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暗き森へ

一度ギルドに戻ってきた自分はシエルとマリを呼び出した。

部屋を借りるのは面倒なので自分の部屋に集合することにした。

「そういえばなんだかんだで二人共自分の部屋に来るのは初めてなのか」

このギルドに入ってから自分から部屋に招待はしていない。

まぁ…侵入はあるけど。

「たしかにそうですね…あまり気にしていませんが」

「…一度忍び込んだことある」

ちょっと待てマリ。聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ?

「大丈夫…ちょっとマコトの寝顔を見ただけ」

「なっ!?それって犯罪でしょう!?」

「…なかなかのものだった」

油断したな…これからは部屋の施錠を徹底しよう。

「じゃなくて…二人共これから何か用事とかある?」

「いえ?私はありませんが…」

「…私も無い」

「じゃあ一緒にダンジョンに行かない?」

「……」

「……」

え?なにこの無言?もしかして変なこと言った?

「姉様…熱でもあるのですか?」

「…びっくり」

「あれ?なんか自分おかしい人になってない?」

「姉様自らダンジョンに行くのは初めてですので…てっきり何かの呪いでもかかっているのかと」

…失礼だな。呪い耐性は一応あるぞ?

「…もしかしてガランヴィールの件?」

「うん。暗き森の神殿っていうダンジョンにいるらしい。ギルが一人で行くなってうるさかったから二人を連れていこうとしたんだけど…」

「私は問題ありません。マリさんはどうですか?」

「…大丈夫」

よし。これで安全マージンはとれた。

「さて…行くのなら準備しないといけませんね。回復薬や解毒薬を持ってきます」

よくできた妹を持ったな…自分とは全く違う。

「…っと。感心してる場合じゃないな。アイテム整理してこよ」

最近になってアイテムを持ち込むようになった。

回復魔法があるので回復薬とかは別に持ってかなくても大丈夫だと思ってた時期もありました。

魔力を補給する魔力薬や、魔法の力を高める魔術薬…三万ダイトとかなり高価だが魔法の詠唱を早め、さらに魔力を補給する賢者薬。

全部魔術師系の薬だけど、効果がすぐに効く上、高性能なものがたくさんある。

なので危険時に使えるように持っていくことにした。

「あれ?マリは準備しなくてもいいの?」

さっきからずっと自分の部屋に座ったままで、全く準備をする気配がない。

「…マコト。聞きたいことがある」

「聞きたいこと?」

「…どうしてマコトは一人で抱え込もうとするの?」

「抱え込む…か。確かにそうかもね」

転生前も色々なことを一人で抱え込み、ストレスを溜め込んでしまっていた。

決して他人と会話できない訳ではないけど、頼むのは失礼かなと思って自分一人でやっていた。

「ただ単純にみんなのためにだよ。今回だって自分が適任だし、そこまで難しくは━━」

「嘘」

自分はマリの言葉に固まった。

「…本当はやりたくないんだよね?」

なんてこったい…マリにはお見通しか。

「……うん。本当は行きたくない。本部までなら良かったのに、ダンジョンに行くとなると…怖い」

邪神の洞窟でギルに殺されかけたことや、夢の中だけど混沌の神に身体を切られたことがあったからだろうか。

自分はダンジョンが怖くなってしまった。

「もちろんダンジョンは戦場だから死ぬことなんてありえる場所なのは知ってる」

蘇生魔法は存在するから蘇生が間に合えば復活はできる。

でも自分はわからない。もしかしたら転生の身体だから蘇生は効かないとかありえるかもしれない。

「…死ぬのが怖い。死にたくないんだ」

「…ならなんで引き受けてくれたの?」

「自分でもよくわからないよ。でも、無意識にやらないといけないって思ったんだ」

もしこの事件を放置したら大変なことになると予感した。

マリはガランヴィールに声をかけられてるから尚更だ。

「自分は守りたいんだよ。大切なものを…マリやみんなを」

「……」

突然マリは自分を抱きしめてきた。

「マリ…?」

「…私は一度マコトに励まされ、助けられた。なら…今度は私の番」

洞窟で励ましてあげたことかな。でもあれはほぼ無意識に話し続けただけなんだけど…

「……」

「ねぇマリ?ちょっと顔…近くない?」

「ん。ジッとして」

するとマリはさらに顔を近づける。

「え…えええ!?ちょっ…ちょっと待ってマリ!」

まずい!このままじゃ明らかに危険な予感がする!

自分は思わず目を閉じる。マリは息が当たるくらいまで近づいているのがわかる。

唇が重なり合う瞬間だった。


ガチャ。

タイミングよく扉が開いた。


「お待たせしましたー。少し多めに持ってき……」

シエルが入ってきた。

でも今の自分達の状況はキスする寸前で…

「…ごめんなさい。部屋を間違えました」

シエルは綺麗な180度ターンをして部屋から出ようとした。

「ちょっと待ってシエル!放置しないで!突っ込んで!」

シエルを説得するまで三十分はかかってしまった。


「なるほど…そういうことでしたか」

「…ごめん」

「いや止められなかった自分も悪かったよ…」

シエルは咳払いすると少し顔を逸らしながら話す。

「そういったことはもっと人目のつかない所でしてください」

「…わかった」

「まてマリ。それはまたするってこと?」

マリは頷く。もう百合展開はご勘弁願いたい…

「さて…そろそろダンジョンに向かわないと暗くなってしまいますから行きましょう」

シエルの誤解も解けたし、ダンジョンに行かないと。

ようやく自分達はガランヴィールがいると思われる暗き森の神殿に向かうことになった。

ここから目的地まで流石に遠いので馬車を利用した。

やって来た馬車に乗っていざ出発という時に、自分は大事なことを思い出した。

「あ…ミヅチに言うの忘れてた」

「…多分大丈夫」

「行く場所はどんな所か聞きたかったんだけど…」

馬車に乗ってしまったのでもう遅い。

「大丈夫だと思いますよ。一応私、調べてましたから」

なんと!流石頼れる妹は格が違うわー。

自分とマリは馬車に揺らされながら、シエルが調べてきた情報を教えて貰った。

ちなみに貸切なので三人しか乗ってないから話を聞かれる心配はないはず。

「なるほど…木の魔物なのに火が効かない魔物か」

「名前はシルバーツリーと言います。見た目も銀色なのでわかりやすいかと」

いや銀色の木なんて普通目立つと思うけど…

「じゃあ氷魔法かな」

「そうですが…姉様は砂炎魔法を使えないのですか?」

今さらだがこの世界には属性四元素として炎、水、風、土が存在する。もちろん合成魔法を使えばさらに増える。雷なら炎と風を合わせると雷魔法、シエルが言った砂炎魔法は土と炎と合わせると使える。いわゆる溶岩みたいな魔法だ。他にも組み合わせは多くあるが…

「自分魔術師と違って合体魔法があまり使えないんだよね…」

自分は妖術師なのか四属性と無、光属性しか使えず、魔術師のように合体して魔法が使えないのだ。

あ、でも雷魔法なら単体で使える。なぜかわからないが…

「…あの二つの魔法を出せる魔法は?」

「『マジックチェンジ』?やってみたけど駄目だった」

あれは魔法を混合させる魔法だ。

…言葉だと合体してるじゃんと思うが、これは詠唱した二属性の魔法ダメージを与えるものなので合体とはいわない。

「そうですか…でも姉様と私は一応前線に出ることはできますからその時は姉様お願いします」

「それって自分がタンクになれってこと?」

「…?タンク?」

「ああごめん。前線張れってこと」

確かに魔法で擬似剣士にはなれるが…

「大丈夫です。回復は任せてください」

「…援護も任せて」

二人は後列希望なのね…

「はぁ…わかったよ。でも魔力が尽きるとまずいからシエルと交代しながら行こうか」

「分かりました。その時は姉様、援護回復お願いします」

「はいはい」

馬車が止まると目の前には深い森が見える。

神殿に向かう者を妨げる『暗き森』。

自分達はこの障害物を乗り越えていかないとガランヴィールには会えない。

大丈夫。三人で行けば問題ない…はず。




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