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本部と予想と姫君

「はぁはぁ…やっと着いた…」

今、自分の目の前には大きな黒い建物、ギルド本部がある。

あそこからそこまで遠くは無かったのだが…

「いーやーじゃー!奴とは会いたくないー!」

「ああもう!子どもじゃないんですから!柱にしがみつかないでください!」

このアコトという偽名の人を連れてくるのに一苦労したからだ。

今は入口近くの柱にしがみついて抵抗している。

「いーやーじゃ!」

「こんの…ここまで来たからには行きますよ!」

「ぐぐぐ…リスアスには!絶対に!会わん…ぞ!」

アコトは柱にしがみついて動かない。

あー…もうこれ意地でも柱から手を離さないタイプだ。

正直街中だからあんまり力技とかやりたくないんだよね…

一応身体は女の子だし!

「こうなったら…『ライトニングバインド』!」

「えっ…ちょっ…!?マコト貴様!?なにをする!?」

魔法を詠唱してアコトを光の鎖で拘束する。

「よっし。これで行けるでしょ」

アコトの身体を光の鎖でぐるぐる巻きにして一本持つ。

明らかに棺を運ぶ持ち方だ。

「マコト貴様!?さては裏の者か!妾を貶めるのかぁー!?」

「ああもう!うるさいですよ!あなたのせいでめちゃくちゃ目立ってますけど大丈夫なんですか!?」

周りからの視線がなんだが冷たい。ちょっと目立ちすぎたな…


「あー…マコトさん?これは一体…?」

「すみませんリスアスさん。ちょっとあなたに会いたい人がいるもので」

場所は変わってリスアスの部屋。自分はここに強引でアコトを連れてきた。

「その会いたい人は…あなたが運んでいる人ですか?」

「まぁそうです」

自分は魔法を解除する。

「ぷはぁ!おいマコト!お前本当に連れてくとは鬼畜か!あと口を魔法で塞ぐとはどういうことじゃ!」

「だってあなた、うるさいんですよ」

「そもそもリスアスには会わんとあれほど………あ」

アコトは石にでもなったかのように固まった。リスアスもかなり驚いていた。

しばらく沈黙が続いて先に口を開けたのはリスアスだった。

「その口調と声…あなたもしかして」

「し…失礼するぞっ!」

我に返ったアコトは急いで部屋から出ようとした。

「なっ!?ちょっと待…」

しかし次の瞬間、リスアスが扉の前にいた。いや…移動した?

「わざわざすみませんマコトさん。あなたはこの人の正体は知っていますか?」

「…え?いや…」

「そうですか…では」

リスアスはアコトを持ち上げる。

「お…おいリスアス!お前━━」

「口で説明するより見た方が早いでしょう」

リスアスはアコトのフードをゆっくりはずす。

見えてきたのは茶色の短髪の女性だった。

あれ?でもこの顔どこかで見たことあるぞ…?

「……あー!もしかしてアストリエルの姫様!?でも短髪だし…まさか別人?」

「まだはっきりとはわかりませんが…この口調と顔はアストリエルの姫、ユマリア姫です」

へぇーユマリアっていう名前なんだ…

「あれ?でも今移動している方の姫様は?」

「そう。今この本部に向かっているユマリア姫とここにいるユマリア姫…つまりどちらかが偽者ということになります…」

「わ…妾は本物じゃぞ!?」

リスアスはアコト…じゃなくてユマリア姫を下ろす。

「では仮にこちらのユマリア姫が本物だとして…どのような用件でしょう?」

「仮にとはなんじゃ!?妾は正真正銘アストリエルの姫君、ユマリアじゃぞ!?用件はそっちが知っているはずじゃ!」

「はて…?申し訳ございませんが、我々は姫君が来る用件を存じておりません」

おいリスアス。顔は笑ってるけど目が笑ってないぞ?

「何をいっておるのじゃ!そもそもリスアス!妾はお前から来いと言われて来たのだぞ?」

「ほう…?」

「あれ?ということはリスアスが呼んだってこと?」

「そうじゃ。だから用件はそちらが知っているはずじゃ。緊急と聞いてな…というかマコト!?姫君に対してその態度はなんじゃ!?失礼じゃろうが!」

「だって姫様っぽくないからさ…」

少しボロボロのローブ姿だし…

どう見てもどっかの国から亡命してきた姫様にしか見えない。

「マコトさん。おそらくこの方は本物のユマリア姫でしょう」

「え?まじですか!?でも明らかに姫様っぽくないんですが…」

「おい!」

「確かにそう見えなくないですが、彼女はユマリア姫でしょう。会話してわかりました」

「おお!流石はリスアスじゃな!…ってさっきの会話でか?」

確かにこのユマリア姫はあまりリスアスとは話していないはず。それだけで確信できる言葉があったのだろうか?

「呼び出したのはこちらの方なんですよ。しかも極秘念話を飛ばしたので外部は知らないはずなんです」

「でも…その情報が漏れている可能性は?」

「それはありえんな。そこら辺の警備は厳重にしておったからの。まず聞かれんはずじゃ」

うーんこのユマリア姫が言うとイマイチ説得力がないぞ?

「しかし…一体なぜユマリア姫がこんな姿で?そもそも今移動している姫の方は一体何者なんですか?」

リスアスがいっぺんに質問する。しかしユマリア姫は混乱すること無く会話を続ける。

「詳細はわからん…だがひとつだけ可能性じゃがわかることがあるぞ?」

ユマリア姫は胸を張ってドヤ顔する。

「ふふん?聞きたいか?」

「うわ…うざ」

「マコトさん本音が声に出てますよ」

おっとすみません…ついやってしまった。

「…聞きたいか?」

「ええ。もちろん。一体何者なんですか?」

今自分は笑っているがおそらく目は笑ってないだろう。

なぜならユマリア姫が自分の顔を見て怖がってるから。

「マコトさん少し落ち着いてください。それではユマリア姫が話せません」

「あそっか。ごめん」

「う…うむ。あくまでも可能性じゃが…」

ユマリア姫は一呼吸入れて話す。


「奴は━━━妾の妹じゃ!」


「………」

「………」

「……ん?」

なんか想像と違うぞ?奴は変装した魔物とかじゃなくて妹?

「あの…記憶が正しければ確か、ユマリア姫にはご姉妹はいらっしゃらないはずですが…?」

「あくまでもと言ったじゃろうが!予想じゃ!」

「しかしなぜ妹なのですか?変装した魔物の方が可能性として高いと思うのですが…」

「確かにそれはあった。実際こんな格好になったのも魔物のせいじゃからな」

魔物のせいでその格好になった?襲撃されたってこと?

「…いや襲撃ではないぞ?」

「ちょっと心読まないでよ!ユマリア!」

「おいマコト!?姫に向かって呼び捨てとは何事か!?」

…いかんな。もうこの人を姫様と思えなくなってきた。

「襲撃じゃないなら一体なに?」

「うむ…返り討ちじゃな」

「………」

「………」

沈黙。自分もリスアスも顔を伏せている。

「………なんじゃ!?返り討ちにあったから身を隠すためにこの格好になったのじゃ!」

「いや…返り討ちって…どんな魔物に返り討ちにあったの?」

「ブラッドウルフの集団じゃ。進行する時に邪魔だったから討伐隊を送ったのじゃが…その集団が向かってきたのじゃ」

つまり討伐隊が全滅?そんなにウルフ強いっけ?

「護衛の者達は戦闘で負傷した。幸い死者は出なかった。じゃがこのままではセルフィアに行けないのでしょうがなく妾一人で向かったのじゃ」

「ええ!?ではユマリア姫一人でここに?」

「ああ…おいマコト。その顔はなんじゃ。まるで妾が姫だから弱いと思っていた顔をしておるぞ」

あれ?自分そんな顔してた?

「全く…こう見えて妾のレベルは98じゃぞ?姫が自分の身を守れないでどうするんじゃ」

「ちょっ…ちょっと待ってください!今なんと…?」

「ん?レベル98のことか?」

リスアスはかなり驚いていた。いや自分もだけど。

「妾のレベルより今は向かってくる奴の正体じゃ!こう話してる間にも少しずつ近づいて━━」

「失礼しますギルドマスター。ユマリア姫がご到着しました」

すごいタイミングだな…この姫様大丈夫か?

とにかくあの姫様の正体を確認することが先だ。

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