表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ロッカーの中

作者: ParticleCoffee

 教室の一番後ろにボクの席がある。

 そして、その席の後ろには掃除用具の入ったロッカーがある。

 最近になりそのロッカーへのヒトの出入りが激しくなった。

 今日も休み時間になると、ロッカーにクラスメイトがひとりはいっていく。

 バタン、

 と、後ろ手に閉める音。

 ガチャ、

 と、すぐさま開く音。

 中にはいったクラスメイトが出てきたのかと思ったが、別のクラスメイトが外から開ける音だった。

 扉を開けたそのクラスメイトも中へとはいっていく。

 授業開始のチャイムが鳴っても出てくる様子はなかった。

 ロッカーにはいった二人がいないことを誰も気にすることもなかった。

 授業が終わり、次の休み時間になっても同じことが起こる。

 別のクラスメイトがはいり、また、別のクラスメイトがはいる。

 その後も何人ものクラスメイトがはいっていく。

 はいっていった人間が誰一人として出てこない。

 教師は、多くの空席を目にしても気にも留めずに授業を始める。

 午前の授業が終わるころにはクラスの半数以上がいなくなっていた。

 昼食・昼休み・授業を経て、最後の休み時間になる。

 相変わらずロッカーへはいる人間はたえない。

 休み時間が残り三分ぐらいになったとき、ようやく人が途切れた。

 いましかない、とボクは行動を起こす。

 自分の机から、銀色のダクトテープをとりだす。

 立ち上がって振り返り、ロッカーの前へと立つ。

 ロッカーに入らなかった数人がこちらを見たが、気にするつもりはない。

 威勢のいい音を立ててテープを引き出した。

 ロッカーの扉をきっちりと閉めて、テープを張っていく。

 まず、扉の隙間の上下左右を完全にふさぐ。

 そして、ロッカー上面から床へ、横に五分割する。

 最後に、ロッカー左側面から右側面へ、縦に十分割する。

 これでロッカーは完全に銀色の箱となった。

 腕を組み、空気のはいった部分やよじれている部分がないことを確認する。

 ――完璧だ。

 ボクは、出来栄えに満足して席へと戻る。

 ちょうど最後の授業開始のチャイムがなり、教師がはいって来る。

 空席を気にしないことと同様に、銀色の箱も気にする様子はなかった。

 何事も無いように授業が進み、何事も無いように最後の授業が終わる。

 教師が出て行き、扉を閉めると同時に、銀色の箱がガンガンッと鳴り出した。

 内側から扉を殴っている音だ。

 数十人が同時に殴っているように感じる。

 音の切れ目がない、絶え間なく殴り続けている。

 ロッカーが爆発しそうなほどに激しく振動している。

 鳴り止まない、教室中に鳴り響いている。

 ロッカーの周りを、クラスメイト数人が取り巻いていた。

 誰かが、ロッカーに手を触れるが、激しい振動に驚き距離をとる。

 誰かが、テープをはがそうと試みるが、はがすことができない。

 何事が起きているのかをしりたいのだろうか。

 それとも中へはいろうとしていたのだろうか。

 どちらにしても、なにもできずオロオロと近くをうろつくだけだった。

 こんなことなら、もっと早くやってしまえばよかった。

 そんなことを思いながら教室を後にする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ