硝子の青春列車
「なあお前ら。お前らのにとっての青春って何だ?」
季節は真冬。雪でも降るんじゃないかと思う寒さの中、帰路を急ぐ僕達は後ろから降ってくる声に立ち止まって振り返った。
「なんだよ突然。この寒いのにお前の問いかけ暑すぎるだろ…」
最もなことを言うがその返答が寒いと思う。
そして「上手いこと言ったんじゃね?」という顔で見てくるのはやめてほしい。
「やかましいですね、どうせまた何か映画や本にでも誘発されたのでしょう?もっと意味のあることを聞いてください。」
発言者をキッと睨む少女はすぐに呆れたような表情をつくればてこてこと歩きだして行く。
「つれないことを言ってくれるなよ…」
発言者の青年は肩を落としつつ僕の方に近寄ってきた。
「なあ。お前はどう思う?」
予想はできていた。と言うよりかはいつもの流れだから来るのは知っている。
僕は用意しておいた答えを返す。
「何とも思ってないよ。だって、べつに…面白くも楽しくもないじゃん。」
「流石…やっぱり面白くないつまんない楽しくないのネガティブ王だなお前は。」
その言い方は正直気に食わないけれど、思っていることを伝えない僕も悪い。
発言者の彼はつまらなさそうな顔をしてまた歩き出す。
青春ね…例えるなら電車かな。
自由と見せかけてちょっと規則的で、定期的になにかにつまづいて止まる。
決まったレールを走り、脱線なんてしたらすぐさま怒られる。
どこの学校でも同じ、髪の毛染めるのはだめとか、ピアスはつけるなとか。
逆に言えば、決まったレールを走りさえすれば良いということだけれど。
たった1つ過ちを犯せば…壊れてしまう。
僕の中ではもろく儚くて、それでいて…きらきら光っている…硝子細工みたいなものでもあるかもしれない。
大概僕も映画だの本だのに影響されたのかもしれない。案外考えが広がるじゃないか。
そう思いながら後ろを見る。
彼ら3人は笑っている。輝いている。
いつか僕もそうなれたらなと心の奥底で思いつつ、歩き出した。