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香港にて 2 CM撮影

ライバル

それはある意味究極の敵であり、物語においては最も苦手とするものとなる。

もちろん、エッグ・スターにもライバル会社が存在し、その名をムーン・バードという。

エッグ・スター、ムーン・バードはある意味奇妙な関係で、お互いがお互いの技術をものにしようとした結果、経営危機等で工場や子会社を売り払う時、よくライバル会社・・・つまり、エッグ・スターが危機の場合ムーン・バードが、ムーン・バードが危機の時はエッグ・スターが買い取ることが多いのだ。

そんなわけで、この二社は一部産業を除きほとんどの事業でかぶっており、持ち技術もほぼ同じ。日々火花を散らしているのだ。


香港エッグ・スター本社

同じ事業を展開している限り、ぶつかるのは当たり前。そしてそれが起こった。


香港国際空港に着陸寸前、茨木さんにケータイ電話が鳴った。

「え、会談の中止、いったいどういうことですか。・・・え、ムーン・バードが参入してきた?冗談じゃないわ。・・・ええ。・・・ええ。わかりました。」

茨木さん、珍しくすこし狼狽している。話を聞くに私の仕事が減るかもしれない。

「茨城君、さっきの電話は?」

星崎さんの質問が飛ぶ。

「あ・・・はい、社長。実は今日急に鉄道計画の権を白紙に戻したいという連絡が香港本社に来まして、不審に思った社員が裏を調べたところ、どうやらムーン・バード社の社員に知り合いがいたらしく、そちらの方に回されたらしいです。・・・仕事を取られるまでムーン・バードに気付かないなんて。」

茨木さんはもうしわけなさそうに言う。


茨木さん、私としては社長にだけ言うのではなく、私にももうしわけなさそうに言ってください。私、兄との約束を無視してきたのですが。


兄の約束を一方的に断ったことを棚に上げ、茨木さんを小さなこと?で心の中で攻める楓


「では、茨木さん、今日の会見の仕事は?」

「ええ、中止よ楓ちゃん。でも安心して、会見のために中止にした仕事があるから。楓ちゃん、仕事はこの会社のこの役職にいる限り、自ら断ったとしても仕事は降ってくるのよ。勤務時間や内容で判断するなら渡したち管理職の秘書はブラック企業真っ青の超ブラックなのよ。まさか休めると思ったの?」


ええ、思ってました。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「楓ちゃん、スタジオに着いたよ。・・・まだ怒ってるの。そろそろ機嫌なおしたら、茨木さんの無理難題な仕事を振ったの、そんなに嫌だったの。」

まるで子供をあやすかのような村上さん。そんなに私は不機嫌にみえますか?

「そりゃ怒るでしょ。なにが「管理職の秘書はブラック企業真っ青の超ブラックなのよ。」よ。そう言って自分は星崎さんと「私達は疲れたからちょっと休みます。」だよ。入学式が終わってすぐ車、その上何も知らされずに即飛行機で香港。その上、「この仕事面倒だから楓ちゃんやっといて」って、会社のCMってそんな私みたいな素人が作っていい代物なの?会社のイメージがここで決まるんだよ。」

「そんなにCMの仕事がいやなのかい。じゃ、キャンセルする?」

「だれが嫌って言った?自分は仕事を休んで私に押し付けたのが嫌なのであって、CM作りは面白そうじゃない。好き勝手やっていいなら思いっ切り楽しむわよ。思いっ切りいいの作って茨木さんに「ぎゃふん」といわせてやる」


村上さんは「視察でそんなに張り切らなくてもいいのに」っと思っていた。


スタジオに入ると、監督が大声をあげて指示をとばしていた。

広東語『こんにちは、調子はどうですか?』

私は監督に話しかける。

『ああ?、どちらさんで?俺はいま撮影のアイディアが浮かばない上に、エッグ・スターとか言う会社に無理やり監督にされて機嫌が悪いんだ。』

『私、そのエッグ・スターから視察に来た長谷楓と言います。』

監督はそれを聞いて初めて私の方を振り向いた。

『・・・十五分休憩しよう。・・・あんた、エッグ・スターからの視察って言ったよな。』

監督は前者は大声で撮影スタッフに、後者はわたしに言った。

『ええ、私は確かにエッグ・スターからの視察よ。』

『ちょっとこれを見てくれ。」

そう言って監督は私に撮影したての映像を見せてくれた。


はっきり言おう、微妙だと。


『監督、まずここですが無駄にアクションを使うのはいいですが、すこし派手すぎませんか?映画じゃないのでここまでする必要はないと思います。あと、このシーンですけど確かに会社の宣伝文句、定番すぎます。これならほかのCMと一緒に流れた時、インパクトに欠けます。あとこのシーンですが・・・・。』


二十分後


『それでは撮影再開します。』


「・・・どうしてこうなった。」

スタジオの端で、村上はつぶやく。

楓ちゃんはメガホンを持ち、監督は台本を丸めて、まるで監督が二人いるみたいに指示を飛ばす。

監督もそれに腹を立てることなく、逆に意気投合したみたいに(実際に意気投合している)次々と撮影シーンが変わっていく。出演側も次々と入れ替わり、たまに楓ちゃんにセリフの発音を出演スタッフが確認している。

「楓ちゃん、これはもはや視察ではないよ。」

村上は勢いづいた撮影スタジオを見つつ、いつ視察終了時間を言うべきが、タイミングを計っていた。


『監督、このシーンもう一つインパクトがないと思わない?』

撮影スタジオの疲労の空気を無視し、楓はそう言った。

『確かに、もうちょっと世界的にって感じがほしいな。こう・・・例えば一人の女の子がいろんな国と言葉で同じ意味の事を言う感じ。そうすればもっと世界的に自分たちの製品やサービスが提供されてるって感じがするのだが。』

『たしかに、でもいまこのメンバーに少女って感じの人はいないわよ。さすがにここは後日撮影に・・・・?』

楓は気が付いた。撮影スタジオにいるスタッフ全員(たたし、村上さんを除く)が私をじっと見ていることに。その目線はなんていうか、母が「楓、ちょうどいいとこにいるじゃない」っていう時の目線だ。もう、やな予感しかしない。

『監督、私そろそろ視察の時間が・・・』

『全員、長谷楓を捕まえろ、逃がすな。今すぐ長谷楓に衣装を着せて準備させろ。こんな都合のいい何か国も喋れる容姿のいいやつは中々見つからん。今日中に撮影終わらせるぞ。』


こうして出来上がったCMは香港だけではなく、あまりの出来に世界中で放送された。CMはネット上の動画投稿サイトなどで有名になり、日本ではそれほど話題にならなかったが、世界中で多言語をはなす美少女として有名に。

さらにはムーン・バード社に取り上げられた鉄道事業案が、楓を鉄道CMに出演させることを条件に再び持ち上がり、現場を知る人としては楓の監督力の高さに驚き、エッグ・スターの面々は楓の高まる人気に唖然とした。


余談だが、このCM視察の兼は後に長谷楓最初の伝説として有名になった。


ところで、このCM撮影の視察、実は元々星崎社長と茨木秘書が長谷楓の対応力の試験として用意したフェイクのCM撮影で、本当のCM撮影はその前日に終わっており、だから茶番に付き合わされた監督は機嫌が悪かったのだが、これを見た試験官二人は楓に実はこのCMはフェイクで試験だったんだといえなかった。

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