3話 第十地区
少女に黒い刃が振り下ろされたと同じタイミングで一発の銃声がその場に、木霊した。
「てめぇは…」
隻腕の少年は、銃声のした方を睨らむと仰向けに倒れた。
そしてそこには
「嘘だろ…」
学校に向かっているはずの瀬川路菟だった。
***
オカシマから電話があってから少し時間がたった頃、俺は、時間短縮のために都市の中でも一番治安が悪い第十地区を突っ切っていた。
正直な話ここの治安は下手したらどこぞの紛争地域よりも悪いかもしれない。
というのも、ここは、人類の敵である『奴ら』が攻めはいられたときに、自分達に有利な戦闘をするたに誰も使わないビルというビルを建てまくったせいで、自分達の縄張りを作りたい不良たちにとっての格好の住処になってるわけなのだ。
そんな訳で、不良たちから目をつけられる前にここを走って通り過ぎようとしてるんだが。
なんかすげぇ銃声が鳴り響いてる(・_・;)
確かに『奴ら』がいるこのご時世で備えとして銃を持っていても可笑しくない(実際俺も持っている)がそれでも一人から三人の奴らで試し打ちが精々だがこれは、この銃声の数はどう考えても四人以上の物だ。
はっきり言ってこれだけ多いと犯罪臭しか、しないし、もし流れ弾にでも当たれば痛いじゃ済まない事になる可能性だって十分にある。
だが、俺は行かないといけない。
なぜか?それは至極単純でペナルティの量がかなり多いからだ!
は?そんな理由?と言ってしまう人もいるだろう。だが一回体験してみて欲しい、A3の数学プリント20枚(両面)を明日までにやるという地獄を。
無理だろう?だがやらされるんだそんな地獄を。だから俺はこの紛争地域と化しているここを!
と決意して数分後、隻腕野郎が水色の髪の女の子に刀を振り下ろすのを見て反射的に銃をぶっ放して今に至る。
ちなみに、隻腕野郎は俺に撃たれたゴム弾によって気絶している(ぶっちゃけるとゴム弾がここまで威力高いとは思ってなかった)。
「これで大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
女の子に鉄の棒が刺さっていた時には少し驚いたがよくよく見てみたらアンドロイドだったのに気づいて落ち着いて鉄の棒を抜いた。
「しかし、何だってこんな危険な場所にいたんだ?」
「人を探してまして、それで道に迷ってしまいまして」
「んで、襲われたと?」
「はい」
確かにここの治安の悪さは異常な訳で、しかもこの機械少女は殆ど人と区別付かないような出来であれば、ここに転がってる隻腕野郎みたいなコレクターは、襲って、解体して、自分の住処に持ち帰るだろう。
「もうここには近寄るな。危ないから」
「ご伝達の程ありがとうございます。それでは、私はこれで」
「ああ、気ぃつけろよ」
そのまま水色の機械少女は去って行った。
さて、この転がってる隻腕野郎だが触らぬ神に祟りなしだし(刀は貰っておくが)ほっといておこう。
そう思いながら刀をアイテムボックスに入れて、そこから立ち去ろうとした時である。
「待てよ」
「ん?」
さっきまで転がっていた隻腕野郎が、起き上がり俺を睨みつけていた。