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街のお祭り

ジャックの捜索が本格化して進展するかと思ったが、何日経っても成果は出なかった。

「すぐに出てきたらむしろおかしいんだけどね」

「…でも早く見つかってほしい」

「そうですね。ジャックがもし故郷を消した犯人だとしたらすぐに殴ってやりたいです」

…最近シエルが暴力的な発言をするようになった気がする。

「でも何もできないってのももどかしいよね…最近何も起きないしさ」

そう。トラブル体質の自分だが最近は全くこれといった大事件や問題が起きないのだ。

一ヶ月経って自分はここの生活に慣れてきたのか、買い物も普通にできるようになったし。

「…平和はいいこと」

「そうだねー…自分の膝は平和的じゃないんだけどさ」

現在マリを膝枕してあげていた。

この前クロミを膝枕してあげたのを教えたらマリが突然自分の膝に寝転がってきたので仕方なくそのままである。

「それにしてもマリさんの耳はまっすぐですよね。やっぱり狐だからでしょうか?」

マリはギルド内ではこういった団欒みたいな時によく帽子を外している。マリ曰く蒸れるらしい。

「確かに帽子とか被ってるのに全然折れてる跡ないもんね」

「…それが獣人の耳の力」

いや絶対関係ないと思う。

「…それを言うならマコトの髪はさらさら」

「そうですよね…姉様、何か使ってるんですか?」

「いや…何も使ってないけど」

サッと髪洗って終わりだし。

自分はテーブルに置いてある紅茶の入ったティーカップを手に取る。

この紅茶は蒼天の旅団のベルイールから送られてきたもので、三ヶ月に一回は送ろう!と付いてきた手紙に書いてあった。

「結構美味しいよね…この紅茶」

「はい。こんな美味しい紅茶は初めてなので嬉しいです」

マリはあんまり好まなかったのか一口飲んだらそのまま放置である。美味しいのにもったいない。

ちなみにコーヒー豆は流石にこの世界には無かった。紅茶の葉も売ってはいなかったのだがベルイールの故郷は栽培してるらしく、定番の飲み物らしい。

「そういえばクロミは?」

「ナギサさんとシズクさんと一緒に服などを買いに行きました。私達は留守番ですよ」

確かにクロミは牢屋で会った時の服…というかボロ布だったからね。流石にあれで街を歩くのはまずいしな。

しばらくマリの頭を撫でながらぼーっとしていた。

すると突然シエルから話し始めた。

「姉様…明日予定ありますか?」

「明日?別に何も無いけど…?」

「でしたら…三人で街を歩きませんか?」

「この三人で?明日何かあるの?」

「…マコト。街の掲示板見てないの?」

へ?街の掲示板?そんなのあったの?

「明日アストリエルという国の姫様が来国してくるんですよ」

「アストリエル…どこ?」

シエルによるとこの国トーエンティスと一番貿易をしている仲のいい国で、同盟を結んでいる国でもあるらしい。

確かに最近街の様子が騒がしいと思ったのは姫様を迎えるための準備だったのか。

「そんな姫様がなんでトーエンティスに?」

「…それはわからない」

「おそらく貿易関連のことでしょうけど…もしかしたらジャックの件かも知れません」

なるほど他の国の協力を借りて捜索範囲を広げるのか。

「で、明日その姫様を見に行きたいと?」

「はい。是非とも見てみたいのです。姫君というのを」

随分とシエル積極的だな。そんなに楽しみなのか?

でも姫様か…RPGではよくさらわれるのしか印象にないな…

「うーん…まぁいいか。ちょっと姫様っての気になるし」

「…きっと綺麗な人」

そりゃそうだろうな。国の姫様なんだし。



そして翌日。

自分達三人は予定通り、姫様を見るため外に出た。

ちなみにクロミはナギサ達と一緒に街を回っていくと言って先に出ていったのだ。

自分達も少し時間を空けてから外に出たのだが…

「すごい人の数ですね…!」

「…見えない」

街はもうお祭り状態で街道は人で埋まっていた。

空には魔法で花火みたいな爆発が起きている。

「でも流石にこれはちょっと多すぎでしょ…」

まるで混雑時のコミケのように全く前に進めないのだ。

「えっと…姫様が通るルートは…」

「姉様。こっちから行きましょう」

自分は姫様が通る道を確認しようとしたらシエルが路地裏を指差して誘導してくれる。

自分とマリは何とかして路地裏に出る。

「ここからは少し歩くことになりますが、一応姫様が通る道には到着するはずですよ」

「全然大丈夫。あそこを通るよりかは断然楽だから」

「…右に同じ」

出ている屋台とかは気になったけどほかの場所にもたくさんあるだろうし大丈夫だろう。

シエルと同じ考えをしている人は少なからずいて路地裏にも人が歩いていた。

「姫様がいるってことは王様も来てるのかな?」

「違いますよ姉様。姫様がいるだけで王権は保たれるので、王様は必要ないんです」

…つまり姫様は王様でもあるってことか。そういやトーエンティスの王族っているのかな?

「…トーエンティスはギルド本部が王権を握ってる」

「えっ?そうなの?」

「正確には王権ではありません。ですが街を統一化させているのはギルド本部なので少し王族に近い立場ではあります」

へぇー。ギルド本部って結構すごいんだな。まぁ全部のギルドを管理してるんだしそれくらい当然か?

ていうかマリ、さらっと考えてたこと言い当てたな。

「ん?なんか一際騒がしい道があるな」

「確かそこは姫様が通るルートではありますね」

「…でもどうせ人多すぎて見えない」

「そうだよね…少し先に進んで待とうか」

「はい。マリさんも大丈夫ですか?」

「…屋台も見たいし大丈夫」

マリは大体そっちが目的か。

「思ったんだけど…もしかして姫様が向かう所ってギルド本部じゃないの?」

「ああ…確かにその可能性は高いですね」

このまま路地裏を進んでいくとギルド本部周辺にでる。

ギルド本部はトーエンティスの王様でもある。なら行く先はギルド本部だから本部で待っていれば…

「…でも屋台が」

「だよね…」

ギルド本部周辺に屋台なんて配置されないだろうし、マリのことも考えるとやっぱり普通に見た方がいいか。

自分達はなるべく人の少ない場所を探してそこで待つことになった。少しギルド本部からは近いけど屋台もある。

「…じゃあ私行ってくる」

「うん。できれば自分達のもお願いしたいんだけど…」

「あ、では私も行きましょうか」

え?自分一人になるの?でもここ空けるとまた場所探しが始まりそうだしな…

「わかった二人で行っていいよ。ここは自分がキープしとくからさ」

「はい。なるべく早く戻ってきますので」

マリとシエルは屋台に向かって歩いていった。

多分悩んで遅くなりそうなので自分はぼーっと街の騒ぎを見ていた。

待ってる途中、男性組が自分を誘ってきたり、場所を無理やり取りにきた奴とかもいたが、丁寧に断ったり力でねじ伏せたりして場所は防衛できていた。

だけどひとつだけ気になっている人がいた。

(隣にいる奴…何者だろう?)

最初からいたのだろうか…黒いローブマントでフードを被っている人がじっと静かに立っているのだ。

(フードで顔が見えないな…立ち方的に女…かな?)

あんまり見つめてても失礼と感じ、自分は無視することにした。

「姫様…ね。王様がいないってのもおかしいよな…」

何となく嫌な予感がした。こういうのってフラグとして大体当たるから嫌なんだよな…

「にしてもマリ達本当に遅い…悩んでるのかな」

自分もこの世界の屋台は何を売ってるのか気になっていた。

前の世界は祭りなんて二、三回ぐらいしか行ったことないから少し嬉しかったりする。

「あ、帰ってきた」

「…ただいま」

「すみません…少し悩んでしまって…」

マリとシエルは沢山の食べ物を持ってきた。いやそんなに買ってきてどうするんだ…

「ここも盛り上がってきましたね。もうすぐ姫様が来るのでしょうか?」

確かに奥から拍手や歓声が聞こえてきた。どうやらやっと姫様が自分達の前を通るようだ。


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