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39.辺境で過ごそう

「ーー人が倒れてるぞ!」


「ーーー大丈夫かい、あんた!」


頬を叩かれる感触で、俺は性懲りも無く、またゆっくりと目を開けてしまった。


「ああ、よかった! 目覚ましたよ!」


「ひどい傷だ、お兄さん、野盗か野犬にでも襲われたんかい?」


 肩を支えて起こされ、今が日が登っていることに気がつく。半日近く気を失っていたようだ。


「……ここは…」


「町の近くの草原だ。あんた体がだいぶ冷えてるから、早く医者に行こう!」


 城下町からも、聖女様とレオを下ろした山奥の修道院からもだいぶ離れた、北西の涼しい地域だと教わった。


 だいぶ離れることができたのだと、少し安心する。

近くの町で反物屋を営んでいるという中年夫婦は、野草取りに来た途中で俺を見つけたという。水を飲ませてくれ、近くの町まで案内してくれた。


 そこで俺は町医者にかかり、数週間治療を受け、腕はなんとか動くようにまで回復した。


 しかし、騎士団長として激しい訓練や戦闘には耐えられないだろう。


 治ったとしてもーー私生児と聖女の暗殺を企てたことを知っている俺を、宰相が生かしておこうわけがない。命を狙われるに決まっている。


「お兄さん、これからあんたどうするんだい?」


回復した俺の包帯をとりながら、町で唯一の医師が尋ねてきた。


「……町の近くの草原に丸太小屋でも建てて、そこで自給自足で生活しようかと」


 俺が力無く呟くと、何か困ったことがあったらいつでもこの町に来なさいと教えてくれた。


 反物屋の夫婦は布の端切れを何枚かくれて、狩りなら裏山でできると、余ったナイフや弓矢をくれた。


『五感強化』のスキルを使い、潜む野生動物や飛ぶ鳥を射止めることや、釣竿を作り魚の泳ぐ音を聞き釣りをすることはできたので、食うには困らなかった。


多く獲れた時は街で売って金を得たり、物々交換してもらったりした。


切った丸太で小屋を建て、衣食住には困らない生活をすることができる。


(ーー任務に失敗した、死に損ないの俺には、こんな生活でも勿体無いぐらいだ)


 華やかな王宮暮らしの騎士団長にはもう戻れないが、それも仕方ない。



 目を閉じて思い出すのは、手をバンザイした状態ですやすやと眠る、穏やかなレオの顔。


 そして、新月の日に一度だけ部屋に訪れた、カルヴァン皇帝と聖女ルイズ様に抱っこされるレオ、三人の姿。


(ーー俺がもっと強ければ、レオを守れたのに)



 後悔は絶えない。


 そうして、俺がこの辺境に一人暮らしを始めて、大体一年ほどになる。

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