表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/45

漆黒の翼という名の紳士

ガタガタガタガタ…

馬車にゆらされ約三十分。

自分と漆黒の翼ギルバートは静かに乗っていた。

全身鎧の仮面だから表情もわからないし、威圧感が…

き…気まずい!何か…何か話さないと!

「え…とギルバートさん…?」

「…ギルでいい。敬語もさんもつけなくていいぞ」

「え?…じゃあ…ギル。今から行く所はどこ?」

「ふー…これを読んでおいてくれ」

渡されたのは書類だった。

「……水の都エスタシスに向かい、その街にある中規模ギルド『蒼天の旅団』と合流。その後『邪神の神殿』を探索することが目的…」

「ああ、そうだ。…気を楽にしていいぞ?そのギルドはかなり面白いからな」

…ん?なんかギルバートさん口調変じゃないか?

ギルド本部の時の威厳ある強気の口調とは全然違うような気がするぞ…?

「あのー…もしかして体調悪いんですか?」

「…少し気持ち悪い…」

「えっ…もしかして酔った!?あの漆黒の翼が!?」

あ、やべ!本音出ちゃった!

だって車酔いですよ?いや馬車だから馬車酔い?そんなことはどうでもいいけどその程度で弱くなる最強の騎士って!

「…ああ。この世界で一番強い奴がだ」

……この人完璧に弱気になっているぞ?

明らかに本部の時のギルバートとは別人のような…

「あの…ギルはなんであんな目立つような口調を?」

「ん?そりゃお前…漆黒の翼っていう二つ名でこんな口調だったら嫌だろ?」

「うーんまぁ…」

「俺はマコトみたいな奴が羨ましいよ…なんせ目立たずにいられるからさ」

「自分これから目立ちに行くんですが…」

というか自分の名前言ってくれた。

無愛想というよりかは口下手?

ギルバートは深く腰掛け、話題を変える。

「ところでマコトの職業とレベルは?」

「えっ…妖術師で、レベルは124」

「そうか…だからダンジョンであんな事ができたのか」

この漆黒の翼、なんか静かだな。

「もしかしてリスアスの前ではいつもあんな口調を?」

「まぁ…大衆の前とかもな」

なんと…最強の騎士の素顔を知ってしまったよ。

「それとマコトは…何歳だ?」

おおっと!?急に答えにくい質問が!

うーん確か前の世界では二十歳だったが今の容姿からして…

「…十七歳」

「やけに若いな…?本当か?」

失敬な!長命種族とかじゃないし!ヒューマンだし!

「まぁ疑っても仕方ないか。マコトが言うならそうなんだろう」

「はぁ…そうしておいて下さい」

話が終わるとギルバートは自分を見ている…ような?

「な、なんですか?」

「…マコトの着ている服って…『大賢者の御霊服』?」

!?なんでわかった!?確かに強い服だが名前まではわからないはずなのに!

「…どうしてこの服のことを?」

「その服と似た服を着た種族を知ってるからさ。確か…ルフォーク族だったかな」

「ルフォーク族?」

ギルバートに詳しく聞くと、ルフォーク族とは古代文明から存在する種族で、人の姿をしているが必ず身体の一部は機械のような人工物で出来ている者が多いらしい。

「技術も魔法も特化した種族だか、どうやら今はかなり少ないらしいから絶滅したんじゃないかって言われている」

「絶滅…生産する人とかがいなくなってきたってことかな」

ギルバートは静かに頷く。

「だけどマコト。生産って言葉は駄目だろう?」

「あ…ごめんなさい」

絶滅しかけても必死に生きる人にそんな言い方は失礼だよね。

それにしても自分の服に似た服を着た機械の種族か…

是非とも会ってみたいね。

「そうだ…水の都エスタシスってどんな所?」

「ん?エスタシスのこと?……水の都と呼ばれるからね。自然が多い街さ。俺もあの街は気に入っている」

漆黒の翼の好評の街ですか。

それに自然ですか…自分田舎育ちだったから山とか川とかはよく見てたけど、この世界の自然ってどんな感じなのかな?

「実は俺、田舎育ちなんだ」

「えっ?そうなの?」

意外だ…まさか田舎育ちの人が最強になるなんて…

まぁ人のこと言えるような立場じゃないんだけど。

なんせ平凡な人間から転生したら最強魔法少女ですから!

「突然のことだったんだ。ある日謎の光に包まれてな。目が覚めたらレベルも上がって強くなってたんだ」

ん?なんか自分と似たようなことが起きたのか?

自分の場合、瀕死というか死んだ時に光に包まれたけど。

「これは神の力だ!お前は世界を救う勇者になるのだ!って俺の村の長老が言ってな。いい迷惑さ…強くしてくれたのには感謝するけどな」

ふむ…どうやらギルバートは神に選ばれた者みたいだね。

厨二病かと思ったけど本当の神の力を受けているとは…

ガタンガタンッ!

「ん?どうした?」

ギルは御者に馬車の異変を聞く。

「どうやら馬車が壊れたらしい。…時間を考えるとここら辺で野宿か」

え?野宿確定?マジっすか。

「なに、問題は無いさ。こうなるって大体は予想してたしな」

ギルは馬車から降りて御者と話し始めた。

「よいしょっと」

一人で馬車の中にいるのも嫌だから外に出ると、辺りは薄暗く、日は沈みかけている。

「……高野みたいな所だな」

「マコトちょっといいか」

風景を見てるとギルが自分を呼んだ。

「もう少し進んだ先によく旅人が使う絶好の野宿場があるらしいから少し歩くことになるが大丈夫か?」

「…そこまで運動不足じゃないやい」

「…すまん。背中乗るか?」

「誰が乗るかっ!」

ちょっと馬鹿にしすぎだぞ漆黒の翼よ!

あとなにその絶好の野宿場って!?

気になることはたくさんあったがとりあえず後回しにした。


野宿場に到着した時にはもう周りは暗く、いつの間にか月も昇ってしまった。

早速ギルは枝を集めて、御者の人は寝床を作る。

「それじゃマコト、魔法を頼む」

「うん。わかった『ファイア』!」

自分は炎魔法の初期中の初期魔法を詠唱して焚き火を付ける。

ちなみにこの魔法以上の高位魔法を自分が使うと強すぎて枝とかが灰になるということが起きた。

「そうだマコト。枝を集めて時に草原を見渡せる場所を見つけたから行ってきなよ」

「ほんと?じゃあ行ってみる」

実はこの世界に来てから街にこもったり、森の中や洞窟の中だったから絶景は見たこと無いんだよね。

ギルが言っていた場所に到着する。

大きな岩の上から見るといいって聞いたけど…

「おお…すごい絶景!」

今は夜だが月の光によって青くなった草原はまさに絶景だった。

「……風が気持ちいい」

自分今、自然を満喫してる。

月は三日月で星も光っている。

こんな綺麗な夜は初めてだった。

しばらく夜風に吹かれながら月を見ていると、いきなり後ろから毛布を掛けられた。

「景色見ているのはいいが風邪引くぞ?」

毛布をくれたのはギルバートだった。

「ありがとう…確かギルは色んな所行ったりするんだよね」

「ああ。色々な国を回ったことはある」

「こんな景色ってまだまだこの世界にはあるんだよね?」

「そうだな…ああそうだ。気になったことがあるんだ」

ギルが気になったこと?なんだろう?

「最初マコトを後ろから見た時、マコトの頭から耳が生えてたぞ?あれは妖術師の特有スキルか?」

「え?耳が…生えてた?」

おかしい。変化のスキルは使ってないはずなのに。

「まぁもしかしたら俺を見間違いかもな。耳があっても尻尾が無かったから」

もし自分が獣人だったとしたら尻尾は確実にあるはずだ。

でもそれが無かったってことはやっぱりギルの見間違いなのか?

「もしかして無意識に変化しちゃったとか…?」

「マコトそろそろ寝るから戻るぞ」

「あ、うん。わかった」

自分は貰った毛布を肩に掛けながらギルを追いかける。

そしてそのまま寝床に横になり、眠りについた。

ちなみに馬車はいつの間にか修理されていた。


「よし準備OKだな。行くぞマコト」

「はーい」

早朝から馬車に乗り、水の都エスタシスに向かう。

馬車にゆらされ、数時間経つ。

「あと三十分もすれば着くはずだ」

「…蒼天の旅団ってどんなギルドなんだろう?」

「あのギルドは色んな種族がいるギルドで一人ひとりの戦闘力も高く、何より賑やかで面白いギルドさ」

「やけに詳しいね」

「まぁ一応昔、あのギルドにいたからな」

あら。そうなのギルバートさん?

「お。ほら見ろ。あれが水の都エスタシスだぞ」

窓から顔を出して見てみる。

「…いやだから外壁しか見えんって」

でも外壁はかなり広く、端が見えないくらい大きい。

なんかこれセルフィアの時も思ったような…

「とりあえずギルドと合流するから街を軽く回るぞ」

街への入場の手続きをして街の重そうな門が開く。

そして到着した水の都エスタシスは自分の想像を超えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ