表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/21

第3章:陰謀の輪郭(4)

 暗がりから、銀色の鎧を身につけた一団が現れた。

 その中央には、優雅な黒と白の制服に身を包んだ一人の女性がいた。

 長い銀髪を後頭部でまとめ、冷たい青い瞳を持つ彼女は、まるで氷の彫像のように感情を感じさせない。

 首元には銀色の首輪のような装飾が見える。


「セラフィナ……」


 シルフィアが低い声で言った。


「そして施錠騎士団……」


 エリスも緊張した面持ちで呟いた。


「ヴァレンタイン家の跡取り……予想通り来たな」


 セラフィナと思われる女性が冷たい声で言った。

 その声には感情がなく、まるで機械のようだった。


「お前たちはここで止まるべきだ。これ以上進めば、世界の秩序を乱すことになる」

「何を言っている?」


 シルフィアが一歩前に出た。


「秩序を乱しているのはお前たちだろう!  ロード・Xと手を組み、『森の心臓』を悪用しようとしているのは!」

「無知な……」


 セラフィナの表情が僅かに歪んだ。

 それは侮蔑か、それとも憐れみの表情か。


「我々はただ、秩序を守るために行動しているだけだ。『施錠』こそが世界を安定させる唯一の方法なのだ」

「嘘だ!」


 シルフィアは剣を構えた。


「お前たちは『森の心臓』を使って封印を解こうとしている。それが世界に災いをもたらすことを知らないのか?」

「災いになるのは、むしろお前たちのような存在だ」


 セラフィナの冷たい視線が俺に向けられた。


「特に……『開く者』」


 彼女は右手の紋様を見つめていた。

 どうやら俺の能力について知っているようだ。


「お前のような存在こそ、世界の秩序を根底から覆す危険因子だ。今ここで排除する」


 彼女の言葉と同時に、騎士団の兵士たちが剣を抜いた。

 シルフィアが叫んだ。


「ここは私が食い止める!  残りは『聖域』へ急げ!」

「ふさわしくない者を通すわけにはいかない」


 セラフィナは手を前に出した。

 その瞬間、森の中に波動が広がり、木々が突然動き始めた。

 幹から伸びた枝が、俺たちの周りを取り囲む。


「森を操っている……!」


 エリスが驚いた声を上げた。


「これが施錠騎士団の力……」


 シルフィアは果敢に剣を振るい、枝を切り払った。

 しかし、次々と新しい枝が伸びてくる。


 クロエは素早く動き、小さなナイフと煙玉を投げた。

 煙が辺りを包み、一時的に視界を遮る。


「今のうちに!」


 彼女の声に従い、俺たちは森の奥へと走り出した。

 しかし、セラフィナは冷静に手を振った。

 風が吹き荒れ、煙を一掃する。


「無駄だ」


 彼女は俺たちの前に立ちはだかる。

 その動きは超人的で、風のように素早かった。


「もうこれ以上は進ませない」


 彼女は右手を掲げた。

 銀色の光が指先から溢れ出し、空気中に複雑な紋様を描く。


「『絶対施錠』」


 彼女の声と共に、俺たちの周りの空間が凍りついたように感じた。

 体が急に重くなり、動きが鈍くなる。

 まるで何かに縛り付けられたかのようだ。


「こ、これは……」


 シルフィアも剣を振り上げることができず、足元で膝をついた。


「動けない……」


 クロエも苦しそうに呟いた。


「これが『施錠』の力……」


 エリスの声には恐怖が混じっていた。

 ミーシャは恐怖に目を見開いたまま、身動きができなくなっていた。


 唯一、俺だけが何とか立っていられる状態だった。

 右手の紋様が強く輝き、セラフィナの力に対抗しているようだった。


「ふむ……さすがは『開く者』か」


 セラフィナの冷たい視線が俺に注がれる。


「私の『施錠』に耐えられるとは……だが、どこまで持つかな?」


 彼女はさらに力を込めた。

 空間の圧力が増し、息をすることさえ困難になってくる。


「くっ……」


 俺は右手を懸命に掲げた。

 『万物解錠』の力を解き放とうとする。


「万物……解錠!」


 右手から放たれた光がセラフィナの力と衝突する。

 一瞬、彼女の『施錠』が揺らいだが、すぐに安定を取り戻した。


「なるほど……確かに驚異的な力だ」


 彼女は少し興味を示したようだった。


「だが、まだ未熟すぎる。本来の『開く者』の力に比べれば、児戯に等しい」


 彼女の言葉に、疑問が湧いた。

 本来の『開く者』?  彼女は何か知っているのか?


「質問があるようだな」


 彼女は俺の表情を読み取ったようだ。


「かつて『開く者』と『閉じる者』は、世界の均衡を保つために存在した。しかし、『開く者』は常に混沌をもたらし、秩序を乱すことしかしなかった」


 彼女の表情には、過去に対する何かしらの感情が浮かんでいるように見えた。

 それは怒りか、それとも憎しみか……。


「だから、我々『施錠騎士団』が立ち上がったのだ。世界に必要なのは秩序と安定。それは『施錠』によってのみ実現する」

「それは……間違っている……」


 俺は息を詰まらせながらも言った。


「閉じることだけでは……何も生まれない……開くことで……新しい可能性が……」

「黙れ!」


 突然、彼女の感情が爆発した。

 それまでの冷静さが崩れ、激しい怒りが浮かんだ。


「お前が何を知っているというのだ!  混沌がもたらす悲劇を、お前は見たことがあるのか?」


 彼女の力がさらに増し、俺の体が宙に浮いた。


「今ここで、お前の力を永久に『施錠』してやる」


 セラフィナの手が俺の右手に伸びた。

 彼女の指から銀色の糸のようなものが伸び、紋様に絡みつく。

 激痛が走った。


「うっ……!」


 そのとき、突然の閃光が森を照らした。


「セラフィナ様!  急を要します!」


 騎士団の一人が叫んだ。


「月蝕が始まります。今すぐ『聖域』に行かなければ……」


 彼女は一瞬躊躇した後、俺から手を離した。


「後で決着をつける。今は『森の心臓』が優先だ」


 彼女は冷たく言い放ち、振り返って森の奥へと消えていった。

 騎士団の兵士たちも彼女に続いた。


 彼女が去ると同時に、『施錠』の力も弱まり、全員が再び動けるようになった。


「大丈夫か?」


 シルフィアが駆け寄ってきた。

 彼女の顔には心配の色が浮かんでいる。


「ああ……なんとか」


 右手を見ると、紋様が薄くなっていた。

 セラフィナの力によって、一時的に弱められたようだ。


「あの力は尋常ではない……」


 エリスが震える声で言った。


「『施錠』の権能を完全に使いこなしています。しかも、自然の魔力まで操れるとは……」

「でも、今は追わなきゃ!」


 クロエが急かした。


「彼女は『聖域』に向かったわ。私たちもすぐに行かないと!」


 ミーシャはまだ怯えた表情のままだったが、決意を固めたように頷いた。


「ミーシャが案内する!」


 俺たちは再び立ち上がり、森の奥へと進んだ。

 セラフィナの言葉が頭の中でこだまする。


 『開く者』と『閉じる者』……世界の均衡……。


 彼女の言葉の中に、何か重要な真実が隠されているような気がした。

 しかし今は、それを考えている暇はない。


「急ごう」


 シルフィアの声に従い、全員が足を速めた。


 森はますます密になり、木々は巨大化していく。

 そして、突然目の前が開けた。


「あれが……『聖域』……」


 エリスが畏敬の念を込めて言った。


 そこには、巨大な楕円形の空間が広がっていた。

 周りを巨木に囲まれ、中央には水晶のような透明な湖がある。

 湖の中央には小さな島があり、その上に古代の遺跡のような建物が建っていた。


「『森の心臓』はあの建物の中……」


 エリスが呟いた。


「でも、どうやって渡るの?」


 クロエが湖を見て言った。


「橋はないし、泳ぐにはあまりにも広すぎる……」

「あれを見て」


 シルフィアが湖の岸を指差した。

 そこには複数の足跡があり、セラフィナたちが通った形跡があった。

 しかし、足跡は湖の手前で途切れていた。


「彼らはどうやって渡ったんだ?」

「わかった!」


 エリスが何かに気づいたように言った。


「『領界の鍵』です!  シルフィアさんのペンダントが橋を現すはずです!」


 シルフィアはペンダントを取り出した。

 空色の輝きを放つその鍵を、湖に向けて掲げる。


「領地に続く道よ、目の前に現れよ……!」


 彼女が古代の言葉を唱えると、ペンダントが強く輝き始めた。

 湖の表面に波紋が広がり、水面から水晶のような橋が浮かび上がってきた。

 それは島まで一直線に伸びていた。


「成功した……!」

「すごい!」


 ミーシャが目を輝かせた。


「シルフィアさん、すごいよ!」

「急ごう」


 シルフィアは先頭に立ち、橋を渡り始めた。

 全員が彼女に続く。


 島に近づくにつれ、建物の姿がより鮮明に見えてきた。

 それは古代の神殿のような造りで、中央に円形の祭壇があるようだった。


「あれは……」


 クロエが島の向こう側を指差した。

 そこには、セラフィナと数人の騎士団の姿があった。

 彼らはすでに建物に足を踏み入れていた。


「間に合うか……」


 全員が最後の力を振り絞って走った。

 橋を渡り切り、建物の入り口に到達する。


「ここから先は気をつけて」


 シルフィアが警告した。


「罠があるかもしれない」


 慎重に建物の中へと進む。

 内部は予想外に広く、天井は高く、壁には古代の文字が刻まれていた。

 

 しかし、誰もそれを読む余裕はない。

 先方から声が聞こえてきたからだ。


「来たな、セラフィナ」


 男の声が響き渡った。

 おそらくロード・Xだろう。


「『森の心臓』を手に入れ、古の力を解放する時が来た!」

「静かにしていろ、ロード・X」


 セラフィナの冷たい声が響いた。


「お前はただの道具に過ぎない。本当の目的を理解していないくせに」

「な、何だと?」

「黙れ」


 空気が震えるような感覚があった。

 セラフィナが再び『施錠』の力を使ったのだろう。


 俺たちは音を立てないように前進し、ついに中央の大広間に到達した。

 そこには巨大な祭壇があり、その上に緑色に輝く宝玉が置かれていた。


 『森の心臓』だ。


 セラフィナはその前に立ち、儀式のような所作をしていた。

 ロード・Xは少し離れた場所で、まるで物のように黙って立っていた。

 彼は『施錠』で動きを封じられているようだった。


「止めるんだ!」


 シルフィアが剣を構え、飛び出した。

 セラフィナは振り返り、冷淡な笑みを浮かべた。


「もう遅い」


 彼女は手に偽りの『領界の鍵』を持っていた。

 それは確かにシルフィアのものと似ているが、異質な黒い光を放っている。


「月蝕は始まった。『施錠』の時だ」


 彼女は偽りの鍵を『森の心臓』に近づけた。


「やめろ!」


 シルフィアが駆け寄ったが、騎士団の兵士たちが立ちはだかる。

 彼女は剣を振るい、一人を倒したが、他の兵士たちに囲まれてしまった。


 クロエとミーシャも加わり、兵士たちと戦い始める。

 エリスは後方から魔法で支援した。


 俺は兵士たちの間を縫って、セラフィナに近づこうとする。


「無駄だ」


 彼女は手を振った。

 空間が歪み、俺の体がピタリと止まる。

 再び『施錠』の力だ。


「お前の『開く力』は、私の『閉じる力』には敵わない」


 彼女は余裕のある表情で言った。


「もうすぐだ。『森の心臓』が私のものになる」


 偽りの鍵が緑の宝玉に触れた。

 強烈な閃光が走り、祭壇全体が震え始めた。


「うっ……!」


 俺は必死で『施錠』の力に抵抗しようとする。

 右手の紋様が弱々しく光るが、十分な力を発揮できない。


 その時、突然ミーシャの声が聞こえた。


「トオルさん、使って!」


 彼女が何かを投げてきた。

 それは小さな緑色の石……彼女がくれた『職人の石』だった。


 石が手に触れた瞬間、右手の紋様が強く反応した。

 紋様が元の輝きを取り戻していく。


「これは……」


 石から力が溢れ出し、体内に流れ込んでくる。

 『万物解錠』の力が増幅されたのだ。


「今だ!」


 全身の力を込めて、セラフィナの『施錠』に抗う。


「万物解錠!」


 光がほとばしり、その瞬間セラフィナの力が押し戻された。

 自由を取り戻した俺は、一気に祭壇へと駆け寄った。


「何?!」


 セラフィナの驚きの声。

 偽りの鍵と『森の心臓』の間に、俺は右手を差し込んだ。


「開け!」


 右手から放たれた光が、緑の宝玉を包み込む。

 宝玉が強く脈動し始め、セラフィナの持つ偽りの鍵を弾き飛ばした。


「不可能だ……!」


 彼女の表情が崩れた。 

 しかし次の瞬間、想定外のことが起きた。

 『森の心臓』が不規則に明滅し始め、建物全体が激しく揺れ出したのだ。


「これは……何かがおかしい!」


 エリスが叫んだ。


「儀式が中断された!  システムが暴走しています!」

「なんてことを……」


 セラフィナの声には、初めて恐怖が混じっていた。


「『森の心臓』が不安定になれば、封印そのものが……!」


 天井から岩が崩れ落ち始めた。

 建物全体が崩壊の危機にあった。


「逃げるぞ!」


 シルフィアが全員に叫んだ。


「でも、『森の心臓』は?」

「今はそれどころではない!」


 全員が入り口に向かって走り出した。

 セラフィナと残りの騎士団も撤退を始めている。

 唯一、ロード・Xだけが『施錠』で動けないまま取り残されていた。


「ロード・X!」


 シルフィアが立ち止まった。

 敵とはいえ、見捨てられないのが彼女の騎士としての誇りだ。


「行くな!」


 クロエが止めようとしたが、シルフィアは既にロード・Xの元へと走っていた。

 彼女は剣を使い、彼の『施錠』を物理的に破壊しようとする。


「この恩は忘れんぞ……」


 ロード・Xは動けるようになるや否や、捻くれた謝意を示した。

 全員が建物から脱出し、橋を渡り始めた。

 セラフィナたちも別方向から逃げている。


「大丈夫かしら……?」


 橋の中央で振り返ると、建物は完全に崩れ落ち、『森の心臓』も見えなくなっていた。


「まだ危険です!」


 エリスが警告した。


「島全体が沈みます!」


 彼女の言葉通り、島が徐々に湖の中に沈み始めていた。

 全員が必死で岸を目指す。


 最後の一人がようやく岸に到着したとき、橋が水中に消えた。

 同時に、背後で大きな爆発音がした。

 振り返ると、島は完全に湖の中に沈み、その上に緑色の光の柱が立ち上っていた。


「これは……」


 エリスが震える声で言った。


「『森の心臓』の力が解放された……でも、完全な形ではなく……」

「どういうことだ?」

「セラフィナの儀式は途中で中断されました。その結果、『森の心臓』の力は不完全な形で放出されています」

「それは……良いことなのか?」

「……分かりません」


 彼女の表情には不安が浮かんでいた。


「本来の封印は維持されましたが、『森の心臓』の力が周囲に漏れ出しています。これからどうなるかは……予測できません」


 ロード・Xは騎士団が去った方向を見ていた。


「セラフィナめ……私を使って、本当の目的を隠していたとは……」


 彼の言葉に、全員が注目した。

 

「本当の目的とは何だ?」


 シルフィアがロード・Xに詰め寄った。


「お前は何も知らないようだな」


 ロード・Xは自嘲気味に笑った。


「私はただ『領界の鍵』の力が欲しかっただけだ。領地の拡大と権力のためにな。だがセラフィナは違う。彼女の目的は『森の心臓』を使って、世界中の全ての『鍵』に『施錠』をかけることだったのだ」

「世界中の全ての鍵に?」

「そう。つまり、世界そのものを『閉じる』ことだ。変化を止め、全てを現状のまま『施錠』する。それが施錠騎士団の本当の目的だったのだ」

「なんてことだ……」


 エリスが震える声で言った。


「それでは世界は前に進めない。全ての可能性が『閉じられる』ことになる……」

「だが、今回はその計画を阻止できたようだな」


 ロード・Xは俺たちを見た。


「お前たちのおかげで、セラフィナの計画は失敗した。だが、彼女はあきらめないだろう。次なる計画を立てているはずだ」

「なぜそんなことを教えてくれるの?」


 クロエが疑わしげに尋ねた。


「私を見捨てず助けてくれたからだ」


 彼はシルフィアを見た。


「私を罪に問うのは構わない。だが、セラフィナの危険性を知っておくべきだと思ってな」


 彼の表情には、珍しく真摯さが見えた。


「もう一つ知っておくべきことがある。シルフィア・ヴァレンタイン」

「何だ?」

「お前の家に着せた濡れ衣を晴らすための証拠は、私の屋敷の地下室にある。引き出しの中の黒い箱だ。鍵はかかっているが……」


 彼はトオルを見て、皮肉げに笑った。


「『開く者』にとっては問題ないだろう」

「……信じていいのか?」

「信じるか信じないかはお前次第だ。だがもう私には嘘をつく理由はない」


 そう言うと、彼は立ち上がった。


「さあ、私を捕らえるのか?  解放するのか?」


 シルフィアは剣を抜かずに言った。


「アルカニアの当局に自首しろ。そうすれば、後で裁判で証言してやる」

「ふん、騎士らしい人情か」


 ロード・Xは苦笑した。


「分かった。セラフィナへの復讐のためにも、そうしよう」


 彼は森の出口へと歩き出した。


「本当に行かせていいの?」


 クロエが心配そうに言った。


「大丈夫だ」


 シルフィアは静かに答えた。


「あの男は卑怯ではあるが、今はもう嘘をつく理由がない。それに……」


 彼女はペンダントを握りしめた。


「私の名誉を回復する方法を教えてくれた。それだけでも感謝するべきだろう」


 湖の方を振り返ると、緑の光の柱はさらに高く伸び、夜空に向かって光を放っていた。


「これからどうなるのでしょう……」


 エリスが不安げに呟いた。


「『森の心臓』の力は不安定になっています。この森だけでなく、周辺地域にも影響が出るかもしれません」

「その時はまた対処しよう」


 俺は仲間たちを見回した。


「今回は計画を阻止できた。次回も必ず」

「ええ、そうね」


 クロエが笑顔で頷いた。

 その表情には以前よりも強い自信が見えた。


「私たち、いいチームになったわ」


 ミーシャも元気よく飛び跳ねた。


「うん! ミーシャ、みんなといると強くなれる気がする!」


 シルフィアは静かに頷いた。


「確かに……一人では到底無理だっただろう」


 エリスも珍しく微笑んだ。


「皆さんと共に旅をして、研究だけでは得られない貴重な経験ができました」


 五人は互いに顔を見合わせ、そして緑の光に照らされた森を後にした。


 アルカニアに戻り、ロード・Xの屋敷からの証拠を見つけ、シルフィアの名誉は回復するだろう。

 しかし、セラフィナと施錠騎士団の脅威はまだ続いている。

 そして何より、『森の心臓』の力が不安定になったことで、今後どのような事態が起こるのか予測できない。


 しかしその時は、またこの仲間たちと共に立ち向かおう。

 『万物解錠』の力を持つ俺と、勇敢な仲間たちなら、きっと乗り越えられるはずだ。


 そう思いながら、俺たちは新たな旅路へと一歩を踏み出した。


 森の奥では、緑の光の中に、何かが目覚め始めていた。

 これは終わりではなく、新たな冒険の始まりだったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ