結果と召喚と助け合い
翌日。
自分とシエルはギルド本部の前にいた。
「姉様?流石に一日で調査結果が出るとは思いませんが…」
「でも気になるじゃん」
受付で手続きをしてリスアスの部屋に向かう。
「大丈夫だって多分もう結果出てるさ」
自分は部屋の扉をノックする。
「はいどうぞ」
部屋の中からリスアスの声が聞こえた。
「失礼しまーす」
「失礼致します」
「おや?マコトさんにシエルさん。姉妹揃ってどうしました?」
リスアスはどうやら書類作成していたらしく、羽根ペンで紙に何か書いている途中だった。
「…それにしてもナイスタイミングですね。丁度呼びに行こうと思っていた所なんですよ」
「え?それはつまり…」
「そうです。クリスタルの調査が終了しました」
なんと!本当に終わっていたとは!流石本部は違うね!
「…でどうだったの?」
「そうですね…先にこれを見てもらいましょう」
リスアスが渡してきたのは一枚の紙だった。
紙には調査結果という文字がある。
「えーと…調査結果。クリスタルの無断破壊と構造変更は同一人物による行為だとわかった…それだけ?」
ただ一行、こう書いてあるだけの紙だった。
「残念ながら犯人の特徴はわかりませんでした」
「な…それじゃ意味無いじゃないか!」
「同一人物というのがわかっただけ大きな進歩ですよ?…操作した者は徹底的に足跡を消していて、その消し具合がほぼ同じとわかったためこのような結果になりました」
ギルド本部でもわからないのか…ならどうすれば…?
「そういえばリスアスさん」
「何でしょうかシエルさん?」
シエルが突然話し出した。
「私達は帰還中に謎の人と接触しました」
「ああ。あの男ね」
帰還中に景色を見れる所にいた怪しいやつだな。
「…謎の男とは?詳しく教えて下さい」
「はい。特徴は青髪で糸目。黒いフード付きコートで名前は確か…ジャックという名前でした」
「ジャック…?初めて聞く名前ですね…聞き出したのですか?」
「いや、あっちから言ったよ」
「一応調べておきましょう…さてあなた達はどうしますか?」
「え?うーん…そのジャックっていうやつを探すか」
「でも姉様。手がかりが少なすぎますよ?」
確かに何にも手がかりがない。正直今動いても意味が無いはず。
「本部でも手がかりが見つかり次第報告しますよ」
「ありがとう。ミヅチと違っていい奴だね」
あくまでも表面だけだけどな!
「はっはっは。私とミヅチとは比べられるものがありませんよ」
「突然失礼致しました」
最後に言ったこと気になるけど自分とシエルは本部を後にした。
「うーん…どうしようかな」
二人で街をふらついているが何もする事がない。
ダンジョンに行くのもいいが最強装備だしレベルもそう簡単に上がるようなレベルじゃないしな…
「あ、姉様少し買い物をしてきますので先にギルドに戻っていてください」
「え?ああわかった」
シエルは街の中を走って行った。
「見つけたぞガキ!」
「ん?」
一人になった時に謎の男が突然声をかけてきた。
あ、いやジャックじゃないよ?ていうかこの人どこかで…
「忘れたとは言わせねーぞ!」
「…いやごめん。マジで忘れた」
大柄の男なんだけど…うーん思い出せん。
「このガキ…おいお前ら出てこい!」
大柄の男の後ろから同じような装備の奴らが現れる。
「もしかしてこんな大通りで戦うの?」
「場所なんて関係ないだろ!前の屈辱…晴らすぞおらぁ!」
「うわっ!?」
突然斬りかかってきやがった!なんだこいつ!?
「ちっ避けんなよ!」
「避けるわ!何言ってんだ!」
「大人しくしろっ!『アサルトアロー』!」
おいおい街の中だっていうのに容赦ないな!
「くっ…『アースウォール』!」
自分の後ろに岩の壁が現れる。これでほかの人に被害はなくなるはずだ!
にしてもかの弓使いかなりノーコンだな。連射技とか集中技使ってくるけど一本も当たらんぞ…
問題は突っ込んでくる男四人だな。がむしゃらに武器を振りまわして床とかに叩きつけてる。
早くなんとかしないと街が大変なことになる!
「でもデカい魔法撃つわけにもいかないし…どうする?」
「マコト姉様!」
壁の向こうからシエルの声が聞こえた。
っていうかシエルそっちにいるのかよ!?
「苦戦しているのですか?」
「いや…どうするか考えてる!」
「オラオラどうしたガキ!魔法使えばいいじゃねーか!」
うぜー!こんな奴らに絶対魔法使いたくねー!
「おらぁ!」
「ちっ…こうなったら…」
自分は大振りした男の腹にひじで強く打ちつける。
「ぐほっ…てめ…」
一回の攻撃で一人沈んだ。所詮雑魚だな。
「ほらさっさとこい。まとめてやってやる」
やった!今のセリフ言ってみたかったんだよね!
「このガキ!」
「後悔させてやる!」
男達は怒り心頭で走ってくる。
こんな挑発に乗るとは…雑魚を通り越してアホだな。
「ふっ!やぁ!」
後悔したのはあっちの方だったな。全員一撃で沈んだぞ?
「さて…後はあなただけ?」
「…ひぃ!」
遠くから撃っていた弓使いは後ずさりする。
「こ…このガキ!こうなったら…」
弓使いは道具袋から何かのカードを取り出した。
「信用できねーけど使うしかねぇ!『サモンズモンスター』!」
「なっ…!?まさか召喚カード!?」
弓使いの目の前に大きな魔法陣が現れる。魔法陣から禍々しい魔力を放ち始めた。
「は…ははは!すごい!すごい力だ!」
魔法陣にモンスターが召喚される…ってドラゴン!?
「グオオオオオオ!」
召喚されたドラゴンは雄叫びを上げる。
周りの人達はみんな逃げていった。
「いいぞ!いいぞぉ!良いもの貰ったなぁ俺は!」
「なに…?貰っただと!?」
つまり所有していた訳ではないってことか!
「さぁ!やれドラゴン!そこのガキを潰せ!」
「グオオオオオ!」
「えっ?なんでこっち見て…ぎゃあああああ!」
弓使いは召喚したドラゴンに潰されてしまった。
「嘘…!?まさか暴走してる!?」
「オオオオオ!」
ドラゴンは炎を吹き、目の前を火の海にした。
「暑っ!」
やばいやばい!後ろに出した岩の壁が邪魔過ぎて動けない!
でもこの壁無くすと後ろの人達が危ない!
「『マジックフライト』!」
地上が駄目なら空に逃げる!自分は魔法で空を飛ぶ。
「『ブリザードゲイン』!『フロストジャベリン』!」
杖を使って氷魔法を放つがドラゴンにあまり効いてない。
「なんで…!?氷が弱点じゃないのか!?」
「ギャオオオ!」
ドラゴンは大きな破壊音と共に自分の岩の壁を壊した。
「こ…これは一体!?」
「ドラゴンだぁ!逃げろ!」
まずい全員パニック状態だ!
「皆さん急いで後ろに逃げてください!早く!」
シエルが必死に住民の避難誘導をする。
「くそ…!街じゃ無かったらデカい魔法撃てるのに!」
あの野郎共やってくれたな!特に弓使いの奴!
とりあえずシエルの所に向かう。
「シエル!」
「姉様!これは一体何が!?」
「話は後だ!援護してくれない!?下に潜り込んで真上にデカい魔法を使うから!」
「そんな…無茶です!あれは邪神の洞窟の魔物以上の力ですよ!?そんなことすれば死んでしまいます!」
「じゃあどうすれば━━」
「俺に任せろ!」
突然別の声が聞こえた瞬間、大剣を持った人が走って行った。
「沈め!『ドラゴンファング』!」
「グオオオオオオ!」
文字通りドラゴンを叩きつけ、そのまま沈めた。
「す…すごいあのドラゴンを一撃で…! 」
「一体何者でしょう…?」
ドラゴンは光の粒子になって消滅した。
「ふー大丈夫かいお嬢さん達!」
「え?あ、はい大丈夫です」
ドラゴンを倒した男はこちらに歩いてきた。
「しかしなんでドラゴンなんかが街のど真ん中で現れたんだ?」
「姉様?何か知っているのでは?」
「ああ。絡んできた奴らの中に召喚カードを使った奴がいたんだ…制御できずに死んだけどね」
「し…召喚カードだぁ!?どこからそんな物を!?」
「…あの失礼ですが、どなたでしょうか?」
さっきから話に入ったり、ドラゴンを倒したりしたこの人は一体何者なんだ?
「あ、すまん。俺の名はリオルっていうんだ。よろしくな!」
リオルと名乗る赤髪の男は親指を立てて歯を見せる。
そこら辺によくいそうな熱血系だな。
「私はシエルといいます。こちらは私の姉です」
「マコトです。えっと…たすけてくれてありがとう」
「おう!大したことじゃねーから大丈夫だ!」
いちいちうるさいな…ベルイールといい勝負になりそうだ。
「ん?あー!見つけた!」
リオルは自分達の後ろに走り出す。
むかった先には一人の女性がいた。
「探したぞナツキ!」
「あらリオル。ここにいたの?」
ロングヘアーで緑髪の女性はナツキっていうのかな…?
「なんか面倒なことになったぞ…?」
「姉様。とりあえずリオルさんの話を聞きましょう」
自分は不安だがリオルの元に歩いていった。