疲れた進歩
邪神の洞窟から無事帰還した自分達は本部のマスター、リスアスのいる部屋に向かった。
「二人無事帰還しましたか!」
「漆黒の翼ギルバート。帰還した」
「はいはい。堅苦しいのは置いといて…」
なぜか部屋にはミヅチもいた。
「おかえりマコト」
「ちゃんと帰還したぞ?ミヅチ」
「そうだな偉い偉い!…ところでそこのお嬢さんは?」
自分の頭を撫でながらシエルを見る。
「ミヅチ。積もる話は後にして下さい」
リスアスが話を切り出した。
「さて…マコトさんおかえりなさい。早速ですがクリスタルの結晶を」
「はい」
「おおありがたい!二つ採取してくれたのですね!」
どうやら二つ採取してきたのは正解だったようだ。
「見たことのないクリスタルと魔力ですね…邪神の洞窟の物と判断していいでしょう」
自分はほっとした。これでまた行ってこいとか言われたらどうしようと思ってた。
「さてと…これでマコトさんの容疑は晴れましたね」
腑に落ちないけど結果オーライだからいいか。
「終わったかい?じゃあマコト。そこのお嬢さんの紹介を頼む」
「……自分の妹です」
「はい。マコト姉様の妹シエルです」
ミヅチは驚いた顔になる。
「妹…マコトにね」
「なに?文句ある?」
少しニヤついてるところがウザいぞ。
リスアスも少しは驚いたがすぐに確認をするため話を続ける。
「シエルさん…でしたか?貴方はルフォーク族で?」
「はい。姉様は半ルフォーク族です」
「え!?マコトってルフォーク族だったの!?」
「半って言ってるでしょ!半ルフォーク族!」
「同じだろう!」
「…驚きました。でも確かにマコトさんがルフォーク族だとしたらデーモンを殲滅するのは困難ではないですよね」
今更だけど、もしかしたら自分のステータスもルフォーク族が関係してるかもしれないね。
「で、その妹さんを連れてきたということは何か私に用が?」
流石本部ギルドマスター。察しがいいね!
「はい。まずはこちらを見てください」
シエルはリスアスにクリスタルの結晶を渡す。
「これは…クリスタルの結晶ですか?」
「はい。実はその結晶は壊されたクリスタルの結晶です」
「なんだって!?壊されたってことは…何者かが壊したってことかい!?」
シエルは頷く。リスアスは頭を抱える。
「クリスタルの無断破壊…そして構造変更…関係がありそうですね。調べましょう」
「ありがとうございます」
「いえいえシエルさんこちらこそありがとう。これで犯人に一歩近づけるはずです」
リスアスは嬉しそうだ。でも騙されないぞ!絶対裏があるから!
「気になる事が増えたがリスアスに任して帰るか!みんなマコトの帰りを待ってるぞ!」
「あ、ミヅチその事なんだけど…」
自分はシエルをギルドに加入してくれないか頼んでみた。
「なんだそんなことか。大丈夫だ問題ない。むしろ仲間が増えるのは大歓迎さ!」
「だってさ。良かったねシエル」
「はい。ありがとうございますミヅチさん」
「ああ。どうってこともないさ」
自分達は部屋から出ようとする。
「あ…そうだギル…バートさん」
「なんだ」
ギルは無愛想モードになっている。
「今回の遠征ありがとうございました。楽しかったですよ?また行きましょうね?」
「…ふん」
そのキャラやめればいいのに。喋りづらいでしょう。
自分は部屋から出ていった。
「おやおや…漆黒の翼も可愛い女の子には弱いんですかね?」
「…そうかもしれんな」
部屋でまだ何か話しているけど自分にはよく聞こえなかったので気にはしなかった。
「おかえりなさいマコトさん!」
「よく無事だったね!良かった良かった!」
ギルドに入った途端、ナギサに頭を撫でられる。
「…おかえりマコト」
「うん。ただいまマリ」
数日しか会ってないのに久しぶりな感じだ。
ナギサは自分を撫でながらシエルを見る。
「ん?その子は?…まさかミヅチ!さらってきたんじゃ?」
「え!?ミヅチまたですか!?」
「そんな訳ないだろう!マコト説明してくれ!」
「またっていうのが気になるけどね…えーと、この子はシエルっていうんだ。自分の妹だよ」
「シエルです。マコト姉様がお世話になっています」
「もしかしてこの子…ルフォーク族?」
「もうこの展開も疲れるな…」
説明三回目だぞ?流石に疲れるわ!
そしたらシエルが察してくれたのか自分で説明をし始めた。
「はい。私はルフォーク族で、マコト姉様は半ルフォーク族です。つまり半分ルフォーク族です」
「えぇ!?マコト、ルフォーク族だったの!?」
「あーあー!もう聞き飽きた!説明も面倒!」
「半分です」
「なるほど…半分ってことは半分は人間族ってことですか」
流石シズク!察しが良くて嬉しいよ!
驚かせるのは好きだけどここまで来ると嫌になるな…
「で、なんでマコトの妹がここに?」
「はい。このギルドに加入することになりました」
「え!?いいんですかミヅチさん!」
シズクが嬉しそうな顔になる。
「断る要素がないだろう?仲間が増えるんだ嬉しいことさ」
「そういえばシエルって何歳だっけ?」
「私の年齢ですか?…確か十四歳ですかね」
「え!?やっぱりシエルさん私と同年齢なんですか!?」
なんか今日はシズクすごいハイテンションだな。
「…ギルドにシズクと近い年齢がいないから多分嬉しいんじゃないかな?」
「ああ…なるほど」
「ついでに聞いてなかったけどマコトは何歳?」
「自分?十七歳だね」
「私の一個下か!思ったより近いね?」
「…ルフォーク族は老いが遅いからね!」
「姉様。それはないですよ?」
くっ!現実を見たくないだけなのに!
「…年齢っていう随分と重い話してるね?」
「あ、リト。ただいま」
リトが奥から出てきた。
「うんおかえりなさいマコトさん。ギルとは仲良くできた?」
「うん。問題ない…あれ?今ギルって…」
「ああ、話してなかったっけ?僕はギルと幼馴染みなんだ」
「「「えええ!?」」」
「…リト。それほんと?」
「私、驚きました…」
自分含めた女性軍全員驚いたよ!嘘!リトがギルと幼馴染み!?
「うん。本当だよ?」
「俺は知ってたけどな?お前達の驚く顔が見たかったから黙ってたけど…ククッ」
「ナギサやれ」
「はいよ」
「え?ちょっと待て━グホォ!」
ナギサはミヅチに渾身の腹パンをする。すかさず自分はハイキックを繰り出す。
マリとシエルはリトと話を続ける。
「なんで教えなかった…?」
「うーんそれは…ほら僕弱いじゃん?ギルと僕が幼馴染みってなんか不自然かなーって思ってさ」
「リトさん不自然ではないと思いますよ?」
「そうかな…えーとシエルさん?」
「はい。これからよろしくお願いします」
「リトでいいよ?別に敬語じゃなくても…」
「いえ。私はこういった口調の方が良いと思うので」
「うーん…わかった」
三人で何か話してたけど、今はミヅチをボコボコにしてやった。やったぜ。
「あわわ…大丈夫ですか?ミヅチさん?」
「すまんシズク…回復魔法を頼む…」
「やらなくていいよシズク?そんなクズ野郎は捨てた方がいい」
「ひどい!それはひどいぞマコト!」
「まあまあ二人共。そこら辺にしときなよ」
リトから止められたので自分は攻撃をやめた。
命拾いしたなミヅチ!リトに感謝するんだな!
「…っと…わっ!?」
突然足元がふらついてシエルを押し倒してしまった。
「ご…ごめん!大丈夫シエル?」
「はい。大丈夫です」
いきなり自分の妹にとんでもないトラブルが…
ナギサが自分の疲れた様子を見ると突然言い出した。
「マコト、長旅で疲れてるでしょう?」
いや別に長旅でも無かったけどね。
「疲れを癒すにはやっぱり…温泉よね!」
「自分、部屋で休むから…ぐえ」
ナギサに首根っこ引っ張られた。
「あらあらどこに行こうというのかしら?」
ナギサの顔がヤバイ顔だ!変態の顔だ!
「い…嫌だ!これ以上身体を触られるのは嫌!…はっ!?」
ミヅチとリトがいたこと忘れてた!
「き…聞かなかったことにするよ」
「ああ…そうだね」
そこの男二人!引かない!あと一応自分男だったよ!
「さぁーシズクとマリ手伝って。シエルちゃんも手伝ってくれるとありがたいな」
「はい。喜んで」
「シエルお前わざとだな!?」
こうして自分は無事にギルドへ帰ってきた。
色んな事が起きたので疲れたが、これから更に大変な事が起きるんじゃないかなって思う。
別に勇者じゃないけど来たからにはやるしかないよね!
温泉での出来事は…察してくれ。