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異国のお姫様

奥からゆっくりとやってくる大きな馬車にはアストリエルの姫様が乗っている。

周りは拍手と歓声で騒がしくなった。

「あ!姉様!馬車の窓から姫様が見えますよ!」

「…見えない」

「え?しょうがない…『ストーンウォール』」

自分は静かに詠唱して小さな土台を魔法で作った。

こういった使い方をするのは初めてなので不安だったけど大丈夫だったらしい。

…まぁ少し地面陥没しちゃったけどね。

「これに乗れば見えるでしょ?」

「おお…ありがとうマコト」

早速マリは土台に乗って馬車を見る。

「…姫様手を振ってる」

そりゃそうだろうよ。自分も見てみようか。

自分は少し背伸びしてゆっくり動く馬車の窓を見た。

「うーん…?」

まず姫様が着ていたのは真っ白のドレスだった。髪は茶色。ティアラも付けていて以下にも姫様って感じがする。

「姉様どうしました?」

「いや…なんか違和感を感じるんだよ」

姫様は笑顔で民衆に手を振っている。馬車の周りにはもちろん警備兵が囲んでいる。

「違和感?なにかおかしいということでしょうか?」

「いや…別に気にしないでいいよ」

自分で言っておいて気づけてないんだけどね。

「…なんか想像と違う…もぐもぐ」

マリが屋台で買った物を食べながら見ている。

「でも綺麗な人ですね…流石は姫様って感じですね!」

シエルは笑顔で楽しんでいる。いつもは無表情だから可愛い。

おっと…シエルは妹だぞ?手を出してはいかん!

「さっきから凄いやる気だねシエル。そんなに姫様を見るのが楽しみだったの?」

「はい!こういったのは初めてなので…姉様もですよね?」

「え?いや…二、三度かあるけど…」

ってこれは前世の話か。ここの世界では初めてだから初めてになるのかな?

「あれ?」

隣にいたローブの人がいつの間にかいなくなっていた。

一体どこにいったんだろう?

自分はローブの人を探すため、少し街道から離れようとした。

グニッ

「ん?なんか踏んで…うわぁ!?」

自分が踏んだのは隣にいたローブの人だった。

「痛い…」

「ご…ごめん!大丈夫!?」

「大丈夫…な訳あるか!」

ローブの人はカバッと起き上がった。

「なんじゃこの岩は!?こんなのいつできたのじゃ!?おかげで引っかけて転んでしまったではないか!」

「あ…」

自分が出した岩に引っかかって転んだってことか。

この人、口調が独特だな。日本の人みたいな。

というか大声出しちゃったから周りがこっち見始めたぞ?

「ぬ…少し目立ってきたな。おいお前!ちょっとこっち来い!」

「は…?ちょっと!?引っ張らないでよ!」

自分はローブの人に引っ張られて、路地裏に移動した。

というか二人共なんで気づかないんだよ!?


いた場所からかなり離れた人のいない場所まで移動した。

「よし…ここなら大丈夫であろう」

「ちょっと…首絞まってる!苦し…苦しいから!」

マンガのように首元を引っ張られてきたのでかなり首が服で絞まって苦しい…

実際にやられると結構辛いわこれ…

「おおすまんの」

ローブの人は自分の首元から手を離す。

「はぁはぁ…突然なんですか!?あなたは!」

「それはこっちのことじゃ!あの岩を作ったのはお前だろう!おかげで妾が無様に転び、挙げ句の果てく作った本人に踏まれるとは…無礼にも程があるぞ!」

う…そう言われると反論できん…

「ん…無礼?ということはあなた何かの貴族?」

「ふん!お前に教えるような者ではない!」

うわぁ強気で面倒なタイプだ…

「あの…自分をここに連れてきたのは文句が言いたかっただけですか?それなら戻りますけど」

「あ…ちょっと待たんか!頼みがあるのじゃ!」

「頼み?」

なんだろう。こういう人の頼みって嫌な予感がするんだよなぁ…

「まずお前、あの姫君におかしい所は無かったか?」

「おかしい所…?いや別に…でも違和感は感じましたけど」

「違和感だけか!鈍感じゃなお前!」

…なんかムカつくなこいつ。一発殴ろうか?

「まぁよい。しかし違和感に気づいただけでもできる者であることはわかった」

「…どうも」

「褒めとらんぞ?…そこで妾はその可能性満ちた者に頼む」

なんだ?もしかしてあの姫様を襲撃しろとかか?そういう系統の依頼なら断ろう。

ローブの人は一呼吸入れて話す。


「お前には妾をあの姫君に会わせるのじゃ!」


「……え?」

どういうことだろう?この人を姫様に会わせる?

「それなら普通に会いに行けばいいじゃないですか。頼めば大丈夫でしょう?」

「それでは意味がないのじゃ!誰もいない所で会うことが前提じゃ!」

それって誘拐してこいってことじゃねぇか!

断ろう。うん。

「あー…残念ですが他に当たってください。自分面倒事には巻き込まれたくないので」

「なにっ!?話を聞いといて断るのかお前は!?」

「いやそっちから話し始めたんだし頼んできたのはそちらでしょう…?こっちには拒否権はありますよ?」

「ぐぬぬ…確かにそうじゃが…頼む!」

「いやです。その話、聞く限り誘拐してこいって言ってるようなもんなんでお断りします」

「誘拐してこいとまでは言わん!…いやそれが一番手っ取り早いんじゃが!」

おい本音が出たぞ!?大丈夫かこいつ!

「そ…そうじゃ!姫君が到着する場所はわかるか!?妾はそこで待ち伏せしよう!」

「到着する所?…多分ギルド本部だと思いますが」

「なにっ!?本部じゃと!?それはまずいのう…」

まずいのはあなたの頭なのでは…?

「えっと…何か不都合でも?」

「不都合もなにも…確か本部の頭はリスアスであろう?」

「え?…そうですけど何か問題なんですか?」

ローブの人は歯を見せる。でもどちらかというと憎しみの見せ方だな…

「やつとは因縁深いものがあってな…」

「因縁…なにか喧嘩でも?」

「だが…状況が状況じゃ…うーん━━━」

かなり悩んでるなこの人…よっぽどリスアスに恨みでもあるのかな…?

「……よし!お前!名前はなんという!?」

「えっ!?マ…マコト」

「よしマコトというのだな!妾は…訳あって名前は言えん!」

ちょっ…なんだそりゃあ!?

「ゆえにそうじゃな…アコトと呼んでもらおうかの!」

「ちょっと!自分の名前取らないでくださいよ!」

「安心せよ!『マ』は取っとらんぞ!」

「そういう問題じゃなくて!自分の名前を勝手に━━」

バシンッ!

突然頭を思いっきり叩かれた。

「痛ったぁ!?なんで叩くんですか!」

「声が大きいであろう!?これは機密依頼じゃ!誰にも話すでないぞ…!目立つのも禁止じゃ!」

うわ…目がマジだ。これは断ろうとしても無理だな…

「はぁ…わかりましたよ…それで?何をすればいいんですか?」

「そうじゃな…まずは本部のリスアスと話をしてこい!妾と姫君が二人っきりで会うように仕向けるのじゃ!」

なんて面倒な人だ!もしこんなのが貴族だったら、最低ランクじゃないか?

「別にいいですけど…あなたは来ないんですか?」

「わ…妾は入口で待っていよう!奴とは会いたくないのでな!」

意地でも会いたくないと。ムカつくしここは否定しよう。

「いや…せっかくですし一緒に行きましょう。本人の証言が無いとできないものはできないですから」

自分はアコトの手を掴んで無理やり引っ張った。

「お…おい!引っ張るでないマコト!嫌じゃ!絶対嫌じゃ!リスアスとは絶対会わんぞ!」

アコトは抵抗するが、残念ながらこっちはレベル124なので力の差は明らかだった。

「おおお!?何故じゃ!?なぜ力で負けるのじゃああ!?」

「ちょっと!目立たないでって言ったのはそっちでしょう!?自分から大声出して目立ってどうするんですか!?」

自分はアコトを無理やり引っ張りながらギルド本部に向かった。

さて…自分から面倒事に突っ込んでしまった…どうしようかな。

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