第2話 「今日も学校」
第2話 「今日も学校」
阿弥と同棲が始まってから初めて学校に行く。
「本当に一緒に行くの…」
と気だるそうに宙比戸が言った。
「なんですかその嫌そうな顔は」
「だってもし知り合いやクラスメイトに見られたら…」
(嫌な予感しかしない)
「見られたらなんなんですか?むしろ私は大歓迎ですけどね!」
と阿弥は元気よく言っていた。
(こっちもこっちで嫌な予感しかしない)
「さっ!グズグズしてても遅刻するだけです!早く行きましょう」
そう言って阿弥は宙比戸の手をとった。
「ちょ、まって!」
そうして宙比戸はあれよあれよと学校まで阿弥と手を繋いで登校した。
———
【私立星雲大学附属高等学校】
門をくぐると、広大な敷地の向こうに校舎がそびえていた。名門校らしく、制服姿の生徒たちはどこか落ち着いた雰囲気をまとっている。
「相変わらず人多いな……」
宙比戸はため息をついた。なんせこの学校は大学まで合わせると7000人以上も生徒がいる。
阿弥は校舎の前につきようやく手を離した。
「や、やっと着いた…」
宙比戸のHPは瀕死状態に陥っていた。
「登校するだけでなんでそんなに疲れているんですか」
阿弥はやれやれと呆れた顔でこっちを見ていた。
「…だって、手を繋いで登校とかなんか恥ずかしいし…」
顔を少し赤らめて宙比戸が言う。
「っ!」
その瞬間、阿弥は手で顔を覆ってニヤけながら
「そうですか〜恥ずかしかったんですか〜」
「まぁこんな可愛い私と手を繋ぎながら登校できるなんてそうそうできる人いないもんね〜」
「それなら仕方ないですねー!」
と悪魔のような笑みを浮かべ言ってきた。
「べ、別にそこまで恥ずかしかったわけじゃないし!」
慌てて阿弥に対して威勢を張ったがそれを見た阿弥はさらに目を細めて高らかに笑う。
「はいはい、そうですね〜」
だが阿弥は悪魔のような笑みをやめず馬鹿にしてるような表情でずっとこちらを見ていた。
「///!もう先に行く!」
そう言って宙比戸は走って教室に向かった。
「……本当」
「可愛い」
そうして、ようやく学校に到着したが…宙比戸の戦いはまだ終わらなかった。
キーンコーンカーンコーン
「zzz」
「…ん、ん"ん"ん!あーあーあー」
午前中の授業が終わったので机の上で寝たふりをしていると後ろの方角からだれかの咳払いが聞こえてきた。
「僕は友達がいない。そのため学校ではバリバリの陰キャになっている。家に帰ってはスマホにゲーム…学校にいてもスマホにゲーム…なんて悲しい人生なのだろう。だが、そんか僕にも唯一友達と呼べる相手がいる。それは運動神経抜群で成績優秀でイケメンな百々智也くんだ。智也くんはどんな人にも優しく女子からもモテモt…」
「おい、さっきから僕の後ろでなにをやってるんだ?」
「あっ」
「智也くんは成績優秀でイケメっ」
「無視すんな!」
そういうと智也は謎の行動をやめてこちらに顔を向けた。
「なんだ起きてたのかよ〜てっきり寝てると思ってたわ〜」
このヘラヘラ笑っている自称イケメン野郎は百々智也。好奇心旺盛で興味があるものには何でもくいつく性格だ。認めたくはないが確かにこいつは頭もよく運動神経抜群で部活をいくつも掛け持ちしているらしくどの部活でもその才能を発揮しているらしい。いわゆる僕と真逆の陽キャだ。
「で、今のはなんの真似だ?」
「いや、実はな今度放送部の企画でアフレコ大会があるんだよ!」
「へー」
クソどうでもいい
「なんだよその反応は⁉︎」
「なんだと言われても」
「はぁまあいいや」
「とにかく!俺はその大会で優勝するためにお前で練習してたわけよ!」
何を言ってるんだお前はと突っ込みたいところだがここは抑えておこう。
キーンコーンカーンコーン
「あ、やべっそういえば次の授業体育だったな」
「宙比戸も早くこいよ今日は持久走やるらしいからな」
「へ?」
その後、宙比戸はしばらく現実を受け入れられなかった。
「ゼェ、ゼェ……無理……マジで無理……」
宙比戸はまだ半分も行ってない地点で完全に足が止まっていた。前を走るクラスメイトたちは、まるで別の生き物のように軽快な足取りで前へ走って行く。
「おーい宙比戸ー!頑張れー!」
笑い混じりの声援が飛んできたが、まともに聞き取れなかった。
結局、途中で力尽き、最下位という結果で終わった。
———
「…きてー」
「んん…」
「起きろー!!!」
「うわぁ!!!」
突然耳元で大声が聞こえた。
「はぁ、やっと起きた」
「もう学校終わったよ。いつまで寝てるの?」
薄暗い教室の中で、黄金色の長髪が夕日に照らされていた。
「か、影月さん?」
そこにいたのはクラスメイトの影月九羅だった。