魔女の恐ろしい呪い
ある街に女がいた
その女は何でも出来た
皆は驚き、喜び 次第に恐怖した
何故いろんなことを知っている
何故いろんなことが出来る
ある者が正体を突き止めたそうだ
彼女は魔女だったのだと
皆は納得し魔女を早く排除しようと団結した
何でも出来た筈の魔女でも皆に追われては対抗できなかったようだ
魔女の逃げていく道のりで浮浪の少女がいた
魔女はその少女に近付き、何事かをつぶやいた後 高らかに笑い謳った
「この病弱で貧弱そうな娘が死ぬと街が終る呪いを掛けてやった、さて何日持つのやら」
皆は怯えた
この魔女はとある村を潰したという流行り病を消すことが出来たのだ
そんなものを消せるならば出すことも出来て当然なのだろうと
魔女はその後捕まり火炙りにされた
街の皆は浮浪の少女を綺麗な風呂に入らせた
街の皆は浮浪の少女に清潔な服と過ごしやすい家をやった
街の皆は浮浪の少女に栄養のある食事をやった
街の皆は浮浪の少女に良く効く薬とかかりつけの医師をやった
街の皆は浮浪の少女に心が病まぬよう良く声を掛けた
これで娘が死に街が終ることはないだろうと
されど、安心は出来ないが為に少女に沢山のものを与えつづけた
少女は病気に勝ち、健康で街の誰よりもすくすくと育ち
街の誰よりも綺麗な女性となり、結婚し沢山子供を儲けて家庭を築いていき次第に幸せそうな老婆になった
老婆が寿命を迎える時、彼女は街を歩き病弱な浮浪の少年を見つけだし、街の皆に聞こえるよう高らかにこう言ったのだ
「皆に秘密にしていたが私は魔女の意志を受け継いでいたのだ、私は魔女を尊敬している」
「この街を終わらすだけではもの足りぬ、この病弱で貧弱そうな坊やが死ぬと世界が終る呪いを掛けてやった。さて何日持つのやら」
そして彼女は死に、街の皆は驚き急いで少年を生かす支度をした
街の皆は言った
「おぉ恐ろしい、魔女は最も弱いものばかり狙う。なんて残酷なんだ、まさに魔女だ」
「恐ろしい魔女はまた現れ呪いを掛けつづけるだろう、呪いを増やされる前に弱いものを無くしてしまえ」
街の皆は浮浪のものや病弱な者達にいろんなものを与えた
皆は最初に呪いを掛けたあの魔女を鎮める為に大きな墓をやった
その隣に元は浮浪の少女だったあの魔女を鎮める墓をやった
街の皆は毎日墓に供えものをするのだ
街は「魔女の呪いの街」と呼ばれるようになった
この街は呪いに掛からぬようにする呪いが掛けられてしまったのだ
さて、不思議なことに最初の魔女に家族が居らずとも老婆に家族は居たはずなのに彼らに危害を与えるものは居なかったそうな
彼等の家族からまた家族が出来ていくというのに
時が経ち、何が変わったというのやら