なーろっぱ世界の短編 婚約破棄とか聖女とかドアマットとか転生とか
王家の宝物NO129 黄金の棒と玉の由来 ~猿王子が人間を辞める日~
「アレはどうしようもない」
王は溜息をついた。
「猿だ。しかも覚えたての猿だ。いや猿の方がまだました」
大臣はうなずくしかなかった。
「そうですな……」
アレと言われて、王家の一粒種の王子だ、と判ってしまうあたり、救いようがない。
「アレをかわいがっていた王妃も、最近では、顔を見るのすらイヤになったらしい」
「王妃様が一番かわいがっていた侍女を手籠めにされかけましたからな……」
「このままだと子種をばら撒く」
「すでにばらまいているのでは?」
「あいつの子種を欲しがる貴族の令嬢どもに子供ができない薬をこっそり飲ませることで、なんとかしている」
「おいたわしや」
「おいたわしいものか、あんな女ども、子供ができたってロクなものではない」
「いえ、影たちが」
「そうだな……こんなくだらぬことに人員の半数を割いているのだからな……なぜアレしかおらんのだ」
「王女がたなら優秀ですが」
王は溜息をついた。
「継承法を変えるのがな……面倒だ。祖法、仕来り、伝統だと! 他人事だと思って拘るものの多い事よ」
「確かに」
王は忌々し気に呟いた。
「ああいっそ。ちょんぎってしまうか」
「陛下それは……」
「そして、必要な時に装着してやればいい」
「なるほど」
「むりだな――」
「できます」
※ ※ ※
王子は、いつものようにかわいい女を抱こうとしていた。
一昨日は街角で見かけた花売り娘。
昨日は男爵令嬢。
そして今日は、町でも評判の悪い娼館のいちばん安い娼婦だった。
王子にとって、ヤラせてくれる女は、誰でもかわいいのだ。
というか、穴があるならなんでもよかった。
猿である。
がばっと足を広げさせて、さぁ!
「……」
気が起きなかった。
王子はうろたえた。
なぜだ!?
下半身を見ると、いつものように元気なアレがあった。
だが、なぜか、先端や根元から白い煙をあげていた。
「な」
王子が愕然としている間に、白い煙は黒い煙となり、部屋に充満していく。
アレはバチバチと青い火花をあげていたが、不意に、がくり、と垂れ下がった。
「え」
そのまま、ぽろりと股間から落ちると、バラバラになった。
ちいさな歯車やネジやガラスの透明な管が辺りに散乱していた。
「な、な、な、なぁぁぁ!?」
猿は自分の股間を見た。
なにもなかった。
「どどどどどういうことだ!?」
つるつるだった。
さわってもなにもなかった。
下町のあやしげな連れ込み宿を絶叫がつんざいた!
「オレ様のち〇ぽがぁぁぁぁぁ!」
※ ※ ※
王は溜息をついた。
「……狂ってしまったか」
大臣も溜息をつきつつ
「アレ以外、なにもない方でしたから……」
「使いすぎとは……まことに猿だったな……」
大臣は反射的に、『まことに猿でしたな』と言いそうになったが、なんとかこらえた。
「……」
「せっかく遥か遠国より、技術をとりいれたのだがな……」
「結構お高い値段でございましたからな」
機械仕掛けのアレは遥か北の国で、宦官が失ってしまった男の喜びを密かに楽しむためにつくれたものだった。
そして股間から除去する技術は南の国から。
「外す方は、確か南では刑罰だったな」
「はい。婦女を辱める男どもへの刑罰だとか」
「まぁ……ある意味、役目を果たしたわけか」
「さようで」
王は気を取り直し。
「仕方あるまい。継承法を変えて、王女にも王位を継げるようにせよ」
「根回しは終えております」
「仕事早いな」
「陛下が疲れておいでのようなので。さっさと」
「どうだ? 反対が多くて大変であったろう? その辺りをどうしたのだ?」
「内々に各方面に打診したところ、誰も反対のものはおりませんでした」
「誰もか。意外だ」
「あの方がひどすぎたせいかと」
「あー……」
王は、ホッとしたような困ったような複雑な表情で、
「奴よりマシなら誰でもいいというわけか……あの猿もひとつだけいいことをしたな」
「二日後の議会で、議題にあがり、そのまま可決の見通しです」
「よくやった! 肩にのっていた巨大な岩が消えてくれた気分だ」
大臣は、そこまでひどいか、と思いかけ、そこまでひどかったな、と思いなおし。
「……ですが、アレはどうします?」
透明なガラス箱に入っている王子のアレがあった。
緑色の液体の中で、ぷかぷかと浮かんでいる。
外して保管してあったのだ。
南の国では刑期が終えることがあれば、戻せるのだ。
「大きさだけはデカイな」
「……平均サイズよりかなり」
「だが下手であったという報告を受けておる」
「したいだけでの方でしたから、相手を喜ばせようとかは全く」
「しかも、あのカラクリに替えた後の方が、相手には好評であったらしいな」
「……相手の中の反応にあわせて自在にかつ微妙に最適の動きをしていたそうで……」
それは、いかに猿がひとりよがりだったかの証明だった。
王は長々と溜息をついた。
「ホントにアレに関する話は、いいことがないな」
「で、どうします?」
「ううむ。戻すところがなくなってしまったのう」
「もはや廃人なので戻してさしあげれば?」
「いや、せっかくおとなしくなったのだ。戻す必要はない」
「……ですな」
「それに近々病死するので、戻してもな」
「なら一緒に埋葬を?」
「そうだな……いや、待て」
王は、少しだけ考えて、
「あれでも一応、王家の子種が入っている。保存しておこう」
「なるほど」
「最悪、アレさえあれば。王家でない人間に継がせる羽目になっても、あそこを交換できる」
大臣は、どういう状況だよそれ! と言うツッコミを、ぐっとこらえて。
「ですが……子種がこれでいいんですか?」
「大臣。忘れているであろうが、これでもあいつはワシの息子だったのだ。血筋だけは引いている」
「失礼しました」
「よい。これはお前なら口が固いから言うのだが……血筋とは所詮その程度のものだ」
「余計な事は言いますまい……ですが宝物庫におさめるにしても、どうラベルを?」
王は考えるのも面倒そうに、投げ遣りに言った。
「黄金の棒と玉でよかろう」
たくさんの作品の中から、本作をお読みいただきありがとうございました。
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別の物語も書いておりますので、もしよろしければ、そちらも覗いてみてください。




