表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/28

 

――神崎(かんざき)真人(まさと)は特別な人間だ。


「真人よ。お前はよく頑張った」

「あぁそうかい、クソジジィ」


 黒髪、短髪、三白眼。

 柄の悪さは折り紙つきだ。

 その目をギラギラさせながら、真人は両手足を拘束され地下牢に閉じ込められていた。

 まるで、囚人だ。


「だが、お前は強大過ぎた。いつその力が世界に牙を剥くかもしれぬ」

「この拘束を外せば、今にでも牙を剥いてやるよ」


 老人は、真人を哀れむような目で見る。

 彼をこうしてしまったのは自分の責でもあるのだ。


「すまんな」

「謝ってんじゃねぇ。俺は、俺の思うまま、俺がしたいようにしてきた!! だから、テメェが謝るなッ!!」

「私は知っておる。どれだけ強がっても、お前は」

「うるせぇ!! とっとと殺すなら殺せ!!」


 真人は吠える。

 彼は自身でもわかっている。

 老人が本当は自分の心配をしてくれていること。


 自分が、世界から疎まれてしまったこと。


――世界を救った英雄(ヒーロー)は、畏怖の象徴になったのである。


「教授。時間です」

「うむ。そうだな」


 教授と呼ばれた老人は、最後に真人を一瞥すると悲しげに別れの言葉を放つ。


「こうなってしまったのは、本当に悔やまれる。だが、お前は間違いなく世界を救った英雄だ。心から感謝をする」

「……そーかよ」

「あぁ、ありがとう」

「殺そうとしてる奴に感謝されてもな」


 真人は、皮肉混じりに笑った。

 世界を破壊せんとする巨悪相手に戦い、ボロボロになってまで守った世界に、最後は裏切られたのだ。


 阿保らしくて涙も出ねぇ。


「じゃあな、じーちゃん」

「……真人」


 最後の言葉を酌み交わした後。


 真人は処刑された。



 ○



「あんまりです」

「五億番台、二十三世紀の英雄のことですか?」

「えぇ。せっかく私が彼に英霊の(しるべ)を打ちつけたのに、まさか世界を救って即お役目御免だなんて」

「……貴女。そう言って十三億番台、十五世紀の英雄も転生させてたじゃないですか」


「だって。オルレアンの乙女なんて呼ばれてたのに、火刑はあんまりよ」

「まぁ、今回も似たようなものでしたね。群衆は、得てして強大過ぎる個を嫌うものです」


「神代行、八百兆もの世界管轄者として、神崎真人の転生を申請します」

「申請しちゃったよ。また」


「いいじゃない。減るもんじゃないし」

「まぁ私の世界線に来なければいいですけど」


――申請、不可(エラー)

――申請、不可(エラー)


「ありゃ」

「英霊の導が濃すぎじゃないですか。エラーなんて滅多に出ませんよ」

「うーん……。なら……」


――申請、許可(オールグリーン)

――申請、許可(オールグリーン)


「おお。どうねじ込んだんです?」

「ふふ。転生をやめて、転移にしたの。さらに、()()()()()()の七億番台、十世紀にしました」


「あぁ、なるほど」

「七億番台は、前任が英霊の導を打ち込みすぎた上、どうしようもない爆弾を置き土産にされて、どう救済したものか考えてましたし」


「彼なら救えると?」


「さぁ? それは神のみぞ知ることですわ」


 彼女は、悪魔のように微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ