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憑依の追求

「ほほー!ここがマコトのギルドの温泉か!」

「え?ユマリア!?」

入口から入ってきたのは裸のユマリア姫だった。

「どうしたマコト?顔をそらして?」

慣れてきたって言って後悔した。ユマリアを直視できない!

「前言撤回…全然慣れてない…!」

「なーにをブツブツ言っておるか」

ユマリアはお構い無しに湯の中に入ってきた。

「ん?シエルも一緒じゃったか。姉妹で温泉とは仲が良いの!」

「はい。そういえばユマリア姫?偽物のユマリア姫の方は一体何をしようとしているのでしょうか?」

ああ、そっか。偽物の方は本部に着いてリスアスと話してるはずだからな。どうなったんだろうか?

「うむ…もし奴が本当に妹ならこの街を滅ぼすことはせんだろうが…魔物なら可能性はある」

「でも動機が分かりませんね…本部に恨みのある魔物ですか」

「まぁ、少なからずリスアスが何かやらかしたことにあるとは思うけど」

でもあの慎重なリスアスがやらかすことなんて想像できないな。

自分はユマリアとなるべく目を合わせないように喋る。

「難しいの…これからどうするかも考え無くてはならん。奴は本部にいるのじゃろう?なら顔が割れてないマコトかシエルが行って状況を聞いてくるのが妥当じゃが…」

「変身できる魔物は少ないはず。しかも大体が強力な魔物です。私と姉様で対処できるかどうか…」

いざとなればリスアスにも協力してくれるだろうけど。

「…もしかしてユマリアが目的だったりしない?」

ユマリアはピタッと止まる。

「いやだって返り討ちして最重要人物を逃がしちゃったんだよ?わざとかも知れないけどさ」

「返り討ち…姉様。ユマリア姫は一体誰に返り討ちされたのですか?」

「え?確かブラッドウルフの集団って言ってたような」

シエルはブラッドウルフという言葉に反応した。

「ブラッドウルフの集団…?姉様それはおかしいですよ。ブラッドウルフは一匹狼のはずなので集団では行動しません」

「じゃが妾が見た時には集団で動いておったぞ?」

「まさか…見間違いとかじゃないよね?」

「マコトよ。そういう言葉は面と向かって話すものじゃぞ?」

しょうがないでしょ!?もし男のままだったら湯けむりの中で死んでるわ!

…いかん思考がおかしくなってきた。

「もしかしたら逆…ブラッドウルフに変化していた魔物の集団の可能性もありますが…」

「その変化する魔物も集団では行動しないってこと?」

シエルは頷いた。うーん…集団じゃないといけなくなったとか?でもウルフってプライド高いはずだけど…

使役という考えも言ってみたが、シエルは一匹狼なので違うと言っていた。

「まぁここで考えてもわからないし、また後で考えればいいじゃない?」

「…そうじゃな。マコトの言う通りじゃ。ここで考えても意味がない。それに明日確かめればいい話じゃ」

偽物の姫様に直接聞けばいいからね。

「さて…じゃあ自分はこれで…」

「まてマコトよ。もう少し話さんか?一国の姫様の命令じゃぞ」

「姫様とかここにいる時点で効果はないから!」

自分は逃げるように足早に温泉を後にした。


「…いたマコト」

階段を登ろうとしたらマリが後ろから声をかけてきた。

「あ、マリ。おかえり」

「ん。どこに行ってたの?」

「ちょっと護衛を…マリは?」

「私は道の警備…してたら変なことを聞いた」

変なこと?姫様が偽物だとか?

「…街の地下道の警備が全滅したって話」

「あぁ…」

すまんそれ自分だわ。

「大丈夫。マコトだって知ってるから」

「えぇ!?なんで知ってるのさ!?」

「空を飛ぶ魔法を使う人間なんてマコトしかいない」

しまった。人間が一人で空に飛ぶ魔法って、今の所自分だけの魔法なんだっけか。次から街中で使うのは控えよう…

「でも突然呼び出しに合うなんて…異例」

「異例?というか呼び出しって誰から?」

「ギルド本部の人…でっかい鎧の人だった」

でかい鎧?リスアスでは無いな…?となるとその人はあそこの副ギルマス?

「大きな鎧といえば『歩く城壁』ガランヴィールだね」

今度は階段の上から声が聞こえてきた。

「リト!…歩く城壁って?」

降りてきたのはやけに解説口調のリトだった。

「その名の通りさ。あの人は城壁のように硬く強い。魔物や敵の集団が来ても一人で街門を守ったってさ」

すごいなその人。一人で防衛できるほど強いのか。

つまり街の防衛線ってことか。でもなんでマリを?

「うーんそれが理由がわからないんだよね。マリ一人に頼むくらいならもっと人員を増やせばいいのに」

「…私も聞いたけど理由は街の警備の手伝いって言ってた」

「何か裏がありそう…大丈夫なの?その副ギルマス」

「噂だけど最近行動がおかしいらしいんだ。意味の無い派遣や警備をするようになって…何かに憑かれたような」

憑かれた?幽霊か何かにか?

でもそう簡単に憑依される人なのかな?

「…私調べてみる?」

マリはガランヴィールのことを調べてくれるそうだ。だけど、

「いや、自分が調べるよ。マリは待ってて?」

「マコトなんで?」

「もし本当に憑依されているとなったらまずい。自分は精神支配無効のスキルがあるから憑かれることはないと思う」

「確かにそうだね。聞いた話だけど…憑依されると自分でもわからないらしいから」

自分がますます適任だとわかってきた。

「…大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫。でも万が一ってことがあるから…その時は早急な処理を頼むよ」

「…私、マコトを撃ちたくないよ」

それはお互い様だ。自分だってマリに自分を撃って欲しくない。

マリは悲しい顔をしているので自分はマリの頭を撫でる。

「自分だって深追いはしないさ。引く時は引くよ」

「…ん」

「マコト。調べるならまず本部に行ってみなよ。直接会った方が良いかも知れないけど…そこはマコト次第で」

本部か…偽物の姫様がいるからあんまり行きたくないけど…

「わかった。じゃあ明日行ってみるよ」

「うん。でも一人で行くのかい?シエルさんとか連れて行った方がいいと思うんだけど…」

確かにそれも考えたけど、こういう調べ物は一人の方が楽だから一人で行くことにした。


そして翌日。

「うわー天気悪いな…」

雨は降ってないけど今にでも降ってきそうだ。自分はあんまり濡れるのは嫌いなので外に出たくないのだが…

「そんなこと言ってられないよね」

シエルとユマリアには調べ物と言っておいた。リスアスから連絡来たら二人で行ってくれとも言った。

自分はギルドの扉を開けて、雨が降る前に本部に向かった。

「空飛びたいけど…目立つよな…」

昨日の地下道で飛び回ったからすぐバレるかも。

ここは大人しく歩いて行こう。

「それにしても…なんか人が少ないな」

なぜかはわからないが外に出ている人が少ない。

「警備兵はウロウロしてるな。まだ偽物の姫は本部か?」

一日で帰るようなことじゃないはずだから帰ってはいないはず…でもこれから本部に行くんだしあまり顔を合わせないように気をつけよう。

自分は周りを警戒しながら本部に到着した。

「まてお前!本部に何用か?」

「ガランヴィールさんに用があるんです。ここにいますか?」

「ガランヴィール様はダンジョンの探索に向かわれている」

ありゃま入れ違いだったか。

「どこに行ったかは?」

「残念だが一般人に言うわけにはいかん」

「うーん参ったな…」

入口で悩んでいると後ろから黒い影が現れた。

「ん?」

「こ、これはギ…ギルバート様!」

黒い影の正体はギルバートだった。

「ギル!」

「なんだ小娘か…ここに何の用だ?」

む、相変わらずの無愛想モードだな。本当は優しいのにね。

「ガランヴィールに用があるんだけど…今ダンジョンに行ってるって聞いて…」

「ガランヴィール?あの歩く城壁に用か?」

自分は頷く。ギルバートは入口の警備兵と話す。

「おい。こいつを通してやれ」

「よ…よろしいのですか?」

「ああ。少なくとも姫の命をとるような奴じゃない」

おお!ついでに証明してくれた!

「リスアスに聞くぞ。付いてこい」

「え?あ、うん!」

自分は漆黒の翼の背中について行った。

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