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12.そして冒頭へ

「後は城に火をつけお前に教えてもらった抜け道でここまできた」

「少しは思い出してくれた?」

剣を握り返し、努めて、声が震えないように、こちらも余裕があるかのように振る舞う。


「私の飼っていたペットは、おしゃべりな男だったのね。知らなかったわ」

「それで?わざわざ話したのは何故かしら」

質問に質問で返す。答えたくないことは答えない。いつもの彼女だと思った。5年たっても何一つ変わらない彼女をみて。まるで5年前に戻ったみたいだと錯覚を覚えそうになる。


「別に?俺が話していた間寿命が伸びてよかっただろ?」

「まぁ本当いうと、あんたのペットが噛みつく所をみて、少しでも絶望した顔がみれたら……」

「俺に媚をうってもいいぞ?泣いてすがって、許して乞えば。俺だけを見て言えるのなら……」

それは彼女の元から離れ、5年間ずっと思っていた事だった。泣いてすがる彼女を見れば、助ける事も……



それでも、くすくすといつもの彼女の笑いが耳に届く。蠱惑てきな笑みを浮かべている。

「と、そんな女じゃないか。」

心なしか、いつもより楽しそうにも思える。


「なぁアンジェリカ・マリーゴールド・レミリア敗けを認めてくれよ。後はあんた一人なんだ。」

先ほどの襲撃で城は完全に包囲されるだろう。ここに他のやつらが来るのも時間の問題だ。

一番近いここへの道を他の仲間に教えなかったのは、彼女と向き合う時間が欲しかったから。

助ける選択を行うのも、倒す選択を行うのも自分でありたかった。


何故、彼女を助けたいと思う気持ちがあるのか、最早よくわからない。飼われていたとはいえ長年過ごした相手への温情なのか、それとも何か別の感情があるのか。

憎い。それ以外の感情を探して来なかった俺には。どうにも答えにたどり着けそうもない。



シキリィィ……彼女の剣を抜く音が聞こえる。俺とやり合うつもりなんだろう。

「敗けを認める…なんて…無理な話か」


「そうね」

剣がぶつかり合う音がする。



彼女の剣を受けるのは何年ぶりだろうかーー。

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