表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

彼と出会って7年目


私も17才となる。

我が儘で高慢な王女様は政治にも口をだす。やれカボチャのプディングがたべたいニンジンケーキがたべたいなどと、好き放題言い全て叶えさせている。


不思議なのは父が何も言って来ない事だ。

昔から政治はどうでも良いと話していた父だが、スイートポテトの時は随分反対された。


父が何を考えているか、わからないが、チャンスとばかりに自分の高慢さを回りに売り込み、そしてやがて来る日のために穀物の種をまく。

「君は頭がいいね。やりたいこと確実にやってのける」

どこまでを見通しての発言かは解りかねるが、政治に関しては父はやっかいではない。

やっかいなのは


「君のお気に入りの玩具君いつ貸してくれるの?」


私の玩具を取り上げる事。


「……わたしの玩具よ?」


「少しくらいはいいと思わない?」

父が本気で彼を手に入れようとする。


逃がさないとーー。

彼が捕まってしまっては意味はない。

父に捕まるなど、当初の予定にはなかった。


しかし、何故彼は出ていかないのか。

どぅここから逃げるべきなのか、どこに逃げるべきなのかきちんと今の彼ならわかる。


ーーここに留まる理由が?ーー


そう思って彼の身辺をもぅ一度洗ってみるが、どうも理由がなさそうだ。ここには彼の守るものはなかったし、懇意にしてる男女もいなさそうだった。

しかし、逃がさないと、と、思っている一方で、もぅ少しだけと思っている。それ故に、彼を無理矢理追い出せずにいる。


悩んでいるとまた父から呼ばれる。最近は王の間に呼び出される事が多くなったと思われる。私からゼラニウムを取り上げるかどうかの話をするのが好きなのだろう。


緋色の扉をゼラニウムとくぐる。昔から彼はこの扉を潜るのは好きではなさそうだった。王族たちが集まる場所。本当に嫌な場所なのだろう。


「どうしたのかしら?お父様?」声が、手が震える。あの目が怖い。でも大丈夫、隣にはゼラニウム、それだけで安心できる。


「いつも、持ち歩いてる玩具を、そろそろ取り上げるのも楽しいかと思って。もうじき伴侶を決める時期だと思わないか?玩具が側にあるとどうもそれと遊んでばっかりで、外に目を向けないから」

何適当な理由を。やはり取り上げようとするのが楽しいだけじゃないか。


「お父様は、私がお気に入りを持っているのがうらやましいのね?あげないわよ」

力を込めてあげない、渡さないと伝える。


「まぁ確かに、欲しいかと、言われれば少し興味はあるけど。今回は引き離すのが目的で、ほら、えっと、伴侶が、ね?」

父は引き下がらない。


「そんなの嘘でしょう?お父様も嘘下手だもの」


「やっぱり?俺も嘘下手だからすぐばれちゃうね」にこにこと、気味が悪い笑顔を向ける

「是が非でも遊んでみたくて」


諦めないのね。でも、私も諦めないわ。

決めているもの、心を潰しても、体を犠牲にしても叶える夢のために彼には指一本触れさせない。


あぁそうねー。覚悟通り……そう、すればいんだわ。


「気に入らないわ。どうして、お父様は私の人形ばかり気にするの?ねぇ大好きなお父様?私の手をとって私が欲しいとは言ってくれないの?」

「ねぇお父様?私を選んで?」


目を丸くした父がいつも以上に気味が悪く嗤う


あぁ……ーー怖い。でもゼラニウムをこれで守れるなら。


「君が遊んでくれるなら、それ以上に楽しいものはないね。それじゃあ今度君に遊んでもらおうかな」


父の視線が私に定まる。得体のしれない恐怖が身体を包む。

ーー後悔なんて、ない。何かを初めて守れたと、思った。

そのことが、私に勇気をくれる。



部屋に帰る途中ゼラニウムが私に尋ねる。いや、独り言だったのかもしれない

「なんで?……怖かったんじゃなかったのか?……手も声もいつも震えて………」

「そうまでして、なんで俺を守ったり……俺が……いや……」


答えなくてもいい言葉だと思った。でも、これから父の遊び相手をすると決まった今、これ以上彼の側にいたくない。

私を見てほしくない。

「お前、私が守ったように……見えるの?」

「……気のせいじゃないかしら?」

「あれは私の本心よ」

いつものように笑って言えたのか……よくわからない。


「相変わらず……嘘下手だよな」「バレバレなんだよ」

そう言葉を落としたのが最後。



その日彼は城をでた。






ゼラニウムが逃げて何日かたった後父が私に声をかける。

「やぁ、まさか、お気に入りの人形を捨ててしまうとわね」


本当にどこまで、解っているのかわからない父。

「飽きちゃったんだもの。もぅいらないわ」


「昔から嘘下手だよね?改善させるべきでは?」にこにこ笑いながら父は言う

「おいで?慰めてあげるよ?」そして、私に手を伸ばした。


この手を取ることなどないと思っていたのにーー。

少し前までは、父が私を見るのが怖かった。

そんな時は、ゼラニウムの側にいた。そうすると、心が守れたから。でも、もぅ彼はいない。

そして、今後はゼラニウムを守るために、

怖いなどと、言ってられない。


父の目が二度とゼラニウムに向かないように、私が父の相手をする。





どうか無事でゼラニウム

次に会う日まで、父にみつからないでいて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ