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過去勇者、今辺境伯令嬢改稿前置き場

(旧)前世は召喚された勇者でした。けどわたくしは天才じゃないです

作者: 暁ノ零騎士

短いですがよろしくお願いします。

 見えない速度で振り下ろされる相手の得物を掻い潜り、俺は相手の懐に侵入する。


 相手が僅かに息を飲んだのを感じ取りながら、力の無い俺でも勝つにはどうすれば良いか刹那の間に考えて、手にした得物の切っ先を優しく敵対者の喉元に添えてやれば良いと結論を出して実行する。


 瞬間。


「ま、参りました」


 敵対者からの降参の声。だけど俺は手を抜かない。相手に武器を突きつけたまま審判役の男へと無言の圧力をかける。

 それを感じ取ったのか、審判は声を裏返しつつも俺にこう告げるのだ。


「しょ、勝者。エレイン・フォン・グリード」


 途端、場外から沸き起こる歓声。


 俺はスッと手を引いて相手に誠意を届けるために一言返す。


「ありがとうございました」


 これは俺が戦いはじめてからずっと行っているルーティーン。所謂精神統一みたいなもんだ。

 戦う前にはよろしくお願いしますから入り終わりにはありがとうございましたで終わる。


 礼に始まり礼に終わる。


 これが幼き頃から続けている事。

 すると相手はきょとんとしたあと、にっこりと柔らかい笑みを溢した。


「いえ、こちらこそ。嘗めた真似をしたことを御許しください」

「いいえ、騎士様。わたくしにこそ非はあり、騎士様はいさかいを止めるために動いただけですもの。ですからお気になさらないでくださいませ」

「左様でございますか。ではいさかいの原因であった者たちにしっかりと言い含めておきます故、どうか彼らに咎の無いよう、よろしくお願い致します」

「承りましたわ。ではわたくしはこれで」


 周りからの歓声が少々鬱陶しい。褒められることは好きだがその中に天才だ、とか剣の申し子だ、とか言う台詞が混じってるのがいただけない。

 俺は俺の力で努力してここまで登り詰めたと言うのに……。


 訓練所を抜けて一旦室内に戻れば見たくない顔が鬼の形相で立っているのが目に入ってきた。いや、何もそこまで怒らなくても……。


「お嬢様っ」

「はい」

「わたくしは、メリスは大変心配致しましたっ。お嬢様のご尊顔にいつ傷が付くかとひやひやしっぱなしでございましたのよっ」

「お、おう」

「いつも言っておりますでしょうっ。お嬢様は――」


 一定の範囲内に侵入した途端一気に詰め寄られ、食いぎみに捲し立てられた俺は思わずどもってしまう。

 いくら自分が今戦闘モードから令嬢モードに切り替えているとは言え、まさかあの一瞬でここまで詰められるとは思わなかった。うむむ、まだまだ精進が足りないな。やっぱりあの頃と比べると能力は100分の1にも満たないや。


「――でありまして。お嬢様?聞いておりますか?」

「ああうん、聞いてるよ。取り合えず寒いしお風呂に入りたいんだけど良いかな?」


 ちょっとトリップして色々と俺のことを褒めちぎっていた侍女の言葉を止めれば、彼女はだらしがない顔から一気に確りとしたものに替わる。さすが公爵家の侍女。


「かしこまりました。ではすぐに準備を致しますのでまずはお部屋に向かいましょう」

「うん分かったよ」


 メリスと二人で城内を進む。

 訓練所との繋ぎの道筋とはいえ、過度な装飾は一切となく、それでいて一級品の調度品の数々はさすが王城と言ったところか……。


 俺のためにあてがわれた部屋に向かう間。ちょっと自己紹介をしようと思う。


 まずやたらと女にも関わらず俺、俺言っているのは理由があるんだわ。

 うん、まず俺なんだが転生者、知識、技量において強くてニューゲーム状態で元は男だったんだ。


 あ、うん。予想ついてたよね?なんかごめんなさい。

 んでこっからが重要なんだけど俺、前世ではこの世界で勇者やってました。

 しかも今世では勇者の子孫。笑えるよね。あは。


 でもって現在の地位だけど辺境伯令嬢っす。

 俺はたしか魔族とのいさかいに終止符、つまり停戦、和平まで持ち込んだ功績を称えられて伯爵の地位に収まっていたはずなんだが……。

 どうにも書斎にあったじい様(あ、俺の玄孫ね)の手書きの書記によるとあれからまた魔族との関係が悪化。どうやら人間側が条約無視して魔族を捕まえて売り物にしたらしく、魔族側が抗議。だけど駄目宰相の傀儡だった当時の王様の一声により抗議に対して抗議。

 魔族側は再度打診したが人間側が使者に斬りかかり交渉は決裂。


 良かろう、ならば戦争だ。状態に発展したと言う。

 それから起こったことをありのままに話すと魔族側の魔王ユーフィルが単騎がけして王城に突撃。王様に直接宣戦布告。当時の騎士団は駄目宰相の影響を受けて張子の虎状態だった為呆気なく突破されたと言う。

 一応俺の玄孫(あ、じい様ね)も伯爵としていたんだけど駄目宰相の指示で暴動の鎮圧に向かっててその場には居なかった。


 と言うか居たら最初の抗議の時点で魔族をさらった不届き者ども全員抹殺して謝罪してたんだけどね。

 年々上がる圧政に苦しんだ民の暴動を抑えるために出動してたのが不味かった。


 でもって帰ってきたじい様が命じられたのが魔族領と隣接するグリード地方の統括。

 勇者の血族ならば魔族に対抗できる!

 何を血迷ったことをほざいているんだ駄目宰相はっ……。結局じい様一同グリード地方に封じられ今では駄目宰相一族に逆らった者たちは戦線維持とかなんか訳が分からん理由で辺境、つまりグリード領にぶっ込まれ続けてます。

 ってのが現状。


 何だか今回の話ってキナ臭い事ばっかなんだよなー。

 圧政の理由を魔族と戦ってるからとか悪いのは攻めてくる魔族が悪いんだ。ってことにしてる宰相一派。当時邪魔だった勇者一派を中央から遠ざけ、なおかつ民の暴動を抑える理由を作り出した一種の計略としか思えない。

 そう考えつつじい様は魔王ユーフィルに謁見。

 事の子細を伝えつつどうするか考えた。


 もう王国滅ぼそうぜ。魔王様超イカすな。

 いや、そりゃ俺も思ったんだがよ。じい様もなかなかに素晴らしい意見だな。


 で三日三晩協議した結果。取り合えず放置。に落ち着いたらしい。

 いずれ国は腐り落ちる。なら放っておいても問題ないよね?的な感じに落ち着いたらしいっすわ。


 じい様ももう王国見限ってたし自分の領地の人間さえ助かれば問題なかったから放置に賛成。

 じゃあ俺王国に捕まってる魔族回収するわ。

 オッケー、じゃあ我は先走ってるうちの不穏分子黙らせとくわー。

 的なノリで条約を結んだじい様たちはやっぱイカすぜ。


 でもって何で魔王と謁見できたかと言うと俺がカズキだった頃親友になって超仲良くしてたから。

 俺の子供も仲良くしてたしその影響かねぇ(遠い目


 んで現在に戻るわけだがうちの子孫は代々魔王と共に魔王城にて過ごす。洗脳とかそう言うんじゃなくてありのままの魔王城での暮らしを感じた上で王都に向かってほしかったから。なんか知らんけどここ二代に渡って中央から一旦子供を集めて教育する機関が設けられたとか何とかで、無理矢理連れていかれるんだよね。で、そこで貴族至上主義者、魔族は敵だって思想を植え付けられて帰ってくる訳だ。

 宰相一派マジ徹底してて鬱陶しいな。

 その代は駄目だけど後の代へと徐々に浸透させてくとか、膿は一気に取り除かないと駄目ってのが良くわかるぜ。


 ま、うちの子孫は魔王城での暮らしを知ってるため宰相一派の思想には染まらない。むしろ不快感を増して帰ってくる。

 あとさりげなく魔族悪い奴等じゃ無いよって正しい領地経営をしてる子息に伝えてあげてるのさ。ま、結果は半々だけど。


 はてさて、そんな話をしている間に風呂も終わったしゆっくりとしますかね。

 えっ?風呂のシーンはどうしただって?やだよ。何で俺がお前らに裸の描写伝えなきゃなんねぇんだ。その辺は勝手に想像してろ。俺は今から図書館行くんだから。


「メリス。行きますわよ」

「はい、お嬢様」



 そして俺は出会う。

 物語の一端に。その出会いから俺は何かの意思によって中央へと引っ張られていく訳だがそれは別の話。


 もし未来の俺がここに居たのなら、図書館には行くんじゃねえ!と言うことは間違いないだろう。


 これは前世勇者だった令嬢がとある物語に巻き込まれる物語。その物語の行方はまだ誰も知らない。

いかがでした?

なんのまとまりもないつたない文ですが楽しんでいただけたでしょうか?


続きは……気が向いたらかきます。

基本的に勢いでやってますんでお手柔らかに……

ではでは

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