転生・異世界・魔法少女
小鳥の声が聞こえてきた。
目覚めると少し狭い開けた森の中に立っていた。
自分が住んでいた場所にはなかった森だった。
「…あれ?自分確か死んだよな…?」
トラックに轢かれて死亡。
それが自分の最後のはずなんだけど…
「まさかの転生ですかこれ?」
自分は着ている服が違うことに気づく。
いつも着ていたパーカーじゃなくて、ナナ○ラのル○ェみたいな服を着ていて、赤いブローチが付いたドレス?を着ていた。
髪の色も金髪というかクリーム色になっている。
おお!本当に転生ですか!?
冥界でさまよったりしなくていいんですか?
「ん?ちょっと待て…?」
今、ドレスを着てるんだよね?
自分男ですよ?女装趣味とかないよ?いやそもそもコスプレしたことねーよ。
「どういうこと?」
腕組みした時、異変に気づく。
腕組みがやりづらかった。咄嗟に自分の胸元を触ってみると、
「……ん?」
ふに。
柔らかい感触があった。そこまで大きくないけど。
胸がある。自分は理解した。
「もしかして自分……女の子になってる!?」
まさかの転生したら女体化?
確かに少し声も高い気がする。
神様ひどい!なんで美形で高身長の男にしてくれないんだ!
トンデモラノベみたいな魔物転生か、美少年は普通でしょう!
ガサガサ!
「うひゃあ!」
近くの草むらが動いただけなのに男として情けない声を出してしまった。
あ、今自分女だわ。
「…そうだ!転生といえば魔法だろ!」
異世界といえば魔法!人類(一部)の憧れでしょう!
自分はすぐに手を出して魔法を叫ぶ。
「メギド〇オン!」
しーん。
デスよねー。出たら森が吹っ飛んで困るもん。
「んー…ステータスとかわかればなぁ…」
念じれば出るとか?
出てこい!ステータス!
ポンッ
「……」
強く念じた割に静かに自分の正面に黒い枠が出てきた。その上には『ステータス』と表示されている。
「…なけるぜ」
気を取り直して自分は目の前のステータスを見る。
「ちょっと待てなんだこれ…?」
まずレベルが124という異常な数値になっている。
生命値と魔力値が五千を普通に越えている。
「どれも異常値っぽいけどちょいとチート過ぎません?」
前世ではゲームの大会に優勝するぐらいのゲーマーなのに、今の状態は完璧無双女子として降臨してるわけで。
「…っと。なにかパッシブスキルとかは?」
『所有スキル』という項目にはいくつものスキルが表示されていた。
生命力上昇(特大)、魔力上昇(特大)、戦闘中、生命力と魔力が自動で回復する生命補給(大)と魔力補給(大)、高速詠唱、状況下での無詠唱などなど。
チート並のスキルが多すぎて自分が怖い。
「っていうかこのスキルからして自分、魔術師かな?」
職業は表示されてないので、魔法使いなのかもわからない。
でもこのチート能力は異常だ。
装備も異常値のついた装備だった。
例えば自分が着ている服は『大賢者の御霊服』。
上昇防御力が1000を越える本当に魔法使いかよって思うくらいの装甲を持っている。無詠唱もこの服のおかげらしい。
「低級魔法でキング系一発終了とかありえるぞこのステータス…」
この世界での普通のステータスがわからない限り強い弱いがわからない状態なのは変わりない。
「武器はなしか。まぁ、魔法使えれば剣なんていらんか」
ちなみにアイテムもなし。お金もなし。情報もなし。
詰んでね?最強ステータス持っているのに森に迷って一文無し?
「…とりあえず歩いてみようか」
この森を抜けて、村とか街を探して情報を集めないと…
その瞬間、危機察知のスキルが反応して自分は無意識で横に飛んでいた。
ビィィィイイイインッ
「な…なんだ!?」
顔を上げると目の前の樹木にナイフが突き刺さっていた。
「おい!なにはずしてんだよ!」
突如、知らない声が聞こえ、後ろを振り向くと二人の男が現れた。
「馬鹿な!ちゃんと精密射撃スキルで狙ったぞ!?」
どうやら命中力があがるスキルを使って狙ったのに当たらなかったことで口論しているらしい。
「ちっ!こうなったら近接だ!」
そう言って一人の男は短剣を取り出し、自分に向かってくる。
「えっ?まさか盗賊?」
今更盗賊からの襲撃に気づいた自分はすぐさま戦闘態勢になる。
「って魔法の名前わかんねーよ!」
魔法スキルの項目を見忘れたよ!絶体絶命だよ!
こんなの絶対おかしいよ!
「死ねやオラぁァァアア!!」
盗賊の男が斬りかかってくる。
「ええい!白刃取り!」
パシッ!
おお?本当にできた!
「なに!?なんだこいつ!?」
「そりゃ!」
「ぐふぁ!」
軽く蹴って自分から距離を取る。
「あれ?」
と思ったら盗賊が5mぐらい飛んでいった。
「ぐ…なんだあの怪力女!蹴り飛ばしてきたぞ!」
いやお前も斬りかかってきたろう?
あと怪力女とかひどいな!
「あ…今だ!」
魔法スキルを確認する絶好のタイミングだ!
すぐさま簡単な魔法を見て詠唱する。
「さぁいくぞ!『マジックジャベリン』!」
初めての魔法ですね!どんな魔法なんでしょう?
頭の中に呪文らしき文字が浮かんできた。
唱えると手に魔力の槍が出現する。
「…槍ってことは」
そしてそのまま盗賊に向けてぶん投げる。
「えっ?ちょっ!?まっ…」
閃光。
気がつくと奥にいたもう一人の盗賊の隣にあった大きな木が何本か消えていた。
二人の盗賊は腰を抜かして動けない状態になっていた。
「……やりすぎた?」
とりあえず捕縛できる魔法を唱え、盗賊を捕らえた。
「ふん!憲兵に突き出すか今殺すか好きにしやがれ!」
光の縄に縛られている盗賊二人は完璧に降伏状態だった。
「ねぇ、この世界で一番強い人って誰?」
自分が強いのか弱いのか知りたいのだ。
「一番強いやつ?えーと…『漆黒の翼』ギルバートじゃない?」
なにその厨二臭漂う名前と二つ名。
「まさかお前あの漆黒の翼と戦うのか!?」
「戦うわけないでしょ。その人のレベルは?」
「確か136じゃなかったっけ?」
あれ?意外と低い。てことは?
「あなた達のレベルは?」
「ああ!?漆黒の翼にかなうレベルなわけねーだろ!」
「俺は52。こいつは53。」
「え!?嘘でしょ?」
おっと。うっかり声に出しちまった。
自分本当に最強魔術師なのかな?人生勝ち組?
「そういうてめえはレベルいくつだよ?」
よくぞ聞いてくれた!聞いてくれたからには答えなくちゃね!
「ふふん。聞いて驚くなよ?自分のレベルは…」
いや待てよ?こんな奴らにレベルを教えたら噂が広がって目立つんじゃね?
あの漆黒なんたらさんからお手合わせ願うとか来たら嫌だな…
ここは嘘を言った方いいだろう。
「…72だ。」
「って俺らと変わんねーじゃねぇか!」
うっさい!本当は124だアホ!
「とにかく!この近くの街とか村に突き出すから!それでいいね!?」
「う…わかったよ」
光の縄で縛られている盗賊を引きづりながら、道案内を頼み、近くにある村に向かった。
「ほほーここがキダンの村か!」
キダンの村とは盗賊に教えてもらった村である。
地味な村だが、農作物が多く、何よりこの村で採れる水は魔力を回復するとか。とてもいい村だ!
「まぁ、なぜ自分はこう吊るされているのかを聞きたい訳だが」
はい。今自分は村人に縛られ、広場に吊るされているのです。
「おい!盗賊!なんで自分まで吊るされるんだよ!」
「いや俺達に聞かれてもな……」
ついでに両隣には自分が捕らえた盗賊二人も吊るされていた。
「貴様らは我が村の魔力の水を盗みにきた者だろう!?」
おそらくこの村の村長であろう、ヨボヨボのじいさんが大声で怒鳴る。
「誤解だ!自分はただの旅の者で…」
「うるさいうるさい!怪しい者共め…!おいお前ら!あれをもってこい!」
なにあれって?怖いんですけど!?
ていうか話を聞かんかいこのじじい!
「村長準備できました!」
「なにが!?なにが準備できたの!?」
「よーし!連れてこい!」
ズーンズーン
重い足音が聞こえてきた。
「お…おいこの足音って…」
一人の盗賊が恐怖の顔になっている。
そして村の奥からその足音の主は現れた。
「…どうやったらそんなやつ村に置いていられるんだよ」
現れたのは大型のオーガだった。
「我が村の守護神オーガよ!あの怪しき者共に正義の鉄槌を!」
「グォオオオオオオ!!」
「なにが正義だこの野郎!」
むかついた。あの村長ぶん殴る。
自分はまず吊るされている縄を魔法で切る。
「『ウィンド』!」
簡単な風魔法でも硬く太い縄は綺麗に切れた。
「え?嘘でしょ!?」
突然縄が切れたものだから村人は驚いていた。
だけどオーガは気にせず突っ込んでくる。
「『ライトニングバインド』!」
森で盗賊達を捕縛した時に使った魔法を使う。
光の縄がオーガの動きを止める。
「守護神だかなんだか知らないけど、危険だから死んでもらうよ!『バーニングフレア』!」
動けないオーガの足元から大きな火柱が立ち、オーガを焼き尽くす。
「ああ…!我が村の守護神が…!」
村長はオーガが倒されたことに絶望している。
そもそもオーガを守護神にするのはおかしいと思う。
「おやおや…あのオーガを倒すとは…」
「ん?」
見知らぬ声が聞こえて、その方向を向くと長身の男が現れた。
「あんた。ただ者じゃないね?」
「……」
なんで黙っているかというとなんかあいつの服に疑問を持っているからである。
着物か?歌舞伎っぽい服だな…いやでも身軽そうだし…
髪も薄紫?まるでア○ネみたい色だけど。
よくわからない服装の男はどうやらあのオーガをこの村に置いたらしい。
「おお!ミヅチさん!」
「ん。お前たち下がっておいてくれ」
村長がミヅチという名の人と丁寧に話している。
あの村長でさえも尊敬する人なのか?
まぁ、あんな変な服してれば実力者だってのはわかるけどね。
大体変な服着てる人みんな強い人ばっかだし。
「なぁあんた!名前を教えてくれないかい?」
え?自分の名前?生前の記憶はなぜかあるので答える。
「…マコト」
「ふむ…マコトっていうのかい」
あ、名前変えれば良かった!
今女の子だし女らしい名前が良かったな…
でもマコトって名前男女共有できるかな?
「…よし決めた!マコト!俺と一緒に来ないか?」
「はぁ!?」
初対面の人について来い?
怪しさ満点だよ!まだナンパの方が良いよ!
「いやいや…突然言われても…」
「すまんが時間がないんだ!」
ミヅチはズカズカと自分に近づいてきて手をつかむ。
「詳しくは後で話すからさ!」
「えっ、ちょ、まっ」
自分はミヅチにつかまれ、馬車に詰め込まれた。
拉致られました。
「…一体どこまで行くんだ?」
「ああ。これからセルフィアに向かうんだよ」
「…セルフィア?」
多分村じゃなくて街かな。城下町的な。
「しかしすまなかったね。驚いただろう?」
ミヅチが謝ってきたのは村での出来事のことだ。
ミヅチの話によると村の水を悪用したり、横流ししたりされていて、それを防止するためにオーガを置いたとか。
「できればオーガじゃなく、守護騎士とか召喚できれば良かったんだけど…レベル不足なんだ」
「ミヅチさんってレベルは?」
「ん?96だけど?」
うーん。てっきりレベル100超えの人かと思ったけど案外低いのね。
そして自分なら守護騎士とか召喚できそうだ。レベル124だし。
「そんなお前さんはいくつだい?」
やっぱり返ってきた。本当のことを言うか、嘘を言うか…
「ああ、すまんね。女性にレベルを聞くのは歳を聞くことに近いね。話さなくてもいいよ?」
「あ、じゃそうする」
ラッキー!女ならではの特権ってやつだね!
てかまた自分が女だって忘れてたよ。
「じゃあマコトの職業はなんだい?魔法を使ってた所見ると魔術師っぽいけど」
え?職業あるの?全然知らないんですが。
「…わからない」
「もしかして職業を聞いてないのかい?ならちょうどいいかもしれないね」
なに?もしかして神殿とかいって職業何回も変えれる所とかあるんすか?
「セルフィアにある教会で職業を確認するといいね」
なるほど教会ですか。
「おっとそうこうしてる間に着いてしまったね」
馬車の窓から前を見ると、大きな壁と門があった。
慈愛の街セルフィアに到着だ。