権がお前に移ったんだ? 神器ぶつけんぞ? お?」

「負け犬キャプテンは黙っていてください」


 マクベルの扱いが地に落ち始めた。


「ほーらキャプテン、こっちこい、こっちこい」


 リリアが犬を呼ぶように手をぱんぱんしている。


「リリア、お前後で覚えてろよ」

「なにやってるのよ……ほら持って来たわ」


 サラが、丁寧に畳まれた真人の服を持ってきた。

 ダグが、真人に最後の一押しをする。


「今入団するなら、シャワーとサラのお手製ご飯が付いてきます」

「その話乗ったァ!!」


 食い気味に言う真人であった。

 どれだけの戦闘力を誇ろうとも、衣食住が伴わない生活は耐えられないのである。


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