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世界を救った英雄は、異世界で略奪行為に勤しみます!  作者: nomi
栄光の空賊団と野良猫
3/28

2

 

 船内、作戦室(ブリーフィングルーム)


「リリア、サラとダグを呼んでこい」

「あいあいさー!」


「水くらい出してくれよ。喉がカラカラなんだ」


 戦闘スタイルを解いたことで、盗人ではなく自分たちが拾った人間であることに気づいたキャプテンとリリアは、ひとまず真人を連れて作戦室へと場所を移した。


「ここが喫茶店にでも見えるか?」

「どう見ても見えねぇな」


「そういうことだ。お前は俺たちが拾った商品として、この船に乗っけておいたのさ」

「船、ねぇ」


 作戦室から窓を一瞥する。

 見えるのは水平線ではなく、地平線。

 それもかなりの高度で飛んでいる。


「渡航者にしては、なかなか落ち着きがあるな」

「渡航者?」


「お前みたいな、明らかに場違いな奴のことだよ」

「真人だ。お前じゃない」


 だん、と机を叩く。


「細かいことを気にする奴だな。裸のくせに」

「お前らが身包み剥いだんだろが!」


 飄々(ひょうひょう)とした態度のキャプテン。

 真人は思う。

 嫌いなタイプだこいつ!


「俺が要求することは三つ。ここはどこか教えろ。お前らが誰か教えろ。んでもって、俺から剥いだもん全部返せ」

「いいだろう。先ほどの格好で、俺の船を壊されてはたまらんからな」


「なんなんですかキャップぅ。もう航路は安定して、天気も良い。あとは寝て起きたらコルミド港につきま…誰ですかそいつ」

「キ、キャプテンがはだ、裸の男の人連れ込んでる!」


「キャプテン!二人を連れてきました!」


 作戦室に、長身の男と、眼鏡をかけた小柄の少女を連れてリリアが戻ってきた。

 二人とも、裸で腕組みをして鎮座する真人に驚きを隠せない。


「ちょうどいいタイミングだ。リリア、こいつに自己紹介をしてやれ」

「こいつでもない。ま、さ、と、だ!」


「裸で凄むと、目つきの悪さが際立つねぇキミ」


 ぷすーと笑うリリア。

 小馬鹿にしてくる有様を見て、真人は思う。

 こいつは後で絶対しばく。


「私はリリアだよ! 君、真人くんを拾ったのも私さ!好きなお宝は、珍しい鉱石! こっちの長身のっぽくんがダグだよ、ウチの操舵手! んで隣のちんちくりんが、サラ! こんな見た目だけど、会計、料理、掃除洗濯なんでもこなすスーパーガールさ!」


 オレンジの髪を左右に揺らして、にこにこ笑う彼女は天真爛漫という言葉が似合う。


「……長身のっぽの、特に特徴がない操舵手です。よろしく」

「……ちんちくりんの、スーパー雑用係りです。よろしく」


 リリアに紹介された二人は、雑な紹介のされ方に目に見えて落ち込んでいる。

 特にリリアを責めようとしないあたり、いつものことなのだろう。


「んで、俺がこの船の船長をしている。サー・マクベルだ」


 キャプテンであるマクベルは、真っ直ぐに真人を見る。

 真人を推し量ろうとしているのか、単純に度量を見せているのかはわからなかった。


 真人もマクベルを真っ直ぐ睨み返す。


「俺は神崎真人。おそらくこことは違う世界から来た。目が覚めたら素っ裸で簀巻きにされていたから状況もなにもわからん。目つきが悪いのは、生まれつきだ」


「そのわりには、幾分冷静だな。マサト」

「場慣れしてるんでね」


 そもそも、もう自分は死んだものと思っていた。

 あの裏切りもののジジィ共がいないだけで、気分はむしろ清々しいと言える。


「なるほどな。で、ここがどこかと言えば」


 ダグに目線を向ける。


「えー、現状高度九千八百メートルを維持して西パレス共和国国境を越え、コルミド港に進行中。って、寝起きの渡航者さんに言ってもわかりませんよね」


 全然わからん。


「渡航者、異世界からの来訪者のことを指します」


 サラと呼ばれていた少女が、真人に説明を向ける。


「俺の他にも、たくさんいるのか」

「ええ、います。渡航者の正確な出没起源は、諸説ありますが、古くは皇国暦元年からと言われているのがメジャーなとこです」


「渡航者にも、いろいろな奴がいる。ボロボロの布切れ一枚でやってくるやつもいれば、お前みたいな高級な絹を纏ってやってくるやつもいる」


 マクベルはいつの間にか酒を呑みつつ話す。

 高級、と言われても。

 最後に着ていたのはただの囚人服だ。


「ま、文明レベルの差ってやつです。私たちのいる世界にくる人間にも、様々な文明が存在していることから、世界という概念は一つではない、というのが皇国教材にも載る常識です」

「すごい世界観だな。この飛ぶ船も、異世界の技術なのか」

「異世界の技術、という表現が新鮮です。そもそも渡航者のもつ技術レベルは、精々文明の一パーセントにも満たないものばかりですので」


「そうだよー、そもそもこの世界には魔法っていう人類の英知があるからね!」


 話になかなか入らないリリアが、ここぞとばかりにドヤ顔を向けてくる。


「へーそりゃすごい」

「もっと驚いてよー! さては信じてないなぁ!」

「そういうわけじゃない。興味ないだけだ」


「さて」


 酒を一気に飲み干したマクベルが、本題に入る。


「懇切丁寧に教えてやったわけだが、そもそもお前は俺たちに売られる商品だ」


 先ほどの飄々とした態度から一変し、場に緊張感が増す。


「この船は奴隷船ってとこか? そのわりに商品のラインナップが俺一人なら、赤字経営ご苦労なことだ」


 三白眼を光らせ、真人はマクベルの挑発に乗る。


「そんなちゃちな船じゃあねぇ。金銀財宝、他人の肥やし。なんだって奪う。拾えるもんも全部拾う。天下に名高い空賊団、強欲船(グリード・シップ)さ」


 リリアがキャプテンかっこいいーと野次を飛ばす。


「話が見えねぇな」

「お前に選択肢をやろうと思ってな」

「選択肢だ?」


 マクベルは、三番の指を立てた。


「一つ、このままおとなしく人買いに売られる。まぁ上手くすれば貴族のおもちゃとして、衣食住には困らんだろう」


「却下だ」


「一つ、俺に気に入られて、この船の船員として働くことだ。働き次第で、相応の報酬を与えるし、俺の管理下のもとで自由にすればいい」


「却下だ」


「一つ、俺にボコボコにされて高度一万メートル下で土の肥やしになるか、だ」


「却下だ」


 ニヤ、と笑う真人。

 笑い返すマクベル。


「度胸は買ってやる」

「ついでに喧嘩も売ってやるよッ!」


 真人が(せき)を切ったように、感情を爆発させる!


想いは言葉に、(オーバー)言葉は力に(ドライブ)ッ!!」


「リリア!」


 真人が力を纏うと同時に、マクベルが叫ぶ。

 マクベルの指示を待っていたかのように、リリアが魔法陣を展開した。


ばいばいまたね!(テレポート)


 真人と、マクベルは、一瞬で()()()()()()()()()()()()へと転移された。


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