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第3章 優しいけど、謎多きお隣さん 11.夜泣きはつらくて

フィオとの辺境での生活は、順調ではあったけれど慣れるのにはやはり大変だった。


お腹が減ったら自動で哺乳瓶入りのミルクは出てくるし、おむつしなくても下着は自動で洗浄される、育児チート能力は本当に助かる。



しかし、大変なのはやはり夜泣きだ。


「ほぎゃあ! ほぎゃあ!」


「はーい、お腹すいたのねー。≪自動ミルク整調»オン」


二時間後。


「アーン、アーン」


「はいはい、どれどれ……『不快』……あ、うんちしてる……≪自動洗浄»オン」


一時間後。


「ふええぇ…ふえええん」


「ん……『暑い』? ブランケットで熱がこもっちゃったかな…よしよし……≪適温管理≫」



二時間後。


「ふええ……」


「はぁ……もう空腹……? ≪自動ミルク整調≫………ぐう……」



とまあ、数時間ごとの夜泣きで、細切れ睡眠しか取れない私は、絶賛寝不足だった。


いつの間にか陽は昇り、窓から差し込む朝の光が否応なく私を叩き起こす。


「ふふっ、きゃっきゃ!」


「はぁーい……おはよう、フィオ……」


 私は目を擦り、倒れるように眠っていたベッドからゆっくりと起き上がる。


 数時間ごとに起こされて、全然眠った気がしない。


 頭はガンガンと痛いし、体に血が巡っている感じがせず全身ダルい。でも、起きなくちゃいけない。フィオのお世話をしなければ。


(夜泣き対応ってこんなに辛いんだ……!

 それでも私は育児チートのおかげで、ミルクやおむつ換えを一瞬でできているのに、しんどすぎる……!)


 世の中のママさんたちを尊敬しつつ、自分のお母さんへの心からの感謝の念が浮かぶ。


 このまま眠ってしまいたい。

 家にあるお金全部払うから寝かせてくれと思うほど、私は参っていた。


 少し目を覚ますために散歩でもしようかと、フィオに抱っこ紐をつけて、屋敷の扉を開く。


「はあーいい天気……眩しくて眼球に染みる……」


 朝日を浴びて、幸せホルモンのセロトニンを強制的に分泌しようと、目を細めながら歩くと、フィオもご機嫌そうに笑っていた。


 すると、少し先にある丸太小屋の前で、銀髪の青年が立っているのに気がついた。


「おはようございます、アーサーさん。

 昨日はお風呂ありがとうございました」


 あの後、屋敷の中の浴室に温めた湯を入れ、簡易的なお風呂に入れた。


 私も清潔に過ごすことができた嬉しさから、その感謝を伝える。


「ああ、おはよう。……大丈夫か? すごい隈だが」


 アーサーさんは私の顔を見るなりぎょっと驚いたので、夜泣き対応で寝不足の私はさぞかし酷い顔をしていたんだろう。


 髪はバサバサ、顔も水で洗っただけ、服もヨレヨレで身だしなみのかけらもない時に、男性に会いたくなかったなぁと恥ずかしくなって顔を逸らす。


「あはは、大丈夫です。世のママさんみんなやってることですし……」


 私が力無く愛想笑いをしていると、アーサーさんはじっと私の横顔を見つめていた。


「……以前、スキルに関して記載されている本を読んだことがあるのだが」


「はい?」


「『慈しみの抱擁』には、育児に疲れた対象者の体力を癒すスキルもあった。

 確か、『疲労軽減・時短睡眠』と唱えれば良かったはずだ」


 アーサーさんは本の内容を思い出すようにこめかみを指で押さえながら教えてくれる。


「そ、そんなスキルがあるんですか?」


「ああ。短い仮眠で、しっかり疲労が取れる睡眠効果があると書いてあった」


 私は驚いて声をあげてしまう。

 赤ちゃんを快適にするスキルだけだと思ったが、スキル使用者にも使えるのかもしれない。

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