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香港にて 3 +α

久々の投稿

「あー、疲れた。村上さん、少し休憩させてください。」

「だめだよ、楓ちゃん。食事会をCM視察が長引いたせいで休んだんだから、その分しっかり仕事しないと。」

私は香港本社の控室でひたすら書類とパソコンとにらめっこしていた。


これらの書類はすべて茨木さんによってもたらされたもの、置き手紙には「ここにある書類すべてを翻訳し、内容把握しておくこと」と書いてある。


教科書ほどの厚さがある書類すべてを私は一枚一枚読みながら翻訳し、それをパソコンに打ち込んでいく。

最初はそれこそ、一枚当たり三十分くらいかかっていたんだが、書類というのは一枚当たりの分量はそれほど多くなく、形態が似ているので段々と効率化していき、大体一枚二分から長くて五分程度で終わるようになってきた。


村上さんは、私が翻訳した書類を確認しつつ、それをもとに資料作りをしている。たまに電話をかけていることから、かるい打ち合わせまではしているようだ。


それにしても、書類を読んだり翻訳してて私は、本当にエッグ・スターって世界中に展開しているのだなって実感している。


日本語はもちろん、英語、中国語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ヒンディー語、ロシア語、アラビア語、ポルトガル語...ate


私はこれらの様々な書類を翻訳している時、とある共通点を見つけた。


「村上さん、ここにある書類って・・・。」

「そう、すべて機密書類。普通の翻訳家や通訳に頼めないようなものばかりだよ。そもそも、機密をまもりつつ、書類を翻訳できる人材として楓ちゃんを雇ったんだから。何か国もの書類を一人で翻訳できる。関わる人間は少ないほうが情報漏洩の可能性は減る。

一人、秘密を知る人が増えるということは、その一人分だけ情報漏洩の可能性を上げることになる。

だからこそ、社長とその秘書は高い能力性を求められる。

解かりやすいでしょ。」


なんていうか、私は本当にこの仕事についてよかったのだろうかと思いだした。


「ところで楓ちゃん、その書類が終わった後だけど、このパンフレットを読んどいて。あと、申込用紙に記入もしてね。費用は会社持ちだけど、誓約書は楓ちゃんが書かないといけないから。」

そう言って村上さんは私に一枚のパンフレットを渡した。


軍用パイロット免許取得、および船舶免許、アクロバティック飛行訓練の案内


なんかとてつもなく危ない内容が書かれてるんですけど。


「わが社の最高権力者がのる飛行機の操縦桿を握るんだから、それくらいしないとね。」


あの、村上さん、私車の免許でさえ持てない年なんですけど。


「あと、これから自家用機に乗るときは必ず副操縦席に座ってね。ちょっとずつ覚えてもらうから。」

ひぃぃぃ・・・・。


その日の夜、私は眠たい目で飛行機に乗り込み、操縦桿を握って目が覚めた。

村上さんはスパルタでいきなり私に離陸をやらせた。そしてそのまま航行高度まで上昇、片エンジンのみの飛行、さらにオートパイロットなしで私に操縦桿を握らせ、突風でも機体を安定させる訓練。

さらには海面でのタッチアンドゴーを4回。


あのー、この飛行機のマニュアルには着水について、緊急時以外載ってないんですけど・・・。

え・・・改造して着水できるようにした?・・・ホバリングもできる?ホバリングってなんですか?


日本の地にタイヤをつけ、無事に止まった時の安心感。私はしばらく忘れることができないだろう。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「楓ちゃん、最近頑張ってるみたいだね。」

「はい、ちゃんと飛行機とヘリコプターの免許取れました。」

星崎さんに褒められた。

「でも、学校の勉強を恐ろかにするのはだめよ。・・・聞いたわよ、小テストの点数が悪いんだって?」

茨木さんに怒られた。

「だって仕事が忙しすぎるんだもん。勉強している暇なんてないよ。」

「ははは、確かにね。でもちょっとした隙間時間で勉強するのも秘書には必要な能力だよ。」

村上さんはそう言いながら、茨木さんの左ポケットを指さした。茨木さんは慌ててそれをポケットの中に押し込む。

「ああやって常に小さいメモ帳とかを持ち歩いて、ちょっとしたときに開いて勉強するのが茨木さん流だよ。」

へー、なるほど。ってか、あれって手帳じゃなかったんだ。・・・いや、一応分類的には手帳にはいるのかな。

「ちょっと、何勝手に人のプライバシーさらしてるのよ。それよりもなんでこれがメモ帳ってわかったのよ。」

「ん、だってそのメモ帳、手帳にしては開き方が変だし。それに予定をきめるときの手帳はいつもカバンの中に入れてるだろ。」

村上さん、どこまで見ているんですか。人間の域を超えています。っていうより、ストーカーに近い印象。

「・・・バカ・・・。見すぎよ・・・。」

なんか茨木さんの頬が赤いんですけど。


「はいはいはい、ふたりともそこまで。楓ちゃん、仕事もちゃんとしてるのは知ってるけど、勉強も頑張ろうね。」

「はい。」

ちゃっかりおいしいところは持っていく星崎さんだった。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


  学校にて


俺のクラスには長谷楓という女がいる。

そいつは入学式に早退を始め、遅刻早退欠席を良くする。その上、授業中ほとんど寝ている。だが、そんなことはどうでもいい。

俺は中学生の時から主席だった。中間期末テストをほとんど90点を確保し、小テストだってほぼ満点、ノートも完璧だ。高校生になっても僕は主席だろう。俺はそう思っていた。だが、定期テスト期間に入りテストが終わって自分の成績表を見て驚いた。


ほとんどテストが2位、一部1位もあるが、成績分布で見る限り、同位による1位。総合2位だった。


ありえない。

俺の成績はほとんど9割に近く、しかも今回は高校生になって第一回のテストだからいつもよりも勉強を多くした。勿論、ガリ勉キャラになるきはないので学校ではほとんどしなかったが、それでも家ではそれこそ大学受験を控えている姉よりも勉強している自信がある。


だが、俺はクラスに明らかなガリ勉くんがいたから、そいつが1位なんだろうと悔しながらも納得した。

京大志望で高1から受験対策している人に叶うはずがない。


俺はガリ勉くんに「一位おめでとう、流石に勝てないな」と話しかけた。だが、ガリ勉くんは首を横に振り、「僕は3位だ。」と言った。

「では主席は誰んだ?」俺は反射的にガリ勉くんに聞いた。そうするとガリ勉くんは長谷楓を指差した。


ありえない・・・遅刻早退欠席を繰り返し、その上全授業を睡眠にあてる長谷が主席はなど・・・。認めない、そんなふざけた女が俺よりも上だなんて。


「ありえない・・・と思うだろ。僕もそう思ってたんだけど、これ・・・。」

そう言ってガリ勉くんが見せたのはテストの問題用紙、しかも長谷楓のものだ。それは生物のテスト、そこにはたくさんの問題への指摘と俺が知らないたくさんの俺の知らない単語が書かれていた。

「これは長谷さんが先生に指摘した「テスト問題」の間違った部分。この間違い、教科書から間違ってるんだ。長谷さんはそれを理論的に大学レベルを超えた範囲から指摘してるんだ。これを見た僕の父・・・研究者なんだけど・・・父が見て、驚愕していた。このプリント自体は長谷さんが捨てようとしたところを見らったんだけど・・・。多分だけど、長谷さんの学力はおそらく現役大学生が真っ青になるくらいだと思う。

・・・長谷さんが枕の代わりにしている2冊の本、一冊は父の本棚にあった研究参考資料と同じ本。それにたくさんの付箋とマーカーが引いてある。もう一冊は原子物理学の核融合についての本。さっき一瞬起きたときにポケットの中のメモ帳にその一部を写してた。・・・僕はたぶん一生長谷さんに勝てない。もはや清々しいくらいの天才、いや天災だよ。長谷さんは・・・だから僕は長谷さんを見ないことにしたんだ。多分長谷さんを追いかけると僕は潰れてしまうから。」


ガリ勉くんは長々とひとりごとのように言った。俺はそれを黙って聞いていた。


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