02
次の瞬間、今日華は緑の森の中にいた。薄暗い空間からいきなり明るい空間に放り出され、目が慣れず何度か瞬きした。
今日華が立っていたのは森の小道のようで、人が二人くらい並んで歩けるほどの幅の道が前後に続いていた。その先を眺めると、少し遠くに石造りの塔が見えた。たぶん、あれが魔導師のいる塔なのだろう。
「飛ばしてくれるなら、何故塔の前にしてくれないのかしら?」
今日華が疑問を口にすると、近くで声がした。
「申し訳ありません。バルイドの力が強く及ぶ範囲には私の力では飛ばすことが出来ません」
サーセラスの声が聞こえる。しかし、本人の姿は見えない。どこから声がしたのかとキョロキョロ見回すと、小さな黒い鳥が今日華の肩のあたりを飛んでいた。
「私が作り出した使い魔です。勇者様はこちらのことには不案内でいらっしゃいますから、これを通じて私が道案内を務めさせて頂きます」
「サーセラスはこれないの?」
「残念ですが、私にはバルイドに正面から敵対する力がまだ足りませんし、たぶん勇者様についていける体力もありませんので足手まといになるだけですので…」
異世界から自分を呼び出すほどの力があるのに、それでは足りないらしい。魔導師の体力は物語の中でも大抵かなり低いものだったので、そちらは納得だった。
「とりあえず、あそこに見える塔にいけばいいのよね?」
今日華は小鳥に話しかけながら、塔に向かって小道を歩き始めた。
「そうですが、結界に触れたら守護役の魔獣が出てくるでしょう」
「結界? 魔獣? わぁっ」
顔に何か薄い空気の膜のようなものが触れた。その途端、狼の遠吠えのような声が森に響きわたった。
「何、何なのー」
「今のが結界です。すぐに魔獣が来ますからお気をつけて」
「そういうことはもっと先に言って!」
小道の向こうから、幾つもの黒いものが今日華に向かって急速に近づいてくるのが見えた。その姿は大きな犬に似ているようだったが、犬には角はないし体からいくつも角が生えている犬もありえないだろう。全身真っ黒で、大きく開けた口の中まで黒かった。
「犬? もしかしたら狼?」
「本物の狼ではありません。バルイドがその力で作り出した闇で出来た魔獣です。勇者の剣なら簡単に消滅させられます」
いきなりの急襲に心は少し混乱しているが、体は今日華の心とは関係なく勝手に動き始めた。腰の剣をすらりと引き抜くと、魔獣に向かって走り出す。
魔獣たちが今日華に襲いかかったが、その爪が届く前に剣が魔獣を切り裂いた。切りつけた感触はなかった。魔獣からは血も出なかった。剣が触れた部分は切り裂かれて、次の瞬間にその部分は塵になって消えていく。
まるで黒い霧を切り刻んでいるみたいだと感じている内に体の方は自然に動いて、次々と魔獣を切り裂いていき、どんどん魔獣は消滅していった。
「さすが勇者の剣。光の剣ですね。見事なものです」
後方で邪魔にならないように離れていた小鳥が冷静に感想を述べる。
力一杯走っても、片手で剣を振り回しても、体は軽いままで息を乱すこともない。今日華は、自分の体が勇者の剣に相応しいように変わっていることを実感した。
十匹近くいた魔獣を全てあっという間に消滅させて、今日華は剣を鞘に戻した。
「これで守護していた魔獣は全部かな?」
「森の守護獣はこれで全てみたいですね。塔にたどり着けばまた別でしょうが」
「そうなの? 今のところ大丈夫なら、とにかく先に進むわね」
今日華は魔獣の塵が消え去った道をまっすぐに走りだした。
「ここがバルイドの塔なのね」
小道の行き止まり、開けた空間に見上げる程高い石造りの塔が建っていた。
軽くなった体が離れたところに見えた塔まで、楽々と今日華を運んでくれた。ずっと走り続けたのに息も切らしてない。かなり強靱な体になってしまったらしい。自分の体の変化に心がついていけなくて、若干自分の体に恐怖を感じないでもなかったが、とりあえず今はこれも使命のためには便利なのだと思い込む事にした。
「門番がいます」
小鳥が警告する。今度は熊のような姿の魔獣だった。だか、狼より大きくなり力も強くなったとはいえ、所詮は同じ闇の獣。勇者の剣の前ではただの霞だった。今日華が剣振るうとをあっさりと門番も塵と化した。
邪魔者を片づけると、今日華はて塔に近づいて正面の扉の前に立った。
「これ開くのかしら?」
試しに大きな扉を片手で押すと、それは軽く内側に動いた。
「えっ、鍵もかかってないの、これ。不用心すぎない?」
「…勇者様」
呆れたようなサーセラスの声が聞こえる。
「普通の人間はここまで絶対に来られないのです。結界に触れた時点で守護の魔獣に襲われて、爪で切り裂かれ、牙に咬みちぎられ死亡します。普通の剣では魔獣を消滅させることは出来ないんですよ。優秀な騎士でも、魔獣を足止めするのが精一杯です。誰も来ることが出来ないのですから、そんなに厳重に塔を封じる必要性がないんです」
「…えっと、そうですか」
説明されると納得出来るが、この世界に来たばかりだし、その上自分はすでにかなり普通ではなくなってしまったので、この世界の普通がどんなものなのかが全く分からない今日華だった。
「と、とにかく開いてて良かったわー」
と、曖昧に笑って誤魔化した。
「よーし、中に入ってバルイドのところまで行きましょー」
「バルイドは塔の一番上の部屋にいるようですね」
パタパタと黒い小鳥が羽ばたく。
「…やっぱり、そうよね」
何故、ラスボスは入り口に近いところにいてくれないのか。塔ならば必ずてっぺんにいるのは、ラスボスというものは皆高いところが好きなのだろうか。
この塔、何階まであるのかしらとちょっと気が重くなったが、今の勇者の体力なら軽々と登れるだろう。
今日華は階段目指して突き進んだ。
何階階段を登ったのか途中で数えるのは止めたが、それほど時間もかからず、頂上までたどり着いた。勇者の体力は偉大だ。これだけ登っても息切れもしない。多少体が汗ばんだくらいだった。
目の前には、両脇に人型の石像が飾られている扉があった。
「この中にバルイドがいるのね」
今日華が一歩前に足を踏み出すと、扉の脇にいたゆっくり石像が動き始めた。
「な、何?」
「どうやら石像に闇の力を与えて動かしているようですね」
「これも勇者の剣で切ればいいの?」
「残念ながら闇で出来ていないので勇者の剣では消滅させることが出来ませんね。もともとが石像ですから」
話している間にも石像が今日華に近づいてくる。
「じゃあ、どうすればいいのよ」
「たぶん、動力源として闇の核が石像の中に埋め込まれているはずですから、それを砕けば止まるはずです」
石像が腕を持ち上げて、今日華に向けて力強く振り下ろす。動きは石像だからかそれほど早くはないが、石だけあって重そうな一撃だった。当たったら吹き飛ばされそうだ。それを避けながら小鳥に叫んだ。
「核を砕けって、どこよそれー」
「私には見えますが、勇者様には見えませんか? 体の中央あたりの黒い固まりです」
「見えないわよー」
石像の攻撃を右に左に避けながら、石像の体に目を凝らしてみたが、ただの石の固まりにしか見えない。動きが鈍いのでまだ避けられるが、さほど広い空間ではないのでこのまま壁に追いつめられたら逃げきれない。
「…そうですね。では、光の剣をかざしてみてはどうでしょうか。光を当てれば見えるかもしれません」
「かもしれませんって、適当な…」
とはいえ、それ以外に今のところ手はないので、今日華は剣を引き抜き頭上にかざす。勇者の剣から光があふれ出し石像を照らす。光にさらされて、石像の胸のあたりに何か黒い影が浮かんだ。
「あれなのかな?」
今日華は剣を構えると、石像に向かって突進した。黒い影に向かって剣を突き立てる。石像の表面がひび割れて崩れ落ち、胸の中が露わになった。その中には他の部分とは色が違う、黒い石が埋まっていた。
「これね」
拳ほどの黒い石。光を拒む深い闇の石。今度はそれに向かって力一杯剣を突き通した。
パリンと音がして、黒い石は粉々に砕けた。その途端、石像がそのまま動かなくなった。
「成功のようですね」
どうやらサーセラスの考えが正しかったようで、石像を止めることが出来た。
「もう1体も行くわよ」
コツが分かったら簡単だった。光の剣で石像を照らす。もう一体は腹の部分に黒い影があった。振り回される腕を避けて、腹に一撃。露わになった黒い石を砕くと、残りの一体も動きを止めた。
「はぁ、何とか片づいたわね」
ほっと息をつく。闇の獣のように剣が触れるだけで消滅してくれたときとは違って、石像を砕くのは少々力仕事だった。勇者の剣は闇で出来ているものが相手ではなくてもかなりな威力があるようだが、それでもその場合はそれなりの力が必要なようだった。何でも豆腐のように軽々と切れるというわけではないようだ。石像に切りつけて刃こぼれもしないのは、十分普通ではないだろうが。
剣を手にしたまま、ゆっくりと今日華は扉に近づく。
「この中にいるのね」
ごくりと息を飲み込んで、最後の決戦に緊張しながら扉に手をかけた。
部屋の中は思ったより広い空間だった。窓は小さく薄暗いが天井が高く広々としている。
中央に男が一人、こちらに背を向けて立っていた。今日華にはまるで気づいていないようだった。熱心に少し上を見上げている。
男の視線の先には映像が広がっていた。それはベッドに横たわった女性の姿だった。金色の長い髪、白い肌、紅い唇。少しやつれてはいるが遠くからでも分かる美しく整った上品な顔立ち。ウィルリート王子にどこかしら似ていた。
「マリアーネ姫…、何て美しい。これまで何百人もの美女を見てきたが、その誰よりも麗しい」
男がうっとりとした声で独り言をつぶやいている。
「早く私の元に来るといい。私に死ぬまでの服従を誓うのだ。そうすれば美しく着飾らせて、どんな贅沢でもさせてやろう。そして私に従順に従って、私を楽しませるのだ、その容色が衰えるまで…。もしくはお前以上に美しい乙女と出会うまでだな」
男が軽く手を振る。
「…そのためには…」
急にマリアーネの姿が消えて場面が変わった。ヨーロッパのような明るい街並み。そこを行き交う人々。若い人。中年の人。年老いた人。子供を連れた母親。恋人と寄り添って歩く二人連れ。友人と戯れる若者たち。着ている服は現代日本のものとは違うが、日本の日常と変わらない平和な風景だった。
「さて、今日は何人くらい死んでもらおうかな」
まるで朝食を決めるかのような軽い調子で男は言った。
そして片手を挙げると、映像の中の空に一つの黒い雲が出現した。男が手を振り下ろすと、その雲から雷が地に向かった落ちた。その先には年をとった老人がいた。雷はまっすぐにその枯れた体を貫く。老人は燃え上がり、黒こげの屍になって転がった。悲鳴が起こり人々が一斉に逃げまどう。
「まずは今日の一人目。二人目は誰にするかな…」
全く感情の見えない声で淡々と男は続けた。再び手を挙げて振り下ろそうとした瞬間、今日華は反射的に叫んだ。
「止めて!」
男がゆっくりと振り返る。見た目はもうそれほど若くはない外見だった。いかめしく寄せられた眉。無表情に今日華を眺めた。
「誰だ、お前は。何故ここにいる? ここには誰も入っては来られないはずだ」
「私は勇者よ、バルイド。マリアーネ姫を脅迫するために誰かを殺すのは止めて!」
「勇者だと」
バルイドが手を振ると映像が次々と浮かぶ。何もいない森の小道。静まりかえった塔の扉の前。闇の核を失って止まったままの石像。
「こんなことが出来るとは…。普通の人間ではあり得ない。本当に勇者なのか。今この世界には勇者に足る者は存在しないはずなのに」
「私もよく分からないけど、私はサーセラスが他の世界から呼び出した勇者で、光の剣に選ばれたらしいわ」
「サーセラス、あの若造かが…。あれに、まさか異なる世界から勇者を呼び出すほどの力があったというのか」
信じられないと首を振るドルイド。
「ありえない、そんなことは…」
「ありえないかどうかは知らないけど、私は今ここにいて光の剣を手にしているわ。この剣に倒されたくなかったら、人を殺すのは止めて。この国からおとなしく去って」
「勇者様」
今まで黙っていた小鳥が言葉を差し挟む。
「悪しき魔導師はおとなしく去ったりはしません。自分の望みを果たす為に何でもする存在です。話し合いで解決する事はありません。勇者様に出来るのは、その剣で消滅させることだけです」
「サーセラスか」
バルイドが手を振るとその体の回りに小さな竜巻が現れ、小鳥めがけて解き放たれた。
「サーセラス!」
今日華は急いで小鳥の前に立ちはだかった。風が切り裂くように体に吹き付ける。体をかばうように剣を構えると、急に光がわき起こって風を吹き飛ばした。
「魔導が効かない?」
「光の剣の前では闇の魔導は威力を発揮できませんよ」
しっかり今日華の後ろに隠れながら小鳥が告げた。
「三百年の永きに渡って闇に染まった自分の力が効かないだと。そんな馬鹿な。風がダメならこれならどうだ」
バルイドが再び手を振ると、今度は手のひらに炎が燃え上がった。そしてその固まりを今日華に向かって投げつける。今日華は体の前にかざした剣を強く握りしめた。それに応えるように、剣の光が強くなって今日華の体を包み込んだ。炎は今日華を守る光の球体に触れるとそれ以上は進めず散り散りになって消えた。
「まさか、そんな…。いや、まだだ」
驚きを含んだ声で呟き、バルイドは今度は手を振り上げた。バリバリという音をあげながら映像で見た雷が今日華の上に落ちる。だがそれも光の球体を貫くことは出来なかった。
「まだだ。まだだ!」
バルイドの背後に水の柱が噴き出す。それが光の球体に押し寄せ、絡みつき、今日華ごと押しつぶそうとする。しかし、球体はビクともしない。今日華の体は球体に守られたまま、傷一つ付けられなかった。
「そんな…。それが勇者の剣の力なのか。イヤだ、イヤだ、イヤだ!」
バルイドは叫びながら無茶苦茶に手を振り回した。その両手からは風が炎が雷が水が次々と現れ、今日華を何度も何度も襲ったが、そのどれ一つとして球体を通過して今日華の元に届くことはなかった。
大きく肩で息をして青ざめた顔でバルイドは力なく崩れ落ち、床に座り込んだ。
「闇の力を使い果たしたみたいですね」
小鳥が勝利を確信してさえずる。
もう脅威はないと分かったのか、今日華を守っていた光の球体がふわりと消える。初めて見る魔導はかなり怖かったが、勇者の剣が今日華を守ってくれた。光の剣が闇の魔獣を易々と消滅させるのは見たが、闇の魔導に対しても恐ろしいほどの効力があるのが分かった。こんな一方的な戦いになるとは思っていなかった。
今日華はうずくまるバルイドの元にゆっくりと歩み寄った。
「もういいでしょう、バルイド。お願いだからマリアーネ様を諦めてこの国を去って」
「…まだ言っているんですか。説得は無理です」
少し呆れたように小鳥がささやく。
「無理って、もうバルイドには何も出来ないでしょ。勇者の剣にはどうやたってかなわないと証明されたんだから」
これまで手に掛けた人々のことを思うと、このままバルイドを許すことは出来ないが、自分は裁判官ではない。罪を裁くような立場の存在ではないのだ。普通の女子高校生としては、これ以上の無益な殺戮を止めてくれれば、とりあえずそれで良かった。今後はこんな真似はせずおとなしくどこかでひっそり暮らしてくれれば。
「悪しき魔導師は改心出来るような存在ではないんですよ。人間とは違う別の存在なのです」
小鳥が重ねて続けるが、今日華はバルイドの返事を待った。
「私の言うこと、聞いてくれるわよね?」
このまま頷いてくれるものと思っていた。これ以上何も出来ないのだから、それしか選ぶ道はないと信じていた。しかし、バルイドは今日華の思っていたような行動はとらなかった。
いきなりがばっと立ち上がると、両手で今日華の首を掴んだ。
「勇者様!」
小鳥が悲鳴を上げる。
「…私の、邪魔を、するな」
荒い息を吐きながらバルイドが必死に両手に力を込める。今日華は身動きしてバルイドの手から逃れようとするが、もう力も残っていないはずなのに、執拗にその両手は今日華の首を掴んで離さない。
「勇者様、剣を使ってください。バルイドを切り裂いて!」
「で、でも…」
そう言われても、人間相手に剣を振るうことは躊躇われた。人を武器で明確な意志を持って傷つけたことなどなかったから。出来ればそんなことはしたくなかった。
「人殺しはちょっと…」
「自分が殺されてもいいんですか? 魔導師は既に人とは違う存在です。三百年も闇に染まっていたら、もう人の部分なんて残っていません。闇の魔獣と同じです。消滅させてもそれは人殺しではありません。既にもう人間ではないのですから」
そうは言われても、目の前の存在は人の姿をして人の言葉を話している。人間とは違うと言われても、そんなに簡単に納得できるものではなかった。
「…何故私の前にお前が現れるんだ。私の邪魔をするんだ。何者も私の邪魔などさせない。私はマリアーネを手に入れるのだ、マリアーネを、マリアーネを…」
うつろな表情でバルイドは繰り返す。まるで駄々をこねている子供のようだった。その瞳は狂気にあふれ、力なく今日華の首を絞めようとし続ける。
「悪しき魔導師は止まりません。妄執に囚われた魔導師は、誰も止めることは出来ないのです。その本人ですら…。勇者様、あなただけがそれを止めることが出来るのです。それが勇者様の天命なのです」
羽ばたきながら、小鳥が今日華に告げる。
今日華は、間近にある深い狂気に満ちたバルイドの目をのぞき込んだ。バルイドの過去がかいま見えるような気がした。三百年、老いいることも死ぬことも出来ないまま、美しい乙女を追い求めてさまよい続けた。それだけの存在。他には何もない。永い永い時の暗い妄執が重すぎて、押しつぶされそうになる。
「…もう、バルイドを止めてあげて下さい」
サーセラスの静かな声が、心の中に染み通った。自分でも止められない魔導師。バルイドを止めてあげられるのは、自分しかいない。他には誰にも出来ないのだ。自分がしなくてはならないこと。勇者の剣に選ばれたときに自分が背負うことになった、それが定め。
今日華は剣を持ち上げると、バルイドの腹に突き刺した。バルイドの手が首から離れる。驚愕に見開かれた瞳。霧のように崩れていく自分の体を見下ろすバルイド。
「…マリアーネ。マリアーネ。マリ…」
見ていられなくて顔を背けた今日華の耳に聞こえる声が、段々小さくなっていく。やがてコロンと小さな音がして、はっと顔を戻すとそこにはもうバルイドの姿はなくなっていた。
ほんの少し前にバルイドがいたはずの床に上に、両手で包み込めるほどの黒い球体が落ちていた。深淵に誘い込むような闇の色の球体。
「それが、バルイドの心臓です。魔導師の核になるもの。闇の固まり。それを打ち砕いてバルイドにとどめを刺してください」
勇者の剣に重さは感じられないはずなのに、剣を持ち上げる両腕はひどく重く感じられた。重力に従って真下に落ちた剣は、過たず球体を貫き通した。軽い音がして球体は砕け、その欠片も霧のようにすぐに消えた。バルイドは完全に消滅した。
ーー私が、バルイドを、消滅させたんだ…。
今日華は剣にすがりつくように、床にへたり込んだ。
「…ありがとうございます。勇者様…」
サーセラスの声が、寒々とした部屋に響いた。
城の大広間では勇者を讃える祝宴が開かれていた。中央のテーブルには様々な料理が並んでいる。素材は分からないが今日華の目にも美味しそうに見えた。高い天井から吊されたシャンデリアのきらきらと輝く光の中で、煌びやかに着飾った貴族たちが飲み物を片手に嬉しそうに歓談していた。
そして今日華は注目の的だった。もちろん国を救った勇者様だからだ。誰もが今日華に声をかけてきた。たくさんの感謝の言葉、ほめたたえる言葉を浴びせてきた。それはもう洪水のように。
生き残った貴族たちには救世主様なのだろうが、これまでに犠牲になった人々や、この手に掛けたバルイドのことを思うと、今日華はどうしても心が重くならずにはいられなかった。素直に心からは喜べない。
バルイドが説得に耳を傾けてくれたなら…。心を変えてくれたなら…。サーセラスが言ったようにそれは叶わないことだったのだろうし、もう終わってしまって今更どうしようもないことだとは分かっていたが、どうしてもついつい考えてしまわずにいられなかった。
「あれはどうしようもないことだったんだ。仕方のないことだったんだ…」
うつむいた今日華は、そう諦めて心を切り替えようとした。これ以上はもう誰も犠牲にはならないのだからと、良い方向に考えようとした。
「勇者様!」
顔をあげるとウィルリート王子がこちらに近づいてきた。
「勇者様、ドレスはどうなさったのですか? 侍女に用意させておいたはずですが…」
今日華は、つい数時間前のことを思い出してううっと、うめいた。
確かにドレスは用意されていた。それはもうとっても豪華な代物だった。女性だから、もちろん祝宴にはドレスで出るべきだったのだろうが、今の今日華は男性用の服を着ていた。これも十分豪華なものだったが。
祝宴の支度だと城の控え室で待っていたとき、侍女たちがドレスを抱えて持ってきた。それは美しいドレスだった。たくさんの宝石や繊細なレースで飾られていて、それでも華美にはならず上品にまとまっていた。服装にあまり頓着しない今日華でも、これは一度は着てみたいかも…と思わせる、すばらしい芸術品だった。これで祝宴に出るのもいいかもしれないと心が揺らいだのだが、その後が地獄だった。
そのドレスを着るためには過酷な準備が必要だったのだ。侍女は当然のようにコルセットを取り出し、今日華の腰に巻いて力の限り引き絞った。息が出来ないどころか、内蔵がつぶれる、肋骨が折れるかと思った。それなのに非情な侍女は「あともう少し絞りましょうね」と、まだまだ今日華のウエストを締めあげるつもりだった。
これでは絶対に死ぬ。これ以上は何が何でも無理。今日華は侍女を必死に止めて、勇者なのだからドレスじゃない方がいいのでは、祝宴はぜひ男物の服でお願いしますと頼み込んだ。こんな地獄を味わわなければ着れないドレスなら、どんな綺麗なドレスでも喜んで諦められた。
と言うわけで、今日華は今はドレスより遙かに楽な男物の服装をしていた。ここにいる全ての女性たちがあの苦痛を乗り越えてこれらの美しいドレスを着ているのだと思うと、その気力と根性に素直に感動した。自分には到底無理だった。
「ありがとうございます。その…ドレスは大変素晴らしかったのですが、申し訳ありません、私の世界では着慣れないものでしたので…」
王子の厚意を無碍にした結果になったのは心苦しかったが、あのままでは命に関わっていたと思う。自分の選択は間違っていないはずだった。
「そうですか。勇者様の世界とは違うのですからそれも仕方ありませんね。ドレスを着た勇者様の姿を是非拝見したかったのですが…」
王子の表情は、本当に残念そうだった。そんなに期待されていたのかと思うと、少々心が痛んだ。いやしかし、あのドレスは無理だった。
「どれだけ美しいお姿になるかと思うと、大変楽しみだったのですが…。でもその服も、勇敢な勇者様には相応しいのかもしれませんね」
「それは、どうも…」
何かしら、どこかうっとりとした目で王子に見られているような気がした。
「勇者の剣は自分に相応しい光り輝く魂を待った者を選ぶので、今まで男性だけでなく女性も選ばれて来たことは知っていましたが、勇者様が魔法陣に現れたときは驚きました。こんな若く美しい女性が勇者様だなんて」
「女性の勇者もいたんですか?」
「ええ。やはり男性の方が多いようですが、女性の勇者も有名です。光の剣は何千年も前の神の時代に造られたものなのです。それから何人もの勇者が剣に選ばれてきました。男性も女性も。勇者の冒険が伝説になって、いくつも詩になって残っているのですよ」
いつかお聞かせしたいですね、と王子はにっこり笑った。
「そして、二千年ほど前の勇者が我が国の王女と結ばれて王位について、それ以来、勇者の剣を保管するのが我が国の役目になったのです」
「二千年…。とても由緒正しい王家なんですね」
「それからも幾人も勇者が光の剣に選ばれ、その中の何人かは、また王家の姫を娶ったり、王の妃になったり…。この国の王家と勇者は二千年の間ずっと固く結ばれてきたのです」
王子の視線が熱っぽくなり、いつの間にか今日華の手を握りしめていた。
「勇者様もこの国にずっと居てくださいますよね? この国に、私の側にずっと居て頂けませんか? 私の妻として、この国の次の王の妃として…」
「ええっ」
まさか王子がそんなことを考えているとは、まるで想像してなかった。今日華は驚きで一瞬固まってしまった。
「マリアーネを、この国を救ってくださって、心から感謝しています。こんなに美しくて勇敢な勇者様に、どうか私の人生を捧げさせてください」
握っていた手を口元に引き寄せられて、慌てて今日華は正気に返った。
「あの、あの…。ちょ、ちょっと人いきれにあてられたみたいです。外で頭を冷やしてきます!」
失礼しますーと叫びながら、王子の手を振り払って、今日華はその場から逃げ出し、大広間の扉を目指して走り出した。
その場を誤魔化すのが精一杯で、真っ赤になって廊下を滅茶苦茶に走って、ようやく落ち着いたときには、どこをどう走ったのか今日華は中庭に面したバルコニーにたどり着いていた。
走ったせいではなくて心臓がドキドキして、今日華を胸を押さえて、はぁはぁと息をついた。男性に求婚されたのは初めてだった。色恋に疎い初心な今日華には、王子様の求婚は刺激が強すぎた。
「うわー、王子様に求婚されたー」
真っ赤になったままの頬に両手を当てたが、一度熱くなった頬はなかなか冷めてくれなかった。が、中庭から吹いてくる涼しい夜風にしばらくあたっている内に、段々と今日華の心臓も落ちつきを取り戻してきた。
王子としては、妹と国を救ってくれたことに、今日華に多大な恩を感じているのだろうし、話によると勇者と結婚するのはこの国の伝統のようなものらしいし、この展開は王子には自然な流れなのだろう。王子の気持ちは本物なのかもしれない。
「…でも、あの人は私の名前も聞かなかった…」
この国の誰もが自分を勇者とだけ呼んで、一度も今日華の名前を聞かなかった。自分はこの国では今日華である前に、ただ勇者なのだ。圧倒的で逆らうことのできない魔導師に対抗できる、たった一人の貴重な存在。
今日華は、短い間に起きた出来事を思い返していた。いきなりこの世界に呼び出されて、あっという間に光の剣に選ばれて勇者になって、魔導師を倒し国を救ってくれるようにと頼まれ、勇者の剣で戦ってサーセラスの助けで魔導師の元にたどり着き、悪しき魔導師を倒して、人々に感謝され、王子様に求婚された。
今まで何かを落ち着いて考える暇が全くない、めまぐるしい怒濤の展開だった。バルイドを倒して役目を終えた今、ようやくゆっくりとこの状況について考えられる。
「まるで今まで読んできたファンタジー小説の冒険のようだったわね」
ベッドの下に隠したたくさんの小説を思い浮かべる。
「でも…」
そのとき、後ろから声が聞こえた。
「ご満足頂けましたか?」
その声には聞き覚えがあった。忘れてはいけない、何かがあったような気がした。今日華は曖昧な記憶を引き出そうとする。
「夢の中の、声!」
思い出してぱっと後ろを振り返った。そこに立っていたのは、全身を覆おうマントを羽織り、相変わらずフードで顔をほとんど隠したサーセラスだった。しかし、今聞こえた声はサーセラスのものではなかった。
「サーセラスじゃないわよね。誰なの? 夢の中のあの人なの?」
「ええ、そうです。今は、この男の体を借りています。この異世界では実体化できませんので」
その声は確かに夢の中で聞いた声だった。望みを叶えてくれると、夢を叶えてくれると約束した声。
「夢だった冒険はいかがでしたか? なるべく貴女のご希望に添ったつもりですが」
「これがあなたの言っていたことなの?」
「なかなか素敵な冒険でしたでしょう? ご満足いただけましたか。それなら、約束したとおり、貴女から頂きたいものがあるのですが…」
「頂きたいものって…。いやいや、その前にあなたは何者なの? 一体どうやってこんなことになったのよ」
あれは夢の中の出来事だと思っていた。曖昧で朦朧としてあまりよく考えることなく約束してしまった。しかし、今はっきりした思考で考えてみると、あれもこれも謎だらけだった。
まず、この人物が何者なのか。約束とは、この人物が欲しいものとは何なのか、一体どうやってこんな冒険を仕組んだのか、気になることでいっぱいである。こんなあやふやなことを誰ともしれない相手と約束してしまって、本当に良かったのか。
「頂きたいのは、それほどたいしたものではないのですけど」
誤魔化すように声が続く。が、今度は誤魔化されない。はっきりさせてやる。
「それは私が判断するから、何が欲しいのかちゃんと答えて!」
「…仕方ありませんね。そうですね、私が欲しいのは、貴女の魂です」
「たましい…」
聞き慣れない言葉に、一瞬意味が分からなかった。魂を欲して人間と契約する。物語ではそれは、その存在は…。
「た、魂が欲しいって…。それじゃあ、まるで悪魔じゃないの!」
「そうですよ、私は悪魔と呼ばれる存在です」
あっさりと肯定されて、がっくりと力が抜けそうになる。
…あ、悪魔と契約してしまった…
「魂の記憶は貴女にはないのですから、貴女自身にはたいして影響もないので意味のないことですが、貴女の魂はとても徳の高い聖者のものなのです。悪魔には垂涎の的の」
「たいしものではないって、嘘じゃない。魂をとられたら、私死んでしまうんでしょう? 一体それのどこがたいしたことないのよー。嘘つきー」
「まぁまぁ、そんなに興奮しないで、落ち着いて下さい。魂を頂くと言っても、すぐに頂くわけではありません。悪魔には時間はたくさんあるのですから、契約さえしっかり完了していれば、百年かそこらなんてゆっくり待てます。貴女が人生をたっぷり楽しんでその寿命を終えてから、貴女には不要になってから頂ければそれでいいんですよ」
落ち着いた調子で声は続けた。
「それに、頂いた魂も大切にすると誓いますよ。徳の高い聖者の魂は、持っているだけで悪魔にとっては大変なステータスですからね。毎日大事に磨いて、一番綺麗な鳥籠に飾らせてもらいますから」
ほらね、たいしたことじゃないでしょ、とにこやかな声がする。
確かに今すぐ死ねと言われたら絶対拒否だが、そうではない、寿命が終わったあとでいいと言われると、それほどひどいことではないのかもしれない、と一瞬悪魔に説得されそうになる。
「貴女の望みを叶えるのに、この世界はとても都合が良かったのです。丁度トラブルの真っ最中でしたし、勇者を必要としていましたし。貴女の魂、聖者の魂は、光の剣には選ばれるに相応しい光り輝くものでしたし。それで、私はこの男の体に乗り移って、貴女をこの世界に呼び出させたのです。勇者の剣に選択されるように」
物語を詠っているかのような声。
「あとは、この男の中に潜んで、貴女の冒険がうまく行くようにこっそり手を貸しました。どうです、素晴らしい冒険でしたでしょう?」
「素晴らしい冒険…。これが私の望んだ冒険?」
これが悪魔が約束してくれた夢の冒険…。それは確かに今まで読んできた物語に似ているものだったかもしれない。でも…。
「…違うわ。これは私が望んだ夢じゃない」
ぎりっと、サーセラスの中にいる悪魔を睨みつけた。
「確かに物語のような冒険だったわ。でも、私は誰かが仕組んだ物語を、誰かの思惑のままに、誰かの指示に従っただけだった。勇者と言う役割を与えられてその通りに動いただけ。これじゃあまるで私はただの操り人形じゃない。自分で考えて、自分で選択して、自分で行動した訳じゃない。こんなの『私の』冒険じゃない!」
きっぱりと今日華は言い放った。
今まで自信に溢れて流れるように語っていた言葉がぴたりと止まった。しんとした静寂が訪れる。今日華は悪魔をにらみ続けた。
「…ふ、ふふふっ…」
いきなり悪魔が笑いはじめた。
「そうですか。これは貴女の冒険じゃないですか、そうですか…」
面白くてたまらないような声がする。悪魔はひとしきり笑い終えると言葉を続けた。
「私は貴女をまだ分かっていなかったようですね。観察が足りませんでした。心地の良い冒険をと思って、やりすぎたのですね。貴女が望んだのはもっと違う別のものだったのに…。すみませんでした」
言葉では謝っているが、少しも申し訳なさそうには聞こえない。
「分かりました。もう私は手助けはしません。遠くから見守るだけにします。この世界には、まだまだトラブルの元が転がっていますからね。この世界にいれば、勇者の剣を持っていれば、これからもたくさんの冒険ができるでしょう。貴女が満足するまで」
「ちょっと待って。それは私が満足するまで元の世界には帰れないということなの?」
「そういうことになりますね。この世界でないと、貴女の望みが叶いませんからね。元の世界で冒険なんて無理でしょう? 勇者の剣があれば大抵のことは困らないでしょうし、この世界に適応するのも冒険の楽しみのうちですしね」
声がまたくすくす笑う。
「たっぷりと、この世界を、貴女の自身の冒険をお楽しみ下さい。そして、満足したら私を呼んで下さいね。そのときが契約完了です」
それではと、今日華の返事も聞かずに声は別れを告げた。
「待って、まだ話が…」
と、呼び止めたが悪魔は今日華の言うことを聞いてはくれなかった。あまり色々話してあれこれ突っ込まれたくなかったのかもしれない。
「絶対、逃げたわね!」
悔しそうに今日華は叫んだ。
「悪魔の卑怯者ー」
…卑怯ではない悪魔は存在するのだろうか。甘言を吐いて人間を自分の望むように惑わし騙し、誘惑するのが悪魔の務めだ。正々堂々とした悪魔…。それは悪魔ではないような気がする。たぶん、今日華を振り回すこの悪魔の行動はとても悪魔らしいのだろう。今日華には納得がいかないだろうが。
「勇者様、どうしてここにおられるのですか? 今夜は大広間で祝宴のはずですが…」
今度はサーセラスから、サーセラスの声がした。悪魔はその体から立ち去ったようだ。
「えっと、その…。人が多すぎて、暑くなってきたものだから、ちょっと涼みに…」
たぶん何も知らないだろうサーセラスに何を言っても仕方ないので、今日華は慌てて誤魔化した。
「そうですか。皆、勇者様が目当てですからね。確かに少し疲れるかもしれません」
サーセラスは曖昧な今日華の言い訳を良いように解釈してくれたようだった。
「サーセラスこそ、大広間には行かないの? そういえば、見かけなかったわね」
「…私は大勢人が集まるところは苦手なものですから…。勇者様の祝宴なのに、欠席してすみません」
頭を下げて謝られた。
「そんな…。こ、こういうことは得意な人と苦手な人がいるから。苦手なら無理しなくてもいいのよ、サーセラス。全然謝ることじゃないわ」
今日華は慌てて手を振って頭を上げさせた。
「バルイドとの対決の時にも思いましたが、勇者様は優しいですね」
「えっ」
サーセラスは顔を隠しているので表情が見えず、感情がよく分からないのだが、この言葉には驚いた。もっと冷静でどちらかというと冷たい印象だったからだ。それは、もしかしたら悪魔が体の中に潜んでいたからで、本当のサーセラスはもっと違う人なのかもしれない。
まだまだ何も知らない、分かっていないのかもしれない。名前を呼んでもらえないと、自分はただの勇者という記号のようにしか扱われていないと思っていたけれど、自分もまだ誰にも何も話していない。まだまだなのだ。
「サーセラス」
「はい」
「私の名前は、今日華と言うの」
今日華はまっすぐサーセラスを見つめて告げた。
「今日を、今を、精一杯咲き誇る華、という意味なの」
「今日華様ですか」
「うん。両親が考えて考えて付けてくれた名前。大好きな名前なの」
「素敵な名前ですね」
サーセラスが暖かく微笑んでいる気配がした。何かが心を柔らかく満たすような気がする。今日華も自然に顔がほころんだ。
「さぁて。それじゃあ、そろそろ大広間に戻るわね」
サーセラスに手を振ると、今日華はバルコニーをあとにした。
正直、悪魔との契約についてはまだまだ色々と不安があるのは否めなかった。が、寿命で死んだあとのことは、今は想像もつかなかったし、魂だけになって、鳥籠に飾られることになると言われても、どうにもピンと来こない。
とりあえず、すぐに命を奪われることはないと分かったし、自分の人生はちゃんと終えられると約束してもらったし、それ以上は今は考えられなかった。
今は、今を精一杯生きたい。満足するまでこの世界から元の世界に戻れないと言うのなら、この世界のことをもっと知りたい。そして自分をもっと知って欲しい。もっともっと、ドキドキハラハラの本当の冒険をこの世界でしてみたかった。自由に、自分の望むままに。
「ここは私の望みの叶う場所だそうだし」
それを信じて今は歩き出したい。
今日華の、本当の冒険は今から始まるのだ。
<とりあえず、終わり>
最後まで読んでくださってありがとうございました。ご意見、ご感想があればお聞かせ願えれば幸いです。ただ、筆者は小心者ですので、心がボキボキ折れるようなご意見の場合は、ちょっとだけオブラートに包んでいただければ、泣いて喜びます。