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67.君のそばにいたい

* * *



 そして、馬車で辺境の屋敷へと戻ってきた。


 移動で疲れたのか、フィオもレオもぐっすり眠ってしまった。


 ゆっくりと横にさせ、ブランケットをかけると、よく似た二人の子供は、寄り添うように体を寄せ合っている。


 可愛らしい、本当に天使のような二人を見ながら、自然と笑みがこぼれる。



「レオが生きていて、本当に良かった。フィオも、傷つかなくて安心した」


「ほんと、そうですね」


 アーサーさんは砂糖入りのコーヒーを淹れてくれたので、カップを受け取る。


 蝋燭の光と、月明かりだけが差し込む、薄暗い部屋で。


 窓際の椅子に並んで座りながら、ぼんやりと二人で月を眺めていた。


 追手に追われて、山奥の納屋に潜んで、元部下の攻撃から逃げ。


 逃げた先で枢機卿に魔力で捕えられ、フィオの魔力が覚醒した。


 修道院では死んだと思っていたレオが生きていて、二人をここで育てることになった。


 なんだか、嘘みたいな数日間だったなと、コーヒーを飲み込む。


「でも、いいんですか?

 私は引き続き神託の巫女として二人の子育てをするとして、アーサーさんは王都に戻ってもいいんですよ?」


 王宮の前で、騎士団員の部下たちはアーサーさんを待ち侘びている態度だった。


 正義感が強く、『五感強化』を持つ彼は、今後の王宮には必要な人材だと思うのだが。


「もう決めたことだ」


 きっと、レオのそばにいたい、という意味なのだろうな、と私が息をつくと、




「君のそばにいたい」




 まっすぐな言葉が、私の鼓動を高鳴らせる。


 驚いて隣を見ると、銀髪のアーサーさんがこちらをまっすぐに見つめている。


 月明かりでも、彼の耳が赤くなっているのは分かった。


 私は彼のまっすぐな思いを受け止めながら、嬉しさが込み上げてきた。


(私も、同じ気持ち。ずっと前から)


 本当は、助けてもらったあの日から、ずっと彼のことが気になっていた。


 いつしか、その気持ちは確固たる好意に変わっていた。



「嬉しい、です。私、アーサーさんのこと……」



 私が嬉しくなってそう言うと、彼は手を広げて私の言葉を静止した。



「待って、俺から言わせてくれ」



男の俺から言わせてほしい、と。


銀髪が、夜の闇に溶けて神秘的に輝いている。

宝石のように澄んだ真っ赤な瞳は、いつでも私を見つめてくれていた。



「明るく真っ直ぐで、少し泣き虫で、心配になるほど純粋な君が、好きだ」



 赤子を抱っこしたまま薪を割ろうとして、途方に暮れていた、初めて会ったあの日を思い出す。


 その日からずっと、目が離せなかったと。




「これからもずっと、俺の隣にいてくれないか」



 俺が守りたい女性だと思ったのは君だけだ、と。


 この前言った言葉に変わりはないと、強い意志を感じる。



「ーーはい、もちろんです」



  私も離れたくない。ずっとあなたといたい。



「私も、アーサーさんのことが大好きです」



 きっと私も、今真っ赤な顔をしているんだろうな。


 アーサーさんは嬉しそうに微笑むと、そっと私の頬を撫でた。


 彼の温かい体温が伝わり、彼の長いまつ毛に影が落ちている。


 ゆっくりと近づいてきたので、私は目を閉じた。



 そっと触れるような、優しい口付け。

 しかし、痺れるように甘い。



 そばにいたい、隣にいてほしいと、私を求めてくれるのが心から嬉しかった。


 そんな彼と、私もずっと一緒にいたい。



「うぅーん……」



 後ろで寝ているレオが声をあげたので、私たちは慌てて唇を離した。


 起こしちゃったかな? と思うも、むにゃむにゃと寝言を言ってまた静かになったので、ただの寝返りのようだ。


 至近距離に顔がある私たちは、目を見合わせて、吹き出してしまった。


 子供の声がしたので、焦って急に離れたのだから。



「なかなか、慣れないな」


「ええ、少しずつ慣れていきましょう」



 私の言葉に、アーサーさんは笑う。



「……そうだな」



 そう言って、ついばむように、再び軽くキスをしてくる。


 抱きしめてくれるアーサーさんの胸に顔を埋めると、彼の鼓動が聞こえた。



「あの歌、教えてください。

 レオに歌ってた、アーサーさんの故郷の子守唄」



 そう言うと、少し恥ずかしそうに、穏やかな低い声で歌ってくれた。


 まるで赤子をあやすように、私の背中をトントンしながら。


「煌めく星の下……木々は眠り……日はまた登る……」



 子供を起こさないように、囁くような声。


 アーサーさんへの大好きな気持ちが、胸にあふれてくる。


 まだ始まったばかりの「家族」が、ずっと続くようにと、夜空に願いを込めて。

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